化物Ⅱ‐Ⅰ:環楓「遭遇&へるぷみー」

 あの後、事情を説明したら俺も双子もちょっとずつ怒られて終わった。

 いや、あれ俺が怒られる要素なかっただろ。だってあれ事故じゃん。それにあんなこと学校でやる方が悪いじゃん。

 なんてことを考えたが、しかし

 それで今俺が何をしているか。そんなことはまああたり前田のクラッカーで、つまり帰宅である。

 帰ったらアニメ見るかな、なんて考えていた。

「お……?」

 俺は立ち止まる。そりゃそうだ、だって目の前に居たのは――

「あれ、例の化け物か?」

 うん。

 毛っぽい感じもないし、かと言ってツルツルしてそうでもないし。それに――いや、抽象的すぎるっての。

 多才が言ってたじゃねえかよ、『形容し難い』って。

「ディアボロ……」

 …ディアボロ?

 ディアボロって言ったか、あいつ。

「何だ、『俺のそばに近寄るな』ってか?」

「ガルゥ……?」

「急に言語能力なくしてこっち向いたんだが――!?」

 化物が近づいてくる。

 いや、いやいやいや。

「ふっ……まさかガチジョジョファンだったのか、お前。悪かったな、適当に語録を使って。」

「ガルゥ……!!」

「うん、言葉通じてないな。」

 よし、こうなったら……!!

「語録使ってやるよ…。たった一つ残った策を使ってやらぁ…!!」

 たった一つの残った策。皆さんご存知、足を使うのだ。

「逃げるんだよォ!!スモーキー――ッ!!」

 心のなかで『わぁ~ッ!!なんだこの男ーッ』と言ってやったよ。

 ……しかし、俺はその時重大な過ちを犯していた。

「なっ……」

 化物が追ってきていた。

「何で!?」

 そう、俺は知らなかったのだ。この台詞が敵前逃亡ではなく、囮作戦の台詞であることを。

 でもだって、仕方がないだろう?

「まさか誤用か……!!」

 だって俺は……、

「原作読んでないから知らねぇ――ッ!!」




 それでも『帰宅部』の能力さえあれば巻くことはたやすく――

「ない!!ない!!全ッ然たやすくない!!」

 後ろに化物は見えないものの、声はする。まだ追ってきているということだ。

「何だ、どういうことだこれ…!!」

 考えられることを挙げていこう。

 その一、瞬間移動。

 その二、声だけ聞こえてる。

 その三、何らかの能力。

「明らかにその三!!」

 じゃあ何の能力なんだよ!!教えてくれ!!というかもういっそ後ろ向くべきなのか!?そうなのか!?

「ええい、ままよ!!」

 振り返った。

 うわ、マジで誰も居ない。しかも特にそれっぽいものも何もないし――と、その時だった。

「ガルルルルルウUUURRYYYYYYYYYYYYYY!!」

 影から化物が出てきた。

「ジョジョでノッてきやがった――!?」

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