任務Ⅶ:夜坂蓮「等価交換(等価かどうかはこっちで決めるよ!)」
俺、夜坂蓮は『強欲』である。
この言い方では誤解を生んでしまうな。
訂正、夜坂蓮は自分勝手で欲しい物は全部手に入れようとして、そのくせ何も失いたくないという――強欲な男である。
そんな奴が『強欲』そのものと退治したら、どうなると思う?
どうなると思う?なんていう入りをしたはいいが、別にどうなるというわけでもない。
ただ、対峙するだけである。
対峙して、退治するだけだ。
チームE。
メンバー、夜坂蓮、間四麻、思栖軽香、前篠士郎。
「お前と同じかよ」
「私だって同じチームになんかなりたくなかったわよ」
「お前ら仲いいな。」
前篠先輩は言う。
いやいや、俺と四麻が犬猿の仲だというのは事実だ。
それとも、犬猿の仲というのは言い換えれば絆であると言いたいのか?
「まあまあ、喧嘩しないで。」
「思栖先輩、あいつが悪いんですよ!!」
「誰も悪くねえだろ。…それでも悪いやつを強いて挙げろと言うのなら、このチーム割りをしたやつだ。そいつに言ってくれ。」
正論っちゃ正論だ。
「違う、夜坂が嫌いな理由は夜坂のせいだと言ってるんだ!」
暴論――と、言いたいところだが、しかし俺が原因なのは事実なので何も言えない。
「過去にでも戻って結果を私と会わなかったことに変えてこい!お前ならできるだろ!」
「やってみせろよマフティー?」
要らない合いの手が入る。
「先輩よくここに割り込めますね……」
思栖先輩がドン引きする。
しかし俺たちは無視。
「さすがの俺でも過去は変えられねえよ!」
「知るか!今すぐにでも変えてこい!!」
「無理だっつってんだろうが!!」
なんてことを言いながら歩いてると、出会うのだった。
――やあ。
少女が声をかけてくる。
「さてと、ボクと戦う前提として君たちは何を知っているのかな?」
なるほど、ボクっ娘か。
いいキャラクターをしてやがる。
一人称でその人の人間性がわかる訳ではないが、しかし付与された属性くらいは、大体理解できる。
「へえ、つまり君が『強欲』か。」
思栖先輩が言う。
「失礼だな、ボクにもちゃんと名前ってものがあるんだよ。」
「んでアヴァリーさん、君が強欲ってことでいいんだね?」
「何で知ってるの!?」
そりゃまあ、前篠士郎だからだ。
『全知』。
その名の通りすべてを知る能力だ。
「俺は何でも知っているからな。」
「臥煙かな?」
アニオタならば反応せざるをえない台詞だった。
オタクでそれ以上に厨二病。
それが俺である。
「はぁ、戦う前にペース乱されちゃったなぁ……で、どこまで知ってるの?」
「だから、何でも知ってるって言ってんだろ。」
「お前に言ってんじゃねえんだよ、あくまで全体で共有されてる情報を聞いてるんだ。」
「まあ、『知ってた』のは『強欲』であることだけかな。」
と、言う。
「そっか、じゃあボクの能力は知らないな」
「ああ、知らない。」
概念とも会話が成り立つんだなあ、と思う。
「じゃあ、『強欲』にいこうか。」
そうして、彼女は能力を発動した。
何が起きたか、そんなことはどんなものを見るよりも、目の前で明らかすぎるほどに明かされていた。
俺が居た――俺たちがいた公園が、歪んだ何かになっていた。
「なっ……!?」
「ほう、これが『強欲』の能力。つまり等価交換か。」
「それボクが言いたかったんだけどなあ!決め台詞みたいな感じでさ!」
等価交換。
等しい価値で交わり換える。
わざわざ一文字ずつ意味を説明する必要もないけれど、しかしそれは俺にとって非常に相性のいい物事だ。
「ボクの等価交換、『等価』の意味はボクの裁量によるんだけどね。」
「なるほどな、じゃあ相性バッチリじゃねえか、俺ら。」
だってつまりそれは、神の恩恵を受ける俺の――価値をすべて無視して起こしてほしいことを起こす運命を操る神の恩恵を受けている俺の、それと同じなのだから。
等価を捻じ曲げる能力。
「価値ぶっ壊し大会の始まりだぜ、アヴァリーちゃん。どっちのほうが狂ってるかのバトルだ。」
リーマンショック、ではないけど。
アヴァリーチアショック、というのが一応の正解だ。
強欲による供給過剰。
「供給過剰なんて起こんねえぜ、ボクの能力は等価を捻じ曲げるんだからな。」
「換えてみろよ、無から生み出された有を、当価値とは絶対に言えない非現実的な有を、強欲にすべて奪ってみせろよ!」
それは能力に対する全否定。
『厨二病』も、『別空間』も、『重力操作』も、『全知』も。
すべて価値を捻じ曲げること。
『厨二病』は世界の価値を捻じ曲げ。
『別空間』は空間の価値を捻じ曲げ。
『重力操作』は重さの価値を捻じ曲げ。
『全知』は知識の価値を捻じ曲げ。
その全てを捻じ曲げようというのだから、強欲だ。
『強欲』、強く欲す。
ならば、くれてやろうじゃないか。
満たされない欲望があるのなら、無理矢理供給して需要を、つまり満たされない欲望を満たしてやろうじゃないか。
今、価値大暴落真っ逆さまの害悪的戦いが始まる!!
まあ、こんなに引きを作っておいてあれなんだが、続きは自信で想像してほしい。
ちなみに、結論としては勿論我々、主人公組が勝つこととなる。
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