任務Ⅵ:逆攻返「存在しない記憶」

 0秒。

 時間が経ってない。

 そしたらまあ、そうだ。わかるだろう?

 つまり『怠惰』の能力は、時間を停止させること。

 時が経たない、イコール、0秒。

 言わずと知れた、チート能力だ。


「さてと、能力は割れたけどさぁ…!!」

 結局どうするか。

 如何せん、僕は時間停止をどうにかできるほどの能力を持ち合わせていない。

「おう、そうか。バレちまったらしょうがねえ。じゃ、止めるぜ?」

 『メタフィクション』の解釈を広げて、どうにかできないか?

「……そうだ。」




 記憶が流れてくる。

「『怠惰』の能力は時間停止だ――。」

 何故か俺は、そんな事を言う。

「は?……え、マジで?」

「たッ…多分。」

 何故かわからないけど、そういう『記憶』が流れてきた。

「あと『怠惰』は……チェーディは、空中にいる。」

「空中!?」

 あいつ空も飛べるのかよ!?みたいなことを言う分身先輩。

「い、いや、時間停止が能力なら、ありえる。空気の時間を止めてるんだと思う。」

 時雨さんは冷静に分析する。

 でも、何だ?

 何で俺はこんなことを『思い出した』?

「……メタフィクションか!!」

 メタフィクション。

 彼の能力は直感的には理解できないが、要は誰かの頭に、誰かの物語に鑑賞する能力――らしい。

 つまり俺の脳内に情報を流したのは、語世継……!

「語が空で『怠惰』と戦ってる!!」

「だから何で分かるの!?」

 分身先輩が混乱する。

 いや、わざわざ説明してる時間はないんだけど。

 でも察せ、というのも酷な話だ。

「そんなことよりどうやって空に行くかだ、どうする?」

「話の展開が早すぎてついていけねえ……が、空に行けりゃ良いんだな!!」

 そう言うと、分身先輩は分身を作り出す。

「乗れ!」

「乗る!?」

 とんでもないことを言い出す先輩に驚く俺。

「すいませんっ!」

 思ったよりノリノリで先輩を踏む時雨さん。

「ええ…?」

 結局俺も乗った。

「分身は0から100に生まれるわけじゃない――じわじわと生まれてくるんだ。だったら!!」

 高速で分身が生み出される。

 その反動というか、エネルギーで、飛ぶ。

「うおおおおおおおお!?!?」

「空気抵抗は反撃でどうにかしてくれ!!」

「無茶言わないでくださいよ!?」

 いやまあ、どうにかはするけど。

 受けた空気抵抗を即座に反撃することで空気抵抗を限り無く抑える。ちゃんと物理するのならおそらくそんなことはできないのだが、そこをどうにかするのが世界の例外である『能力』だ。

「あ、いた」

「方向転換できないから落ちるぞ!勿論落下衝撃は反撃してくれ!」

「だから無茶――」

 落ちた。

 時間停止されたであろう空気に、真っ逆さま。

「死ぬよりゃいい!無茶するしかねえ!!」

 死ぬ直前に起こる走馬灯。

 一説によるとあれは、助かるための手段を記憶から導いているそうな。

「空気抵抗をできるだけ受けて――!!」

 そのエネルギーを落下の直前に放出して、落下の衝撃分のエネルギーを放出した直後に撃つ。

「……チッ。めんどくせえのが来やがった。」

「ああ、来てやったぜ。しかも3人もな!!」

 『怠惰』は能力が割れ、チームDは準備万端。

 負ける気がしなかった。

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