任務Ⅴ:語世継「怠惰」
――無知の知、という言葉をご存知でしょうか?
これは哲学の父と呼ばれるソクラテスがしていた考え方の一つです。
なんでも、『無知であること』よりも『無知であることを知らないこと』の方が罪なんだそう。
――では、怠惰とは何かを知っていますか?
七つの大罪の一つとして言われる『怠惰』。意味としては、やるべきことを怠け、だらしがない様子であるという意味です。
下手な敬語は、やめますね。
えー、僕は別に『怠惰』ではない。
ただ、怠惰というのが何なのか、知らないことは、それこそ怠惰なんだろう。
そういう意味では、僕は怠惰だ。
無知は怠惰。
怠惰は無知である証拠。
これは当時の僕の言葉ではないが、僕はいつか、怠惰であることを辞めなければならない。
――怠惰の能力は不明だ。
たしか、そんなことを言っていた。
いやまあ、そりゃあそうなんじゃないかと、だって能力が割れてたら、普通に討伐できてしまうじゃないか。
そんなことを思った。
しかしまあ、そういうようなことでもなく。
そんなことでもなく。
何故強いのかというのなら、何故討伐できないのかというのなら、それはおそらく経験の差だ。
自信があるから、信頼できる力があるから、強い。
結局勝敗を決めるのは、力よりも心。そして、能力よりも頭脳なのだ。
とかいう。
前座の前座をして、前座をして。
前座の前座はこの物語に殆ど関係はないのだが、前座は大切だ。どんなときでも。
それでは本編に突入させてもらう。
まあ、前座で行った通り、怠惰の能力は割れておらず。
その上結果として『怠惰』は――チェーディと名乗るその子は強かったので、僕たちはボッコボコにされたという。
まあ、それが善戦だったら良かったんだけど。
僕達は数秒で――いや、0秒で負けた。
大敗した。
いいや、そんなことは後付けだ。
当時の僕には、『一瞬』だった。…そう、一瞬で、刹那で、それでも0ではないと思っていた。
まあ、結局は大敗している。
「ただし、死んではない。」
「ですねえ。硬いこった。」
その少女は、いいや、少年は。
中性的な顔立ちをしたその子は言う。
「それに逆攻くん、彼は面倒だった。なんせ攻撃が返ってくるんだから、まあ、彼が攻撃してこなきゃだめっぽいけど。でもだるいよ。」
だから僕を攻撃してきたわけだ。
『反撃』でも、『時間移動』でも、『分身』でもない。分身先輩――分身蛍太でも、逆攻先輩――逆攻返でも、先さん――時雨先でも、ない。
というこの僕を、『メタフィクション』である語世継を狙ったわけだ。
奇しくも、今回の語り部である語世継を。
「で、ここどこですか?」
「ここねぇ……うーん、別にどこってわけでもないけど。強いて言うなら、公園かな。」
公園で戦うって。
バトル漫画かよ。
もしくは青春マンガかよ。
いいや、小説の可能性もあるか。
「物語であればなんでもいいってわけか。」
「ほう、いいことを言うじゃないか。そうだね。物語性がある物事は面白い。それが事案であっても、事件であっても、それら始まりとは違った、つまりたとえ終焉であってもね。」
終焉。
終わることすら、美しいというのだ。
自分だろうが、世界だろうが。
終わることは、美しい。
「じゃ、戦うかい?」
「僕の場合は別に戦いではなく、シンプルに一方的な蹂躙なんだけど。」
というか、別に彼にとってもそうだ。
彼――彼女。
彼女――彼。
どちらかは知らない。知らなくてもいい、知らないほうが楽しい。
――さてと、そんな雑談は置いておいて、閑話は休題しておいて、攻略法が分からないな…!
単純。
それこそシンプルだ。
さあさあ、どうする。
そうだ。
「そういうことか…!!」
見た。
この物語を、見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます