聖剣Ⅳ:写模「魔王、不正、本気。」
――仮に、タイトルをつけるのであれば『いきなり魔王戦だけど元々レベルカンストしてるので大丈夫です』とかか。
などと考える。
もうすぐ魔王戦だというのに、何故俺はこんなにも余裕なんだ。
まあ、それもこれも中二病がいるからだ。
中二病。
マジでなんでもあり。
妄想を現実にする――つまり、運命を自分の意志で操ることが出来るわけだ。
最強どころの話じゃない。俺がチーターなら、蓮は運営だ。
16時57分11秒。
「じゃあ、行きますよ」
ついに、ついに魔王戦が始まる。
といっても魔王戦があることを告げられたのは30分前くらいだったが。
たちの悪いドッキリか何かだろうか、と考えたくもなると思うが、そうはならないのがこの学校もどき。
全員が全員既に毒されている。
「魔王ってなんなんだろうな」
「いきなり何を言ってんだ、先輩。」
先輩に対しての口調じゃない、と思う人もいるかも知れないが、しかしここは学校もどき。上下関係らしい上下関係はないのだ。
勿論、上下関係を作ろうとすれば作れるが。
「魔王は魔王、強いて言うなら人類の邪魔をする魔物――その王。とかじゃないかな?」
「でもさ、魔物は人類の事攻撃してなくね?」
「滅茶苦茶してるが…?」
「いや、先制攻撃してないよなーってさ。」
ほら、エンカウントしたタイミングでこっち側が攻撃するわけじゃん、と言う。
「そう言われるとそんな気もするが……ただまあ、生活領域侵食されてるしな。」
「確かに」
魔王にも情状酌量の余地はあるのかもしれないと、もしかしたら話したら分かるのではないかと思って――いや、迷っていたが、これで自分に決着が着いた。
これで気兼ねなく魔王と戦える。
16時58分09秒。
「よし……準備完了です、いつでも呼べます」
「さてと、準備はできてるな?」
蓮に聞く。
「出来てるよ、道具も肉体も精神も。」
「んじゃ、お願いします。」
「おっけーです。それでは、」
16時58分26秒。
「呼びます。」
16時58分27秒。
魔法陣が展開。
魔王の転送が開始。
16時58分28秒。
魔王の全身が露出。
16時58分29秒。
魔王、着地。
同時に魔法陣を展開。
その魔法陣は女神様のものとは違う、暗い緑の魔力によってできる。
「これが……!!」
「ダークネス」
魔王の詠唱…いや、
闇魔法が発射される。
ブラックホール、とでも言うのだろうか。空間を歪ませて捻り、そこにある程度の引力を添える。
それが、それこそが最上級魔法『ダークネス』の正体だ。
「避けるでいいんだよな」
避けながら言う。
「避けてから言うな」
避けちゃ駄目ならもう遅かった。
『ドッ』っというような鈍い音が響く。先程のダークネスが地面に当たったらしい。
地面を20cmほど抉って消える。
「あれ当たったら死ぬくね?」
「ビビるな蓮、あと仮に一確攻撃じゃなくても死ぬと思え。」
ノーダメージに越したことはない。
「何だここは。お前らは勇者――ではないな。」
「おう、我々は魔王特攻特殊部隊だよ。二人だけど。」
混乱している魔王に説明しておく。
説明にはなっていない。
「模先輩、できた?」
「とっくに出来てるぞ。」
ダークネスの『模倣』は既に完了している。
「よっしゃぶちかませぇッ!!」
「ダークネスッ!!」
魔王と同じ威力の魔法を五回連発する。
まさにチートだ。
「――ッ!!」
魔王にも流石に効いているようで、もうこれ勝ったんじゃないかというくらいには満身創痍になっていた。
「やったか」
「ちょっそれフラグ――ッ!!」
魔王は笑う。
「フッ…フハハハハハハハッ……はぁ…面白い。魔王特攻なんだか知らんが、私をここまで追い詰めたのはお前らが初めてだ。」
「テンプレートじゃねえかッ!!!!」
まずい。
非常にまずい。
これはあれだ。おそらく、いや確実に。
「第二形態!!」
「『やったか』しなきゃよかったかもしれねえわ!!」
「確実にそうだよ」
いや、そんなことはどうでもいい。
RPGの場合、第二形態に入った魔王は……特に、第一形態をすんなり倒せてしまった魔王は――
「先制攻撃×2ターンの超強化ッ!!そして二形態目の初撃は――」
「決闘なら受けてやる。喰らえ、『
「中二病かよ!?」
いや、中二病ネーミングとはいえその攻撃力はえげつないらしく先程にはなかった『溜め』が入っている。
「蓮くんどうする!?聖剣でどうにかならないかな!?」
「どうにかするのが俺の役目だよ先輩!!」
「格好良過ぎだろ!!」
なんてことを言いながら俺は蓮くんの後ろに隠れる。
瞬間。
魔王の半径5メートルが光に包まれる。
「えっぐ…っ!!」
「大丈夫かよ…?」
「――やったらぁ…!!」
蓮くんのやる気に火がついたらしい。
まあ確かに、燃える展開ではあるよな。
光が消える。
「よくもやってくれたなぁ!!決闘なら受けるんだろ?だったら決闘を申し込むぜ。グラウンドの敵は俺たちが取るぞ、先輩!!」
…………。
グラウンドのためかよ。
まあ、グラウンドのど真ん中に真っ黒になった砂が出来てしまったのだから、ダークネスの分も含めてやってくれてはいるけど。
蓮くんは聖剣を振りかざす。
「先輩、ここは俺にやらせてくれ。」
何か、仲間でも殺されたのかというような圧を感じる。
これは中二病であるから出来る――能力関係なく、中二病が出来ること。妄想を完全に信じることだ。
夜坂蓮は、本気で怒っていた。
まあ、此れを見て思ったことは一つだ。
あ、多分これ勝つやつだ。
ちなみにこれはフラグに換算されない。
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