聖剣Ⅲ:夜坂蓮「転生しないでなろうする。」
「はあ?」
「俺が魔王を倒したら万事解決、だろ?」
「いやまあ…確かに、そしたら魔王は倒されるけど……でも、勇者はどうするのよ?何もしてないのに返されることになるでしょ?」
「いやいや、そこはなんとなくだけど大丈夫。」
俺の予想が正しければ…いや、おそらくというか、確実にそうだ。
俺の予想が合っていれば、勇者の混乱に関しては問題ない。
「え、なんで?」
「女神様はこのあたりから勇者を召喚したのか?それとも転生?」
「え?ああ、確かにこのあたりから勇者を導いたかな…。あと今回は異世界転生じゃなくて異世界召喚だけど……」
「なら大丈夫だ、問題ない。」
死亡フラグを言った気がするが、しかしなろう系での死亡フラグは生存フラグだ。
「俺は転生しないでなろうしてやるぜ、女神様!」
「な、なろう?」
「俺TUEEEでも良し」
「もうよくわかんない!!」
考えることを放棄したらしい。女神様――アストラは、考えるのをやめた。
「んじゃ、魔王呼んでくれ。」
「はあ?」
「できればグラウンドで。」
「いやいやいやいや、無理だから。一人じゃ無理だから。」
流石に魔王相手に単独で挑もうとは思っていない。単独でも勝ち目は五分五分くらいあるんだけれど。
しかしこの学校……いや、学校もどきには
「仲間いたほうが良いのはわかったが…誰連れて行くかなぁ。剣道部でも良いし…あーでも、部活邪魔すると四麻が面倒だしなぁ……あ」
そうか、ちょうど今週は新聞部の新聞が休刊なんだった。
「模先輩連れて行くか。」
決まった。
「なんか勝手に話進んでますけど大丈夫ですか?」
向こうで話している声が聞こえる。向こうと言っても距離は1メートルもないが。
「大丈夫大丈夫、あいつなんでもありだから。絶対勝てるから。」
「なんですかその信頼」
「中二病だから大丈夫。」
中二病だからという部分に引っかかったが、そこは突っ込まないようにしておく。
「じゃあ、今が4時42分だから、5時になったらグラウンドで集合…でいい?」
「えー、集合する必要なくない?私達普通に部活してたいでーす!」
「どういけーん」
「じゃあ見たいやつだけ行こうぜ」
なにかのスポーツの試合を見に行くような感覚で魔王討伐を観戦されるのは癪だが、聖剣が手に入るならそんなことどうでもいい。
「俺ポスター貼っとくよ。中二病vs魔王!!っていう。」
「やめろ、恥ずかしいから、まじで」
「あのー…」
女神様が挙手をする。挙手する必要性は全くもってない。
「何で皆さんそんな余裕そうなんですか?だって魔王ですよ?ラスボスですよ!?もっと恐れるのが普通じゃないですか!?というか恐れてくださいよ!!」
「何で恐れなきゃいけないんだよ。」
どういうお願いだ。
「何でこんなにも怖いもの知らずが多いのかって話なら、私が説明するよ。」
幻中先輩が語り始める。
「んじゃ、俺その間に模先輩説得してくるわ。」
「お、行ってらー」
扉を開け、部屋を出る。
「お邪魔し麻酔」
「急に麻酔を撃つな、名探偵か。」
新聞部の部室には模先輩がいた。というか、模先輩しかいなかった。
「さて蓮、いきなり来てどうしたよ。言っておくが模写とか文章のコピペとかだったら後にしてくれ。」
「んなプリンターみたいな…」
用途がコンピュータでしかない。
さすがにそんな使い方はしねえよ。
「いや別に、コピペしたいわけじゃない。『
「ほう、何故?」
「簡潔に言うと、俺と一緒に魔王を倒してほしいからかな。」
「魔王?」
模先輩は笑った。
「いやあ、ついに中二病もここまで来たか。」
「事実だ」
「分かった分かった。その依頼、受けようじゃないか。んで、俺は何をすれば良い?」
とはいえ、これで本題だ。
魔王を倒す作戦…それは――
「魔王の攻撃全部コピーしてそのまんま返しちゃおう作戦っ!!」
「うわーチートだー通報だー」
「いいだろ別に。今の時代、魔王と戦うやつなんてチート能力もってるやつか異世界2周目のやつくらいだろ。」
確かに、と先輩。
「でもノーダメは……いや、いけるか。」
「聖剣とかいう魔王特攻もあるわけだ。」
「魔王vs魔王模倣と魔王特攻……いや、改めて聞くと魔王の方が可哀想になってきたな…。」
そもそも討伐の理由が『聖剣がほしい』なのが一番気の毒だ。
魔王も世界平和とかのために倒してほしかっただろう。
「あれ、そういや魔王倒すって言っても魔王いなくね?わざわざ魔王討伐のために転生すんの?」
「ああ、言ってなかったっけ。女神様に呼んでもらうんだよ、魔王。」
「女神?まじか、お前女性と喋れたんだ」
「何の意外性があった!?普通に同級生女子とも喋れますが」
なんていう会話をしながらも、着々と準備を整えていた。準備と言っても先制攻撃でワンパンする方法探しか士気を上げるためのゲーム実況動画閲覧だったりだけれど。
「なるほど、つまり正攻法じゃワンパンは無理か…」
「連くん、俺らは正攻法なんざしてないぜ。」
「フッ…そうだったな。」
酷い会話だ。
グラウンドに出る。
「グラウンドでラスボス戦ってのもどうにかしてんな。」
「でもそれ提案したのキミでしょ。」
一緒に出てきた模先輩が言う。
そういやそうだった。
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