聖剣Ⅱ:夜坂蓮「魔王、ね」
「にしてもこの聖剣……どっから来たんだ?」
校内を聖剣片手に歩く。
普通の学校ではありえない光景だが、この場所ではぎりぎりありえることだ。
「こういうのに詳しそうなのは……転か。」
あいつ、いろんな聖剣触ってるだろうし。
…いや、異世界転生は一回にしとけ。やっても二回目までだ。
「どうもー初でーす!!」
「相です」
「共です」
――
久々の怪文書体情景描写だ。
孖と書いて双子という意味に成る――とか、一体何処で使うんだよ。
ユニコードがなきゃ存在すら知らなかったわ。ユニコードに感謝しなければ。
ちなみに今のは、放送部の放課後不定期放送である。
ラジオ的なノリで放送するので、適当に聞き流しててもまあまあ面白い。これも放送部の才能だろう。
「さてと、最近あった出来事って難しいな……」
「決めたの先輩じゃないですか」
「あ、そういえば、この前教室にテロリストが来てたんですけど――」
吸も復帰している。べつに休んではいなかったけど。
にしても、学校の放送でラジオしてるのも特殊だし、そこでテロリストが教室に来た話をするのもどうにかしている。
「あれってテロリストって言うんでしょうかね?」
――やっぱそうだよな!?
共感して楽しむのもラジオの面白さの一つだろう。
まあ、このあたりでグダグダしてても仕方ないし部室戻るか。
「ただい――」
目の前に、明らかにおかしい人影があった。
幻中先輩、時雨、明日ヶ谷、渡、あと――
「本当に持ってるじゃん!!」
かなりの勢いで飛びかかってくる。
「ちょっとアストラさん焦りす――」
「やった本物だぁ!!」
何だ、何だこのひと。ってか人なのか?雰囲気が人じゃないぞ!?んでアストラさんって誰!?
「それ!聖剣なんだけどさ!」
「知ってます見れば分かります!!」
「申し訳ないんだけど返してくれない!?」
「何で!?」
というか何で聖剣であることを知ってるんだ!?
「めちゃくちゃ焦ってる……」
「ほんとに何なんだろうね。」
「知らねえ」
お前らは何でノータッチなんだよ!?
「ね!返してくれない!?」
「ちょっと待ってちょっとは話し合おうよ!?」
閑話休題。
「んで初めになんだけどさ、あんたは一体何者なんだ?」
聖剣だなんだと本気で騒ぐやつなんてこの学校もどきにしかいないと思うんだが。
「お!!聞きたいですか?聞きたいですよね!!いいでしょう名乗ってあげましょう!!」
「食いつきが凄いな……」
どっかの魔王にも劣らぬ――というか、どこかの魔王以上に名乗りたい欲があるな。
「私は女神!!女神アストラだーっ!!」
…………。
とんでもないアホみたいな自己紹介をされた。
女神という点はなんとなく信用する。が、問題はその明かし方だよ。なんだよ女神アストラだーって、子供かよ。
「今失礼なこと考えましたね。」
「いや別に考えてない」
真っ赤な嘘だけども。
めちゃくちゃに考えてるけども。
「あ、ちなみに俺も考えてないぞ」
渡、お前関係ないだろ。
なんだか初対面2人から馬鹿だと思われるアストラさんが不憫に思えてきた。
アストラさん、なんかごめん。
「で、何で聖剣を?」
「それはこう……斯々然々で……」
「なるほど」
「おい蓮、斯々然々で理解するな。俺がついていけない。」
FF外から……いや、FF内から失礼された。
またもや渡。
「私も分からないです」
「分からん」
明日ヶ谷と時雨も乗っかってきた。
「へー、斯々然々ってこう書くんだ」
「先輩、今そこじゃないっす。」
確かにかくかくしかじかを斯々然々って書くんだって思ったけどさ。
「ま、女神様が勇者のところに聖剣を落とすべきだったのに、何、故、か、この世界の、しかもこの学校もどきのグラウンドに落としたってわけだ。」
「うぅっ………」
「なるほど!つまり女神様は馬鹿ってことだな!」
「馬鹿じゃないやい!!」
渡がついに言いやがった。
まあ、そうだよな。聖剣を地上に落とすなって思うよな。
スマホ落とすよりも圧倒的に危険だわ。
「で、何で聖剣が必要なんだよ。聞きたいのはそっちなんだけど。」
「そんなの勇者が魔王を倒すために決まってるじゃないですか!!」
「へえ。」
魔王なんてのがいるのか。
「聖剣って言ったらやっぱ勇者だよな。」
「定番といえば定番かも」
向こうは向こうでなんだか納得している。
「聖剣が必要な理由って、要は魔王が倒せないから……って、ことだろ?」
「その通りです。だから剣返してください!」
要は、魔王を倒せばいいわけだ。
「やだ」
「何で!?返してくださいよ!!」
また、目の前の女神が飛びかかってくる。
「いやっ…ちょっ!待てって!!提案があるんだ!!」
「提案?」
やはり、乗っかってきた。
女神がちょっと馬鹿で良かった。
「つまりはさぁ、魔王さえ倒されれば良いんだろ?」
「はい、まあ、一応だけど。」
「じゃあよー、」
――俺がその魔王倒してやるよ。
俺は、そう言った。
何故か?その理由は至極単純だ。聖剣が欲しかったからである。いや、あと一つ理由はある。
ただ、今は黙っておこうと思う。
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