聖剣編
聖剣N:夜坂蓮「ついに来たか、俺の時代。」
その日、俺の前には『聖剣』があった。
地に佇む剣を見て、俺は、こう思ったんだ。
――これは、俺の剣なんだ。
と。
時ハ戻リ陸月拾弐日、夜坂蓮ノ部活デノ出来事ダ。
「うぃーす」
空想科学部にて。
「おい蓮、大丈夫だったか?」
「おい渡、一体何のことだ?」
こいつは世界渡。空想科学部員だ。
「やばくなったら言えよ~?世界線移動するくらいはやるし、できるからさ。」
「お悩み相談のスケールじゃなくね?」
お悩み相談に世界線の話はインフレとかの域を越えてんだよ。
「また馬鹿同士で馬鹿なこと話してんの?」
「間違えるな時雨。馬鹿なことなのは認めるが、実際に馬鹿なのは渡だけだ。俺は馬鹿じゃないぞ。」
「誰が馬鹿だと!?」
時雨先、彼女も部員だ。
「どっちもどっち。」
「またやってるんですか……」
時雨の後方から声が聞こえる。
「ども。しっかり本日の明日ヶ谷です。」
「たまに未来から来るから分かりづらいんだよな。」
「そういやよく考えたらとんでもないこと言ってね?」
明日ヶ谷渚。稀に時間移動してくるから未来とか過去から来ることがある。
どうにかしている。
「で、幻中先輩は?」
時雨が聞く。
「行為中。」
「えっと、渡……それは本当の話?」
「ああ間違えた、先輩は更衣中だよ。」
「死ぬほど怖かったんだが?まさかまさかついに幻中先輩にもそういう人が出来たのかと思ったよ!?」
突っ込んでしまった。
「まあ可愛いもんね。」
「出来ても不思議じゃないよね。」
女子二人が褒め称える。
2年生、
相手に幻覚を見せる事ができる。まあ、わかりやすいし応用も効く能力だ。
「んで渡、更衣ってどういうことだよ?」
「事件関係で汚れたらしい。」
「なるほど。」
――震える。
震えた。
「地震か?」
俺が言う。
日本人は地震に対しての耐性が強すぎて海外の方よりも反応が小さくなるらしい。
有名な話。
「かもね。」
「でも何か音も聞こえなかったか?」
「私聞こえませんでした。」
「ちょっと見てくるわ。」
「いってらー」
グラウンドに向かう。
平たく揃えられた砂の地に、一箇所。
明らかにおかしい形――見方によっては十字架のような形の何かが、刺さっていた。
白く光る剣身と、赤く輝く宝石がつく鍔。そして剣身とは逆に光を吸い込むような黒いグリップ……とまあ、色々描写したわけだが、結局言いたいことはこれが『聖剣』であることだ。
「いや……グラウンドに聖剣刺さることなんてあるかよ……?」
さらっと抜く。
「……剣道部にもっていくか。」
こういうのに最適な部活、それは剣道部だ。
剣道部、部員は4名だ。
1年3組、間四麻。能力『別空間』、人も入れる四次元ポケットだ。
2年、思栖軽香。能力『重力操作』、重力を重くしたり軽くしたり出来る。ただし質量は変わってないらしい。
3年、焔萌歌。能力『火炎』、そのままだ。
3年、凍浜結。能力『氷結』、これもそのまま。
ちなみに全員女子。
「おい剣道部」
「なんだよ夜坂、戦いに来たんだったら俺が今ここでボコボコにしてやるぞ。」
「四麻みたいな戦闘狂じゃないからやめとくよ。」
間四麻は俺っ娘である。
最近そういうキャラ増えた気がする。
「夜坂くん…だっけ?どうかした?」
思栖先輩はそう言った。
「とある物を拾ってきたんで、譲渡しようかと。」
「それが、それってことか。」
聖剣を指さして、四麻は言う。
「これか?剣道部の人たちはこういうの好きそうだから渡してやろうと思ってよ。」
「お前中二病なのに聖剣に対しては何も思わないのか。」
「まあ……。」
「何が言いたいのかは知らんが、ま、受け取ってやるよ。」
グラウンドに突き刺さっていた聖剣を受け渡す。
落下。
「え…!?」
「大丈夫!?」
思栖先輩が四麻に近づく。
「おいおい落としてんじゃねえか」
「いや…そうじゃなくて……さ。」
重いから持てないんだけど。と、四麻は言う。
「んなわけないだろ。俺のほうが明らかに筋肉無いじゃん。」
「…本当だ、持てない。」
思栖先輩も持ったが、持ち上がらない。
そして、冒頭に戻ってくる。
その時、俺の前には『聖剣』があった。
地に佇む、光を放つ剣を見て、俺はこう思ったんだ。
「これは、俺の剣なんだ。」
中二病にしか聞こえない台詞も、ここでは事実でしかない、
「なるほど、本当に聖剣というわけだな。」
「マスターしか持てない的なやつ?だから私は持てないのか。」
「くっそ、夜坂に負けた……。」
先輩も四麻も納得したらしい。
「じゃあこれ、俺の剣?」
「まあ、そうなるよね~。」
「……」
「どうしたんだよ中二病勇者。」
「いや……。」
四麻にいじられることも気にせず、思ったことがあった。
――この剣、一体どこに保管すればいいんだ?
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