開闢Ⅴ:暗闇病舞「あれは狂気を超えてる。でもあれは無感情。」
暗闇病舞。
私の特技は『なんとなく察する』こと。まあ、空気を読むとも言うかな。
『狂愛』なんて文字通り狂った能力の代償としてリスカとかの癖が残る私。そのくせ、別に誰を愛すわけでも、誰に愛されるわけでもない。能力を発動させるため、愛していると錯覚するしかないのだ。
文字通りの能力で、文字だけの能力。
まあ、その自分を受け入れられたからこそ、今の自分が、いまの安定した精神があるんだろうなと、そう思う。
そしてまあ、確証はない。確証はないのだけれど、彼女は何かを抱えている。
それこそ、『病み』の状態である。
私がそれを演じているから分かる。いや、演じざるを得なかったから演じているんだけどさ。
でまあ、話を戻すと、彼女も私と同じように、自分を演じているように見えた。
自分じゃない自分を作るっていうのは簡単なことじゃなくて、その仮面を作ったとしても受け入れられなかったら苦しいと思う。
しかし彼女は――吸ちゃんは、自分を受け入れてなかったような、そんな気がする。いやまあ、気がするだけだったら良かったんだけどね。
私は、『なんとなく察する』のが得意で、特異だから。
……今のは物語っぽかっただろうか。
心のなかに『狂気』を宿している――しかしそれを抑えた結果、すべてがどうでも良くなった……そんなところだろう。
ということで私は、鬼血吸をどうにかするべきだと思った。具体的に何をするべきなのかは特に知らないけど。
だからめちゃくちゃに余裕のある楓くんにメールでとあることをお願いしておいた。
――吸ちゃんをストーカーしてくれない?
ってわけで、前座終わり。
「あーあー…」
「どうした暗闇」
識見が聞く。
こんな時にわざわざ話していることではないのだが、人の紹介は丁寧にするべきだと思うので、保健部のメンバーを紹介する。
1年2組、
保健部では痛み止めの役割をしている。
1年3組、
保健部ではまあ、想像通りのことをしている。
そしてラスト、2年の
先輩は保健部で処置の時暴れないよう抑える役割をしている。
現1年生が入ってくるまではものすごく大変だったらしい。
「いやあ、ちょっと精神疾患について考えてて。」
「本気で医療に従事しすぎじゃね?いや別に、真面目に医療に向き合うなってわけじゃないんだけどさ。」
確かに、外科や内科を担当している保健部が精神科まで担当しようとするのは流石に無理だ。
そもそも保健部4人しか居ないから多分無理だよね。
「精神疾患ねぇ…」
真面目に考えてくれるのは嬉しいが、しかしあれを精神疾患と言っていいのか分からない。
実際、精神疾患と言える状況を見てはいないのだから。
「んま、あとは楓くんがどうにかしてくれるでしょ!!」
結局は人任せ。
でも仕方ないじゃん。だって私にはどうにも出来ないし。
「適当だな…」
「まあいいんじゃない?精神疾患なんて結局は『合う』かどうかなんだから。」
先輩がわかったように言う。
「合う…?それってどういうことですか?」
優ちゃんが言う。
「つまり、相手が自分と合っているかってことよ。嫌いなやつと一緒に居たら陰鬱に、好きなやつと一緒に居たら明朗になるってことだよ。」
あ、明朗ってのは簡単に言うと明るくなるってことね。と付け足す。
確かにその通りだ。嫌いなやつはとことん嫌い、好きなやつはとことん好き。
人間なんてそんな風に、単純に出来ているのだろう。勿論、それが吸血鬼だとしてもだ。
全員が納得したところでこの話は終わり、次の話題へ移る。
私が発言する。
「で、何で私達ここでずっと雑談してるんですか?」
「まあ、3年が色々してるからだろうな。」
識見が答える。
「色々って?」
日生下優よ、その台詞は私のじゃないだろうか?
と思いつつも、会話に参加するタイミングを失うと辛いことは分かりきっているのでそれは口に出さない。
「ま、異能事件とか異能事故とかに関係するやつだろうな。」
またまた識見が答える。
「能力バトルとかしてるのかなー」
「少年漫画かよ…」
「とは言っても能力が戦闘向きな人多いし、ありえるよ。」
なんて言うような会話をする。
…まあ、特に見せ場もないし、3年生の能力の話も出たので紹介して終わろうと思う。
能力『分身』。無限に分身することができる。ちなみに私が見た中で一番多く分身した時は100体くらい居た気がする。ちゃんと数えてないけど。
能力『火炎』。炎系の能力は基本使える。ただ温めるのも燃やすのも焼くのも出来るらしい。
能力『氷結』。焔先輩とは真逆で、氷系の能力は基本的に使える。凍らす、冷やす、氷を飛ばして攻撃するなどなど。
能力『演劇』。個人的にはこれが一番やばい。この能力は相手に演じることを強制する能力…つまり、相手を台本通りに動かす能力ということだ。やばい。
能力『圧倒的美貌』。そのまま、すっごい可愛い。もう全人類が見惚れるほど可愛い。私でも嫉妬するほど可愛い、本当に。
能力『全知』。何でもかんでも知ってる能力。全知全能の神ってよくあるけど、そういう意味では前篠先輩は半分神なのかもしれない。
まあ、3年生の紹介をしたわけだけど、私はこんな話をしている状況じゃない。
さてと。
――楓くん、後は頼んだよ。
死亡フラグのような言葉を残して、私は明日を迎えようと思う。
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