のののさんリクエスト。美女、記憶喪失、脱出ゲーム
へびづかすず
第1話
「おはようございます。ようやくお目覚めですか。この状況ですやすや眠れている神経が理解できませんが、とにかく目覚めたなら早く起き上がってもらえます?」
目覚めると、目の前には真っ白い天井とこの世のものとは思えないほど美しい女性がこちらを見下ろしていた。
「なに見てんのよ変態。まぁ私のような美人と一緒なんて緊張するわよね?…でも見惚れてる場合じゃないわよ。ほら」
「…な、なんだこれ?」
「見てわからないの?手錠よ」
「だから、なんで俺とお前が手錠でつながれてんだよ!?てか、ここどこだよ!?」
「女みたいに喚かないで。……まぁ良かったわ。その反応じゃ、犯人じゃないみたいね」
女は繋がれていない右手を顎に当て何かを考え始める。
俺はただ困惑していた。見知らぬ女と繋がれた手錠。
四方を囲う真っ白い壁。そして何より、記憶がない。
直前までなにをしていたのか、自分が今何歳なのか。
自分の名前すら、思い出すことができない。
無機質なチャイムが鳴り響く。
女も流石に身をこわばらせているようで、俺たちは壁を背に身を寄せ合い立ち上がる。
『エントリーを確認しました。ガイドは私、スズがお送りいたします!まずはプレイヤー名を唱えてください。残り時間は1分です!』
天井から声が降ってきた。
おそらく壁にスピーカーが埋め込まれているのだろう。
「フッ…まるでゲームね」
「おい!誰かいるならちゃんと説明しろ!」
『プレイヤー名はそれでいいですか?』
「「言いわけあるか!!」」
説明をする気はないのだろう。人間が喋っているように聞こえるが、もしかしたらAIかもしれない。
「おい。お前、自分の名前思い出せるか?」
「自分にできないことを、他人に強要するのはどうかと思うけど?」
「つまり、思い出せないんだな」
肘で脇を突かれる。
「私はキレイ、でいいわ。名は体を表すっていうもの」
『かしこまりました!キレイ様ですね!因みにもう1分経過したので、貴方のプレイヤー名はランダムに決定されます!』
「普通残り時間の告知あるだろ!?」
『マニュアルにありませんから!……では、改めまして。キレイ様と……ののの様のガイドを担当しますスズです!お二人が脱出するか、死体となるか、明るく楽しく見守りますね!』
スズがそう言うと同時に、派手なブザーの音が鳴り響く。
目の前の壁には映像が浮かび上がる。
『第一の部屋。記念すべきお二人の、初めての謎ですね!なお、右上に表示された制限時間を過ぎますと天井がお二人を押し潰しますので、ご了承くださいね!』
俺は履いていた靴を天井に投げつけた。
キレイは冷たい目でこちらを見ていたが、こうでもしないと冷静さを保てなかった。
のののさんリクエスト。美女、記憶喪失、脱出ゲーム へびづかすず @hebizuka_suzu
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