第二十八話 火の神様、影を祓う
最初はアフラの神殿でフラウが着ていた
ドレープ・ワンピースにしようと思った。
綺麗だったから。
でも、僕がプシュケで彼女を包む間もクリストフは発砲を続け、
もとから着ていた服が内側から弾けて焼失していくと、
フラウの表情が曇った。
彼女に親切にしてくれた老夫婦からもらった服だ。
戦場へ行った孫のお下がりでも気に入っていたんだ。
老夫婦と過ごした時間と、あとはたぶんもらったお菓子も。
だから同じ服を幻影で作った。
焼けた個所が再生するみたいに
大きめのシャツがゆったりと彼女を包んだ。
わかりやすく笑顔になるんだよな。
なんの匂いもしないのに袖を鼻に近づけて、
全部もと通りになったみたいに、
老夫婦の家の居間で嗅いだ匂いが
そのまま残っているみたいに笑うんだ。
「君も懲りないね、クリストフ君。
そんなもの、私には通用しないのはわかっているだろうに。
うるさくて好きじゃないんだ、それ。
他には何かないのかい?」
僕を背中に庇いながら、フラウはクリストフに近づく。
彼女が少し離れて熱気の息苦しさが弱まると、
深い呼吸でプシュケを準備する。
銃弾を装填しているクリストフから目を離すな。
明らかに人とかけ離れた、フラウと同じ側の存在だ。
神話に語られる、影の世界からやってきた悪神と呼ばれる類の。
銃弾を装填し終わると同じように腕を伸ばして構え、
同じようにフラウを撃って同じように薬莢を捨てる。
大粒の雨みたいに地面を叩く薬莢の音。
フラウの小さなため息。
のどかな午後に繰り返される銃声。
喉が渇く。
血管が脈打ってこめかみが痙攣する。
機関砲で傷一つつかないフラウに、あんな小さな銃だけか?
どこかに虎とか豹とか名前のついた戦車でも隠してるのか?
迫撃砲とか?
説明できない。
フラウの後ろで絶対安全なはずなのに、
胸を貫かれるような嫌な感触がずっと消えない。
そういうとき、どうするんだった?
僕はとっさにフラウに手を伸ばす。
指先から爪が剥がれるような熱と痛みが肘まで伝わってくる。
単調な射撃。
もっと大きな機関砲でも無意味で、相手を見下して
それ以上何もできないと決めつける傲慢なアフラ。
射線には常に僕が入る。
彼女は絶対に避けない。
なるほど、僕だってそうするよ。
神を殺すには、まず騙す。
フラウの腰に体当たりして押し倒す。
自分で作っておいて服が幻影なのを忘れていた。
一度見た彼女の優美な腰回りは滑らかで、
引っかかるようなところが一つもなくて、火のように熱かった。
必死にしがみついた彼女の腰から振動が伝わる。
湿った熱風と共に爆発的に蒸気が広がり、
僕たちの周囲は濃い霧に覆われていた。
神話のアフラは泣き虫だ。
傷ついたことがほとんどないから、
ほんの小さな傷でも天地がひっくり返ったみたいに大泣きする。
フラウも臆面もなく喚き散らした。
熱風で吹き飛ばされた僕は
腕を押さえて転げまわるフラウに駆け寄り、
暴れる炎のような身体を押さえつける。
左の上腕から噴き出したのは血だが、色が薄い。
血の混じった水だ。
「水だ。大量の水を小さく固めて撃ち出してきた」
「蒸発しきれなかったってことですか?
でも一体どれだけの……」
傷口を押さえようとした僕の手に水膨れができるのを見て、
フラウが僕の手を振り払う。
「バカにするな。あのくらい消せるさ。
ただ、問題がある」
汗で濡れて束になった髪が彼女の顔に落ちかかり、
その隙間から白濁して色を失いかけた瞳が僕を見つめている。
問題は僕だ。
一瞬で蒸発させるだけの熱量を発すれば、
僕が耐えられない。
あの夜と一緒で。
すぐに走って離れようとする僕に、
フラウが倒れ込むように覆いかぶさってきた。
彼女の背中で銃弾が弾け、火花が散っている。
普通の銃弾だけど、それでも間近で連続で蒸発されると
目や喉が焼けるように痛い。
「君が側にいる限り、
熱量を上げられないと思ってるんだろうね。
その通りだが」
「一瞬でもダメですか?」
「ダメだ、骨まで溶ける。それがあいつの狙いだよ。
また私に君を殺させるのが」
また?
やったことがあるみたいな言い方だ。
彼女の顔から零れた汗が僕の顔に落ち、
涙みたいに頬を伝って口に入る。
冷たくて飲み込めない、痛みに耐える汗。
僕は彼女の身体を支える腕に目を向ける。
血は熱で固まらず、流れ続けて指先まで血に濡れていた。
彼女の呼吸も次第に荒くなり、瞳がときおり左右に揺れた。
意識がもうろうとしてきているのかもしれない。
だから口を滑らせる。
また、僕を誰かに重ねている。
「僕を見て」
お互いの目しか見えないくらい顔を近づける。
焼けてしまっても構わない。
骨が溶けても、僕だけを見てほしい。
永遠に。
目と目が合った一瞬がずっと引き伸ばされ、
僕は考えうる全ての可能性を並べることができる。
どうしてすぐにさっきの水弾を撃ってこない?
フラウの熱で僕を殺させるため?
銃声がひびわれている。
銃身に損傷がある。
最初はなかった。
水弾を撃ってからだ。
銃への負担が大きい。
何度も撃てない。
だから確実に当てたい。
けど近づいてこない。
フラウが怖いんだ。
一定の間隔で繰り返される通常の射撃。
熱の蓄積で僕が死ぬのを待つ?
どれだけの水量が蒸発した?
濃い霧は陽光さえ遮り、まるで暗雲の中。
彼女の目の奥。
冷え固まった溶岩のような色をした後悔。
彼女の記憶の中で僕は焼ける。
僕を守ろうとした、その火で。
彼女の背中で銃弾が弾け、暗雲の中を雷鳴が閃く。
光が通る。
霧が薄くなっている。
こんな短時間に? あんなに濃い霧が?
風を感じる。霧が流れている。水を集めてる。
連射できないんだ。
僕を狙っているのはフラウを動かさないようにするため。
次弾の水が集まるまでの時間稼ぎ。
遅すぎだ。喉が焼ける。
プシュケを吐こうとしても咳きこんで息が乱れる。
一回の深呼吸。
それだけでいい。
空気を求めて喘ぐ僕の顔にフラウが手を添える。
鼻を赤くして唇を震わせ、涙に濡れた瞳が僕の最後の瞬間を写し取る。
彼女はそうやって見続けたんだ。
溶けていく髪を、沸騰して破裂する眼球を、泡立って蒸発していく鼻を。
そして最後に、なくなってしまう前に、唇を合わせた。
彼女の熱い吐息が僕の喉を潤す。
僕の胸を押し広げ、肺を満たす。
別れの、哀切の嘆息ではない、生命の息吹。
後悔を目に宿して僕ではない誰かの名前を呼びながら、
彼女は今の僕を見ている。
フラウから貰った息で、僕は自分を再生させる。
骨から生まれた血は血管を流れ、神経が絡みつき、
酸素を供給された筋肉が躍動し、
皮膚が僕を他者と分け、他者に触れる。
フラウに。
「走って」
それ以上、何も言わなくていい。
走り出すフラウの背中から目を逸らさずに、
五人の僕が立ち上がる。
すかさずもといた場所の僕が撃ち抜かれた。
クリストフの持っていた銃の装填数は五発。
全弾装填済みだったとして残りは四発。
僕は残り四人。
その四人が同時にフラウに背を向けて走る。
少しでも速く、遠く、彼女から離れる。
五人全員を別々に動かすのは難しい。
シェヒトを使っているならなおさらだ。
不自然な動きで幻影と見抜かれるよりは
全員が同じ動きをしたほうがまだいい。
二発目と三発目は最初に撃たれた僕の左右。
本物を探さず、順番に撃っていく。
冷静に幻影に対処している。
目の前にフラウが迫っているだろうに、焦らないのか?
足がもつれ、膝が伸びない。
身体がだるくて頭だけが熱い。
どのくらい離れられただろう。
クリストフは執拗に僕だけを狙う。
たぶん、以前のフラウならそれで僕のもとに戻ったのだろう。
でもそれは、僕に出会う前のフラウだ。
四人目の僕が撃ち抜かれたとき、立ち止まって振り返る。
彼女がクリストフに近づいた距離よりも、
僕が彼女から離れた距離のほうがだんぜん長い。
足が遅い。
怪我をしているとはいえ、
あの長い足をどう使えばあんなに遅く走れるんだ?
でも、まっすぐ走ってる。
振り返らず、僕を信じて。
フラウがもっと近づいていてくれれば
彼女の身体が僕への射線を潰してくれただろうが、
期待できそうもない。あと三、四歩といったところか。
僕は撃ってみろと言うように自分の額を指す。
クリストフの紫の唇が歪んで笑う。
フラウに僕を殺させるのは失敗したが、
まだ彼自身の手で僕の額は撃ち抜ける。
フラウの手は届かない。
彼にとっては、それが勝利だ。
最後の僕の額に銃弾が吸い込まれる。
幻影は夢を見せ、同時に悲しみを覆う帳。
五人全員、幻影だ。
僕を殺す夢を見ろ。
僕は自分に被せていた霧のヴェールを消し去り、叫ぶ。
「フラウ」
一瞬で息もできない熱波が押し寄せる。
火の気もないのに線路周辺の木々が燃え、
フラウの足元で敷石は溶けた。
線路が飴細工のようにねじれてめくれ、のたうつ蛇みたいに迫ってくる。
フラウは銃を掴み、
溶けてねじ曲がった銃口を自分の額に押し付けた。
クリストフの顔面は焼け、
髪が蝋燭の火みたいに燃え上がって内臓を焼いた炎が口から迸る。
悲鳴か哄笑か。
彼は最後に一声鳴いて、水弾を発射した。
あの水弾はどれだけの水量を圧縮したものだったのか、
溶岩流が海や湖に流れ込んだのと同じ現象が目の前で起こる。
水蒸気爆発。
天地が逆さまになって、
自分が吹き飛ばされたと気づいた僕は思い切り身体を丸める。
目も口も閉じて耳を塞ぐ。
背中や肩が数回、打ち付けられたあとで何かに引っかかり、
僕は必死にそれにしがみついた。
風圧を感じなくなっても十秒以上、
滞空していたように感じたが、
地面に落ちた瞬間は思い出せない。
目を開けると僕がしがみついていたのはアントンだった。
図らずも彼に覆いかぶさる形になっていて、
以前に助けてもらった恩を返せたようで
失神したままの彼の背中を叩く。
列車は横転し、木々はなぎ倒され、
倉庫が片側に寄せたみたいに押し潰されて全壊している。
フラウを中心に地面が陥没しているが、範囲が不自然だ。
フラウの背後は狭く、前面のほうが倍以上広い。
立ち上がろうとしたが、
足を巨人に掴まれて振り回されているみたいに視界が揺れた。
僕は地面に手をつき、這うように陥没した地面の縁にたどり着く。
フラウは無事だ。
身体を覆う幻の服と同じで傷も汚れもない。
ただ、彼女の周囲では薄布のようなオレンジ色の光が揺れ動いて、
まるで空気が燃えているみたいだ。
近づけそうもない。
「惨めだな、ニアルド・デウ。
人の身体に入らないと喋ることもできないのかい?
お互い弱ったものだね」
手足が炭の塊になったクリストフに話しかけている。
顔面から腹部までの表皮が綺麗にそぎ落とされ、
人の形をした器になった体内に、
タールのような粘ついた液体が満たされている。
内臓や筋肉などの組織、骨さえも見当たらない。
フラウが腹の中に足を入れると
黒い粘液は押し出されて細長く伸び、
先端がフラウと顔を突き合わせるように曲がった。
何かを訴えるように蠢き、震え、
飛沫がフラウの顔の周りで蒸発する。
漂う黒い煙に隠れ、フラウが一瞬、僕を見たような気がした。
「そうはならないよ。話が終わったらそろそろ帰りたまえ。
痴愚の玉座に座る君の王に陽気な音楽を奏でてやるといい」
粘液の先端が尖り、フラウの目を突き刺すが、
彼女に触れる前に蒸発して次は白い煙になる。
フラウの足元から立ち上る熱気で陽炎が立ち、
その中に見える奇妙な角度の、
人工物か自然物かもわからない巨石が立ち並ぶ風景へと
白煙は吸い込まれていった。
クリストフの空っぽになった体は細かく崩れて霧散し、
風に吹き流されるとき、嗅いだことのない悪臭、
腐敗と変質が纏わりつくような臭いが鼻先を掠めた。
近くにいたフラウもかなり臭かったみたいで、
せき込んで身体を曲げ、えずきながら片手で僕を手招きしている。
正直、まだ近づくのは怖かったが、仕方なく慎重に斜面を降りる。
陥没した地面の深さは僕の身長ほどもあり、
線路のほうから砂利が流れ込んでいて
すぐに足を取られて彼女の側まで滑っていった。
「大丈夫ですか?
呼吸が苦しいなら僕の肩につかまって、少し前かがみに」
フラウは僕につかまると言うよりは肩を握りしめてくる。
思ったより熱も臭いもこもっていなかったし、
呼吸が苦しくなることもないけど。
「おかしいんだ。
今までぜんぜん痛くなかったのにあいつを追っ払ったとたん、
急に痛くなりだした。呪いか? この私に?」
袖部分の幻影を消すと、確かに腕の怪我は重傷だ。
肘関節近くの内側が貫通とまではいかないが、
大きく抉れて骨が見えている。血も止まっていない。
「集中が途切れたんですね。
遮断されてた痛みが戻ってくるとひどいんです」
「あんなのに集中なんかしてない。そんな価値もない」
「最後なんかだいぶかっこつけてましたよ、いい感じで」
「そうだろう。
走ってるときからなに言ってやろうかと考えてたからね」
「ちゃんと走れよ、僕が死ぬとこだったろうが」
シャツの袖をちぎって腕の付け根を縛る僕を蹴飛ばし、
痛いと喚く。いっそ失神でもしてくれないかな。
「はい、終わりましたよ。
後は傷口を押さえて、病院に行きましょう」
「すぐ治る?」
「治るわけないでしょう。治るのに何カ月もかかる怪我です」
「じゃ行かない」
「子供ですか。
そんな怪我ほっといたら腕がなくなるか悪ければ死にますよ」
「死なないよ。神は死なないから神だ」
「でももし人と関わったなら、
神もまた人と同じ時間の影響を受ける。
神は死なざるをえない」
「誰かの受け売りかい? それはもう神じゃない」
「そうです、神じゃない。
だから僕はあなたを病院に連れて行くんです」
ちょっと首をかしげて難しく考えた後、彼女は諦めて笑う。
「本当にさかしいな、君は。
私より頭も口も回る子供なんて嫌いだよ。
幻影術士でなかったらね」
それ以上は抵抗せずに僕の手を取ったものの、
フラウに自分から動く気はなく、
陥没した穴から引き上げるだけでも時間がかかった。
爆発の被害が大きかった倉庫や線路に人が集まり始めていて、
僕たちは人目を避けて木々の合間を抜け、駅から離れた。
僕の力ではフラウを背負うのも抱き上げるのも無理で、
肩を貸しても身長差のせいで
斜めになって歩かなくてはいけなかった。
彼女の服は幻影で僕は直に肌に触れていたのだけど、
失血と冷たい汗でどんどん体温が下がっていくのが怖くて
気にする余裕はない。
機関砲の掃射ですら傷一つつけられない彼女を
勝手に不死身のように思っていたが、
こんなにも軽く、脆いことに気づいてしまうと
僕の身体も冷えていくのを感じた。
思い出したくない冬の日みたいに。
失いたくない人ほど、その死を想像してしまう。
「最初に生まれた天使たちの中にね、
とても美しい子がいたんだ」
彼女を元気づけたいのに
自分の記憶に打ちのめされて何も言えない僕に、
気を遣うようにフラウが話し始める。
「肌が透き通るように白くてね、
光が眩しい、痛いって泣くんだよ。
それが生まれたての子猫と子犬が押し寄せてくるくらい
愛らしくてね、私は石を使って光を遮ったんだ。
影が生まれたんだよ」
「そんな神話は聞いたことないですね」
「今、考えてる」
「僕を寝かしつけたいんですか?」
「構わないよ。起きるまでずっと君の顔を見ていられる」
「それやめてください、本当に」
「寝なければいいのさ。
天使たちと一緒に暮らしてるころは誰も寝なかった」
愛らしい天使は影が狭いとまた泣き出す。
アフラそっくりの泣き虫だ。
アフラはもっと影を大きくするにはどうすればいいか考え、
巨大な石で空に蓋をする。
光は地表に届かなくなり、夜が生まれる。
なかなかスケールが大きい。
そう褒めるとフラウは得意げに笑った。
夜が生まれて少しすると、人々が動かなくなった。
眠りが生まれていた。
アフラが慌てて蓋を外すと光を浴びた人々は目覚め、
愛らしい天使はまた泣き始める。
困ったアフラは昼と夜を交互に繰り返す。
一日が生まれる。
ある日、蓋を外しても目覚めない人間が現れる。
どれだけ光を浴びても彼らは動かない。
そしてその日から、愛らしい天使の泣き声が聞こえなくなる。
愛らしい天使は動かなくなった人の身体に入っていた。
「そして死が生まれた」
「なかなか面白いだろう? これなら眠くなるまい」
「ちょっと怖いですね。アフラらしくないというか」
「そうかい? いつものアフラさ。
騙されて死を作った、愚かなアフラ」
アフラらしくない。
神話のアフラの性格は決して自分を愚かだなんて言わない。
それだけ弱っているのか。
それとも、弱みを見せて僕に励ましてもらいたいのか。
僕は彼女の表情をうかがう。
青ざめて、目は半分閉じて、
意識を失うまいと必死に喋っている。
僕は首を振る。
違う。
傲慢な彼女に打算などない。
フラウは眠らないのではなく、眠れなかったんだ。
死を思い出したくないんだ。
僕と同じだ。
「たとえ騙されたのだとしても、
アフラが作ったものは美しいですよ。
死が人の生をどれだけ力強く彩るか、神様にはわからないでしょうね」
「でも、人は人の死を悲しむ。
責任を感じるんだよ、全ての悲しみに」
「人の死は人のものです。
その悲しみも、誰にも渡したくない」
「そうかな?」
「そうです。責任なんて感じられても迷惑です」
「それはすまない。
でも、君の悲しみは私のものにしたいかな」
フラウは僕の頭に口をつけ、唇の動きでありがとうと伝えた。
冷たい唇からは考えられないくらい熱い吐息が漏れた。
僕にはわからない。
最も暑い季節の太陽のような生命力が体内で燃え盛っているのに、
どうしてその熱で自分自身を温めないのか。
僕はもう凍えてなんかいないのに、
あの冬の日はずっと前に過ぎ去ってしまったのに、
どうして僕を温めようとするのか、わからない。
どうしてあんなことを言ったのかも。
ありがとう。
そしてどうか、許してほしいと。
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