第12話 後日

「ふあー。よく寝た。」


 意識を失っていた俺はふかふかのソファーの上で寝かされていた。


「ようやく目覚めたのかしら。あまりにも気持ちよさそうに寝ているから、顔面パンチして起こしてやろうかと思ったわ。」


 教官は若干イライラしながら言った。


(いやいや、あんな闘いの後だから気持ちよさそうに寝てても許してくれよ。)


「ちなみにだが、どのくらい寝ていたんだ??」


「だいたい丸一日くらいね。次の闘いは1週間後よ。」


「まじか、早くねえか。」


「まあそれはさておき。話とかなければいけないことがあるから今から説明するわ。」


(それはさておかないでくれよ。もう少し休息期間が欲しいだろ普通、、、。)


「あんたが相手を倒した際の力だけどあれは能力(ギフト)ではないわ。今はもう廃れた『氣』というものよ。自身の耐久力、身体能力、自然治癒力の向上が見込まれるものよ。練度を高めれば更に応用が利くわ。」


(本来ならば、自然治癒力が向上してもあれほどの致命傷を治すことはできないはずだけど・・・。)


「あれがギフトじゃなければ。なぜ俺だけが使えるんだ。」


「正確に言うと、あなただけが使えるわけではないわ。私も使える。ただし、現存する使い手は殆どいないはずよ。」


「どうして殆ど使い手がいないんだ。」


「発現する条件が厳しいからよ。普通、5~10年の厳しい修行を経て初めて扱うことができるからよ。それなら、ギフトの練度を高める方が効率よく強くなることができるからね。そもそも最初に説明したとおりギフトの練度を高めれば脳のリミットが外れていき身体能力も向上するしね。」


「なるほどな。俺は大分珍しい部類に入るということか。」


「大分珍しいどころか、こんな短期間で『氣』を扱えるようになるなんて奇跡に近いわね。」


「そうなると、これからは『氣』の扱いに習熟していくということになるか。」


「そうなるわね。用法としては特定の部位に『氣』を収斂させることと、『氣』を剣に纏って放つことまで出来るようになれば最高ね。」


「『氣』を放つ??」


「イメージとしては、飛ぶ斬撃ってことになるわね。」


「何だそれ、めっちゃ格好いいじゃねえか。」


 少年のように目をキラキラさせて冬至は喜んだ。


(やっと、俺にも超常の力が手に入るのか。そう思うと思わず頬が緩んでしまう。)


「まあ、最初は『氣』を収斂する修行からだから、斬撃を飛ばせるようになるのはその後になるけどね。」


「一応説明したいことの話は終わったし、それでは勝利祝いに、美味しいご飯を作ってあげるわ。」


(このフリは絶対に料理が下手くそなやつだろう・・・。)


 教官は台所のほうに向かっていき、コンロに火を着けてフライパンを温め始めた。


 フライパンが温まってきたところで、バターを溶かした。


 食欲をそそる芳ばしい匂いが漂ってきた。


(そう言えば、あの闘いから丸1日何も食べてなかったことになるのか。そう考えると腹減ってきたな。)


 教官は冷蔵庫から重さ1ポンドくらいの肉塊を取り出して、フライパンに載せた。


 満遍なく肉に焼色を付けて、溶けたバターをスプーンで肉塊の上からかけている。


 それを何度か繰り返した後、皿に盛り付けてドヤ顔で俺に肉を渡した。


(ドヤ顔だけど、肉を焼いただけだからな、、、。これでまずかったら逆に凄いわ。)


 と内心思いながら、肉にかじりついた。


 かじりついた瞬間、口の中に肉汁が溢れて、芳醇な香りで満たした。


「旨い!!!」

 

 たまらず、再度肉に食らいつきあっという間に食べきった。


 食べきった瞬間、皿に肉が盛られた。


「ちなみにだが、肉以外はないのか。」


「何言ってんのよ。闘いの後は肉に決まっているでしょ。まだまだあるんだから全部食べきりなさいよ。残したらボコボコの刑よ。」


(闘いの後は肉って、原始人かよ。。。あと、ボコボコの刑ってなんだよ理不尽過ぎるだろう。これって、一応祝勝会のはずじゃないのか。)


 そうして、延々と肉を盛られ続けられながらも食べきった冬至は、翌日腹を下して一日寝込んだ。





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