第10話 初戦2
(くそっ。リーチが違いすぎるし、何より接近戦でもアドバンテージが取れないのが痛い。背中の傷は見た目ほど重傷ではないが、このまま削られ続けると待っているのは死だな。)
「次はこっちから行くぜ。」
そう言うと龍一は宙に浮いた4本のナイフで攻撃を仕掛けてきた。
4本のナイフで冬至を攻撃し、隙を見て、龍一自身が攻撃を加えてくるヒットアンドアウェイ戦法に冬至は致命傷を避けながらも徐々にその身体に傷を増やしていった。
(くそっ。4本のナイフの攻撃に対処するだけでも難しいのに、機を見て攻撃を加えてくるので、対処できねえ。それに近接戦闘の技術も高く、こちらの攻撃も上手く躱しやがる。)
(何か方法はねえか。考えろ。そう言えば相手のナイフの攻撃が距離が離れるほど雑になる傾向があるな。もしかしたら、自在に操れる範囲が決まっているかも知れねえな。)
冬至はそう考えると同時に一目散に相手に背を向けて走り出し、自身の前にあるナイフだけを弾いて、20メートルほど距離を取った。
冬至が振り返って見てみると、龍一から10メートル離れた付近でナイフが宙を漂っていた。
「そうか。やはり、ナイフの操作可能範囲が決まっていたか。」
「ほう~、よく見抜いたな。ただ、それが分かったとしても俺に近づかなければお前には攻撃手段がないぞ。」
(くそっ、このままでは八方塞がりだ。仕方ないしあれを使うか。いやっ、もっと追い込まれてもう俺には手段がないと油断させてからにしよう。覚悟しとけよ、この異常者め。)
「どうした手も足も出ないか。無能力者め!!」
「そっちこそ、打開策がないから挑発しか出来ないのか。」
「ほざけ!!切り刻んでやる!!」
(沸点低すぎだろこいつ。上手く挑発して攻撃が単調になるように進めるか。)
宙に浮かべたナイフを先頭に猛然と駆けて、切り込んできた。
その攻撃を這々の体で躱し、改めて距離を取る。
(なるほど。冷静になるとよく分かるが、能力で発現したナイフは奴の意志に沿った攻撃をするが、細かに操作することが出来ていねえ。おそらく、今は俺を切り刻むように自動的に動作しているが、全ての攻撃が連動している訳ではないので、上手く隙を見て逃げ切れる。)
「どうしたそんな雑な攻撃じゃ当たらねえぜ。」
「腰抜け野郎が、逃げてばかりいやがって!!」
そう言うと再度、突撃してきた。
「馬鹿の一つ覚えみたいに、突撃だけだな。」
四方八方からくる斬撃を体捌きと剣で防ぎ、相手の能力範囲内で幾多の攻防を繰り広げる。
(相手の攻撃にも大分慣れてきたな。相手が怒りで単調になっていることもあるが、防ぐだけなら問題なくなっている。だが、依然防御に手を取られて、攻撃出来ないのが辛えな。)
「くそがっ。さっさと死にやがれ。」
大振りになった相手の攻撃を躱し、能力範囲外へ離脱する。
「ふうっ。」
体中に汗を滴らせながら、一息をつく。
(防御に徹しているとは言え、一つ判断を間違えるとお陀仏だ。精神的な疲労も溜まってきてる。そろそろ頃合いか。)
冬至は考えながら教官との前日のやりとりを思い出していた。
「結局あんたは、能力に目覚めなかったから、剣のみでの闘うことになるわ。ただし、それだと近接戦闘のみになって、相手の能力次第では一方的に遠距離から嬲られることになりかねないわ。そこで、秘策を与えるわ。」
「もしや、遠距離攻撃ができるような凄い性能を持った武器か??」
冬至は期待に胸を躍らせる。
「じゃじゃーん。」
そう言って取り出したのはただの野球ボール大の黒い玉だった。
「おいおいおい、、、。明日は命がかかった闘いだってのに冗談はよしてくれよ。」
明らかに落胆した口調で言った。
「冗談じゃないわよ。これは閃光玉よ。これで相手の目眩ましをした隙に距離を詰めて斬りつけるのよ。」
「そんなの通用するのかよ。」
「これが意外。使い古された手ではあるけど、絶大な効果を発揮するわ。初見殺しではあるけれど、、、。」
「分かったぜ。一応、手段の一つとして考えとくわ。」
冬至は回想をやめて、決意を胸に前を見据える。
(まさか使うことになるとはな・・・。)
手をポケットに突っ込み閃光玉を握りしめる。
(このまま逃げ続けても、終着地点は決まっている。一発逆転を狙うか。)
全速力で相手に向かって突っ込み、相手との距離が10メートルになった瞬間に閃光玉を相手の足下に投げつけた。
閃光玉が地面に着弾する瞬間に目を閉じた。
閃光玉は着弾すると、落雷があったような凄まじい光を発した。
「ぐわっーーー。」
目を開けると、苦悶の声を漏らしている相手が手で目を押さえており無防備になっていた。
(まじか、、、。こんなに効果を発揮するとはな。それにしても、さっきの光はとんでもなかったな・・・。閃光玉ってあんなに光を発する物なのか。)
雑念がよぎりながらも冬至はそこですかさず相手に近づき、上段から剣を振り下ろそうとするが、その瞬間突如ナイフが現れて、冬至の右肩から左腰にかけて斜めに身体を切り裂いた。
「ぐふっ。」
冬至は身体から大量の血を吹き出しながら地面に倒れた。
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