第3話 訓練場

 目が覚めたら病院のベットではなく、堅い地面の上に仰向けに寝転がっていた。


 まず自分の足を見てみると、ちゃんと両足とも存在している。


 ふう、少し安心した。


 次に周囲を見てみると、だだっ広い荒野で時折高さ5メートルほどの岩山が存在し、その先に大きな白色の壁のようなものがあった。


 上をみると天井が存在し、青色だった。


 おそらく、空を意識した配色で閉塞感を紛らわすために、その色にしたのであろう。


 目算だがこの空間は周囲500メートル四方で、天井までの高さはだいたい30メートルほどだろうか。


 冷静に考えてかなりの広さを持った空間であると言える。


 そうして考えを巡らしていると、突如何もない空間からあの女が現れた。


「やっと目覚めたのね。」


「俺はあれからどのくらい寝てたんだ。あとここはどこだ。」


「あなたは2日間ほど寝てて、ここは私のギフトで構築した訓練場よ。」


 女の話を聞きながら、突如俺のお腹がなった。


 そういえば、喉のほうも気付けばカラカラだ。


 とんでもない現象ばかり起きているが、身体は正直で生理現象には逆らえない。


「とりあえず、食べなさい。また後で説明してあげるから。」


 また、女が何もない空間から2リットルの水とコンビニでよくみる幕の内弁当を出して、俺に渡した。


 受け取った瞬間俺は何も考えずに水と弁当を貪り食った。


 腹を満たして、少し落ち着いた俺に女は話し始めた。


「あなたが気を失ってから、私のギフトで構築したこの空間にあなたを運んだわ。ちなみにだけど、私のギフトは空間支配。色々な空間を作成でき、空間同士を繋げて移動にも使えるわ。中々応用の利く便利な能力よ。」


(いやいや、便利すぎるだろう。ギフトってこんな凄い能力ばかりなのかよ。)


 ギフトについて説明するとこうだ。人にはそれぞれギフトという能力が眠っており、個々人について1つ存在するとのこと。しかし、一般的な生活を送っている限りはその能力は目覚めず、死の危機に瀕した時に本当に稀に力を授かることがあるらしいが、ほとんどその例はないらしい。なので、普通はギフトの発現プロセスを得て、能力を得るらしい。また、ギフトを得ると脳のリミッターが解放されて、身体能力が向上するみたいだ。一般人は脳の3%しか使っていないらしいが、ギフトを得た者は脳の10~15%を使えるとのことだ。数%しか違いがないがその数%の違いが一次間数的な違いではなく指数関数的な違いであるとのことだ。おそらく大きな違いが出ると言いたいのであろう。あと、聞き逃してもかまわないとのことだったが、ギフトを極めると開花能力というものに進化し、大幅な身体能力と能力の向上が見込まれるとのこと。なお、世界には開花能力者は6人しかいないらしい。ちなみに、ギフトの発現プロセスについてだが、覚醒水という何ともありきたりな名前の液体を飲んで、1ヶ月ほど能力を知覚するための瞑想をすれば目覚めるらしい。


「ギフトについては何となく分かったが、今の説明を聞いて1つ疑問に思ったことがあるんだが、最初の時のあの説明の端折り具合は何だったんだ。」


「ん~、単純に説明するのがめんどくさかったのよ。」


「・・・」


「あと、気になったんだが、そんな簡単にギフトが発現するなら、社会にも能力者は溢れていないか?」


「いいえ、そもそも覚醒水はとても貴重で1年でだいたい数人から十数人分しか取れないわ。更に、その覚醒水については私たちが独占していて、普通の人には手に入れられないの。」


「他に質問は?」


「対戦相手のこととかは分かったりするのか?」


「分からないわ。当日対面するまで対戦相手については何も情報を得ることができないの。」


「そうなると、当日の作戦も立てられねえな。」


「もういいかしら、とりあえずどのように訓練を進めていくか説明するわ。まず、最初の1ヶ月の間に能力を目覚めさせるための瞑想を行い、後の2ヶ月間はひたすら私と1対1での戦闘訓練を行うわ。」


「おう、分かったぜ。ちなみにだが、これからあんたに色々教わることになるからあんたのこと師匠とでも呼んだらいいのか。」

 

「その呼び方だと年寄りくさいから、却下!」


「じゃあ、チューターか。」


「そのまますぎて、ひねりがないから却下!」


「そうね〜、麗しの彩様と呼びなさい。」


(本当に自分の容姿に自信持ってるな。それになんで「様」づけなんだ。)


「じゃあ、よろしくな。麗しの彩様。」


「あんた、女の子にモテないでしょ。そんな呼び方されて喜ぶ女性はいないわ。」


(いやいや、おめえがそう呼べって言ったんだろうが、、、。それに、何で呼び方決めるだけなのにこう何回もやり取りしないといけないんだよ。)


「とりあえず、教官と呼びなさい。」


(えらく普通だが、面倒くさいので、ツッコむのはよそう。)


「分かった。これからよろしく頼む。」


「任せときなさい。そこそこ闘えるようには仕上げてあげるわ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る