第2話 謎の女
再び、目が覚めると俺は病院のベットにいた。
もう一度顔を下に向けて足を見たが、やはり両足はなかった。
両足とも膝から下が切断されていた。
これが夢ではないことを認識し、何度も深呼吸して落ち着いたところで部屋の中を見回した。
そうすると俺の目の前に女がいた。
その女は、背は170㎝を超えるくらいで、顔たちはクリッとした二重に高い鼻、輪郭がシャープでモデルのような美人であり、髪型は肩にかかるくらいのボブカットで、スタイルも出るとこ出ており、扇情的だった。
恐らく今まで観た中で、一番の美人だろう。
「やあ、こんばんは。早速だけどあなたには選択権がある。このまま両足を失った人生を送るか、自らの人生を取り戻すため闘争の道を歩むか。どちらか選んでちょうだい。」
(この女大丈夫か、、、説明不足過ぎて意味不明なんだがこれはどうしたらいいんだ。。。)
「すまないが、あんたの言ってることの意味が分からないのと、あんたは一体誰なんだ。」
「そうねー。私は美人で美しくて綺麗な謎の女、彩よ。そして、あなたのチューターね。」
(とりあえず、自分の容姿に自信を持っている女なんだな。それと謎の女と言っておきながら自分の名前を言ってるところを見ると頭もちょっとあれらしい。)
「とりあえず、美人のお姉さん、先ほどの選択権がどうだとの話とチューターってところについて説明してくれないか。」
「ちゃんと褒め方分かってるじゃない。いいわ説明してあげる。」
(いやいや、あんだけ容姿を強調した自己紹介をしてて、褒め方分からない奴いるのかよ。。。)
女の話を簡単に要約するとこうだ。もし俺が闘争の道を選べば失った両足を治してもらうことができるが、生死を賭けた闘いに挑まなければならない。その闘争に勝ち抜けば自由と莫大な賞金が得られるらしい。その際に、闘いの訓練や生活面等のサポートを行うのが、チューターとのことだ。ちなみに、「私がチューターを担当するのは初めてだわ、幸運に感謝しなさい。」とのことだったが、あの女は初心者のチューターだったので、不安しかない。
「すまない、あまりに夢物語過ぎて、全く話を信じられないんだが。そもそも失った両足が元に戻るなんて現実的にありえないだろう。」
「流石にそうよね。いきなりこんな話されても信じられないわね。」
(良かったぜ。一応少しは常識はあるみたいだな。)
ふと、女が何もない空間からいきなり青い液体の入った瓶を取り出した。
「おい、一体今のは何なんだよ。」
「この液体は、秘薬エリクサーと言って、あなたの足にかけると、新たな足が生えてくるわ。ちなみにだけど、部位欠損を回復するもの凄く貴重なモノだからね。」
(いや、そこじゃねえよ。一体どうやって何もない空間から瓶を取り出したんだよ。)
「とりあえず話を信じてもらうために、右足を治してあげる。少し痛いけど我慢してね。」
そうして、女は唐突に瓶の蓋を空けて、俺の右足に瓶の中に入っていた液体の半分をかけた。
その直後、凄まじい痛みが俺を襲い、あまりの苦痛に思わず絶叫し、一瞬意識が飛んだ。
数分後ようやく痛みが落ち着いてきて、ゆっくりと右足を見てみると、本当に足が生えていた。
「まじかよ・・・。」
絶句してしまい、数分間の沈黙が訪れた。
「おい、何が少し痛いけどだよ。死ぬほど痛えじゃねえか。」
「そんな些細なことより、何か言うことがあるんじゃないかしら。」
「些細じゃねえよ。ちっ、、、ありがとよ。」
「一応、今回の右足の治療はサービスよ。フェアじゃないからもう少しだけ説明してあげる。」
「今回選ばれた8人がトーナメント戦で1対1の生死を賭けた闘いを行う。その際、敗者は生き残った場合は自由を奪われ、優勝者のみが自由と賞金を得る。もちろん、今のままでは闘いにならないからそれぞれに3ヶ月間の準備期間が与えられる。その際に、訓練指導をするのがチューターで、それぞれの参加者に一人ずつ付いてるわ。また、先ほど私が何もない空間から瓶を取り出したのはギフトと呼ばれる能力で、参加を表明した場合あなたにもそのギフトを身につけてもらうわ。」
「そのギフトって言うのは、誰にでも身につけられるものなのか。」
「一度死の危機に瀕した者は、比較的目覚めやすいのと、一応ギフトを目覚めさせるプロセスは確立されていて、遅くともそのプロセスだと1ヶ月間もあれば目覚めるわ。」
「そうか・・・。」
(このまま片足を失ったままだと俺の生きがいであるレースをすることができず、一生車椅子生活だ。しかし、この女の言うとおり生死を賭けた闘いに臨み勝てばまたレースをすることができる。確かに命を失う可能性はあるが、レースができない人生なんて俺にとって生きている価値はあるのだろうか。いや、ねえだろ。必ず勝ってまたストリートレースの場に戻ってやる。)
「分かった。その闘いの場に参加しよう。」
「いいのかしら。そんな簡単に決めて。」
少し驚いた顔をしながら女は言った。
「ああ、俺にはレースのできない人生なんて考えられないからな。それに、もう誰も俺の帰りを待っている奴なんていないしな。」
「そうなんだ、、、可哀想ね。」
女はそれ以上何も言わず気まずい雰囲気が流れた。
(いや、少しくらいフォローしろよ・・・)
「なあ、早速で悪いが選択をしたんだ。もう片方の足も治してくれよ。」
「分かったわ。」
そう言うと、女は先ほどと同じように瓶の中に残っていた液体を左足にかけた。
またも、壮絶な痛みが襲ってきて、俺は意識を失った。
薄れゆく意識の中、あの女の声が聞こえた。
「やっぱり、さっきので大分体力を失っていたみたいね。」
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