闘争の果てに

@taita

第1話 幸村 冬至

 まずは、自己紹介から始めないといけねえな。


 俺の名前は幸村冬至(ゆきむらとうじ)、勉強、スポーツ共に特に秀でたモノはないが、車が大好きでスピード狂なところが特徴的か。


 身長は175センチで体重は70キログロム、中肉中背で自分で言うのも空しいが本当にどこにでも居るような男だ。


 顔はまあ普通だな。


 強いて言うなら、劣化版竹内涼真ってところか。


 文句は受け付けないぜ、あくまで劣化版だからな。


 性格は堅実で冷静、あとは負けず嫌いなところか。


 しかし、車が絡むと少し破天荒になるな。


 唯一、自慢できることと言ったら、動体視力が良いところだ。


 車の運転に必要な能力だろうと気まぐれで受けに行った動体視力テストで見事満点の評価を受けた。


 何でもボクサーの世界チャンピオンなどと同等以上の数値だとのことだ。


 一応、どんな人生を送ってきたかも簡単にだがおさらいしておこう。


 俺は物心つく前の小さい頃に両親を亡くし、母方のばあちゃんに育てられた。


 そのため、特に親を恋しく思ったことはない。


 ばあちゃんは穏やかで優しく、裕福ではないがそこそこ充実した生活を送れた。


 そんな俺だが小学生の時に連れて行ってもらった遊園地でゴーカートにハマって、以来車が大好きになり、よくレースを観るようになった。


 その影響か中学、高校とも特に部活には入らず、高校では車の運転免許を取得するお金を貯めるため、アルバイトに明け暮れた。


 そこで出会ったバイトの先輩に車好きの人がおり、よく峠を走るドライブに連れて行ってもらった。


 その先輩は、走り屋でもあり、偶にあるストリートレースにも連れて行ってもらった。


 そのことにより更に車好きに拍車がかかり、18歳になると同時に俺は運転免許の取得に行った。


 もちろん、MTでの取得だぜ。


 車好きなのにAT限定は恥ずかしすぎるだろ。


 その後、運転免許を取得した俺は、高校卒業後に地元のガソリンスタンドに就職した。


 1年間必死に働いて貯めたお金で中古のホンダCR-Zを買った。


 最初に自分の車を買った時は、感動しすぎて毎日車を磨いてたな。


 それからは毎日仕事終わりに峠に走りに行って、運転技術も磨いたな。


 それ以外にも、Googleで調べたらプロのレーサーは筋トレをするとのことだったので、筋トレも欠かさないようにしたっけ。


 俺は速く走るための努力は何でもした。


 その甲斐あってか、以前のバイト先の先輩に誘われたストリートレースで勝つことができた。


 ストリートレースは違法だが、そんなのは俺には関係なかった。


 これこそが俺が生きている理由だとも思った。


 たとえ仕事をクビにされようとも、レースを辞めることはないだろう。


 そのくらい、俺はこの一回のレースにハマってしまった。


 以来、俺は更に車での走り込みや筋トレに打ち込み、遂には地元で負け知らずのストリートレーサーになった。


 地元界隈の走り屋の中でも、ちょっとした有名人になり、少し得意げだったっけ。


 しかし、人生を謳歌していた俺だが、1つとても落ち込むことがあった。


 それは、育ての親であるばあちゃんの死だ。


 何の前触れもなく急性心不全のため、亡くなってしまった。


 俺がストリートレースに出ており、家におらず発見が遅れたため、病院に搬送されても意識が戻らず、そのまま亡くなってしまった。


 あのときは、どうして家に居なかったんだろうと後悔に苛まれた。


 それからの3ヶ月は仕事には通いながらも気分が塞いでしまい、家に居ることが多くなった。


 そんな俺の様子を見かねたレース仲間が久しぶりにストリートレースに誘ってきた。


 何でも相手は隣町で負け知らずのストリートレーサーらしい。


 その話を聞き、火が付いた俺はレースに出ると言ってしまった。


 あの時、その選択をしなければ運命は変わっていただろうか。


 当日のレース日は生憎の雨だったな。


 俺自身の心理状態を表すような天気だった。


 それでも俺はレースに生きがいを感じていたので、絶対に負けたくなかった。


「誰よりも速く走れる」それが俺のアイデンティティーだったからだ。


 正直、相手と比べると運転の技術は俺の方が上だった。


 コースの山場である急コーナーまで俺が先行しており、そこからは俺が最も得意とする場所だったからだ。


 しかし、俺は雨で道路が濡れていることと自身の心理状態を考慮していなかった。


 普段の冷静さを失い路面のコンディションを考えていないスピードで急コーナに突っ込んでしまい、ハンドルを切った際に車が滑り、そのまま壁に突っ込んだ。


 そして、俺の意識は途絶えた。












 目が覚めると病院のベットに寝かされていた。


 いつもと身体の感覚が違う気がすると思い、ふと顔を下に向けると足がなかった。


 俺は突然の出来事で理解できず、発狂して大声で叫んだ。


 そうすると直ぐに看護師が現れて、鎮静剤を打たれ、また意識を失った。















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