第二十二話 凱旋式

 帝国軍大勝利のニュースは。ランニングホースの早馬によって即座に帝都に届けられた。


 それはもう、貴族界も平民たちも大騒ぎになったわよね。夜会では乾杯の声が途切れることはなく、帝都の酒場では帝国万歳の声が一晩中響いていたとか。


 アクロード様もガーナモントも無事だという知らせも届いて、私はもう心の底からホッとしたわよね。お義父様もお義母様も妹姫も大喜びだった。


 戦争が終わっても馬大臣の職務は終わらない。今度は徴用した馬を無事に元の所有者に返還しなければいけないのだ。これまではこれもいい加減で、戦後に色々なトラブルがあって大変だったらしいのだが、私が取り仕切るからにはそんな事は許しませんよ。


 馬には生まれて直ぐに生産者と血統番号が焼き印で押されている。それを元にすれば所有者は直ぐに分かるようになっているのだ。私は戦地から帰ってきた馬を帝都近郊の貴族所有の牧場に仮収容して、焼き印を元に馬を所有者に返還した。馬の中には平民所有の馬もいたので、これもきちんと帰す。平民の馬などこれまでは戦場に曳かれて行ったが最後、帰って来ない事が普通であったため、私は随分平民に感謝されたそうだ。


 馬をドンドン帰すのとは別に、戦場で鹵獲された敵の馬については帝都近郊の牧場では狭すぎるのでフェバステイン公爵領の牧場に入れて貰った。ここで治療や調教をやり直した後に(フローバル王国で調教されているのだからそれほど手間は掛からないでしょうけど)戦争で馬を失った貴族に補償として引き渡すか売るかを考える事になるだろう。戦場で捕らえた馬は戦利品としてアクロード様の所有物として良いことになっているので、私がどう処分しても構わないのである。


 そのように馬大臣の職務を果たし、その過程で帝国軍の方とお話ししていると、戦場におけるアクロード様とガーナモントの活躍の事が色々耳に入ってきた。


 何でも、アクロード様はガーナモントを駆って戦場を誰よりも速く、誰よりも多くの距離を駆け回り、自らの手で敵将を討ち、ガーナモントの走りには味方の馬すら追いつけなかった、という事だった。アクロード様はその圧倒的な活躍から「軍神アクロード」讃えられ、ガーナモントは「軍神の駆る神馬」という扱いになっていた。これは帝国軍の間だけの噂では無く、帝国貴族たち、そして平民の間にも響き渡る名声だという事だったわね。


 アクロード様とガーナモントの活躍は嬉しいけども、私としては二人が無事に、早く帰ってきてくれるのが何より一番大事な事だった。アクロード様は前線での後始末が終わったら帰還なさるだろうという話だった。ガーナモントはそんなに戦場を駆け回って疲れていないだろうか、故障はしていないだろうかと心配になったわね。


 私は馬大臣として皇帝陛下や皇太子殿下の所にも頻繁に参上していた。私は戦争が終わる頃にはお二人に「馬の事」に関しては非常に信頼されていた。皇太子殿下が後に言うには「其方は馬の事になると人が変わったからな。怖くて逆らえなかった」という事だった。冗談でしょうけどね。


 ある日私が報告のために参内すると、皇帝陛下は私室のサロンで皇妃様と共に接見して下さった。内宮の私的な場所でお会い下さるというのは、皇帝陛下がその者の事を非常に信頼して、親愛の情を抱いているという事を示す、非常に名誉な事である。皇帝陛下は私の前で皇妃様とリラックスした様子でお座りになって、私に頭を下げた。皇帝陛下が頭を下げるなんて通常はあり得ない事で私は驚いた。


「其方と、アクロードのお陰で勝利する事が出来た。礼を言う」


「結婚間近の貴女達に無理をさせて、本当にごめんなさいね」


 私は慌てて言った。


「と、トンデモございません。アクロード様は兎も角、私は大した事はしておりません。馬の事しかやっておりませんし」


 焦る私を見て皇帝陛下は優しく笑って仰った。


「その馬だ。馬を丁重に扱うことがこれほど重要な事だとは思いもしなかった。それを知れたのは其方のおかげである。立派な功績だ。卑下せぬでもよい」


 皇帝陛下が言うには、戦場で馬が無駄に死ななくなったせいで、帝都に物資を運ぶための馬が不足することが無く、戦時にはよく起こった物価の高騰や不足が起こることが今回は無かったのだそうだ。そのせいで帝都の情勢は非常に安定し、戦地以外の街でも平民の反乱のような事も起こらず、帝国の情勢に揺らぎも無かったために付け入ろうとする第三国の暗躍も無く、帝国はフローバル王国との戦争に集中出来たのだという。


 それに私とジョッキークラブの方々が構築した早馬システムはそれはもう革命的な高速通信だったそうで、これは今後の戦役でも是非使用したいとの事だったわね。


「ランニングホースの優秀さは明らかだからな。帝国としても競馬の発展、そして馬匹改良に取り組もうと思う。その際には其方も皇族として協力して欲しい」


 なんと! 私は思わず目が輝いてしまった、これは私に皇族として競馬の発展や馬の改良について関わって欲しいとの要請では無いか。私はもうちょっと夢が膨らんで大変な事になったわよね。


 皇妃様はそんな私の事をニコニコと見ながら、サラッと言った。


「そうそう。貴女とアクロード様の結婚式は、凱旋式と同時に行う事にしましたから、凱旋式に相応しい古式のドレスと装飾も作っておきなさいね?」


 ……え?


 が、凱旋式? 凱旋式は私も何度か見たことがあるから知っている。金色の無蓋馬車に古式の鎧を着た戦勝将軍が乗って、帝国軍を率いて帝都を練り歩くあれだ。どうやらアクロード様は今回、戦勝将軍と認定されて凱旋式の権利を得たらしい。


 そしてその凱旋式と同時に結婚式を行うことになったのだとか。なにそれ?


 いや、アクロード様が凱旋式をなさるのは良い。喜ばしい事だ。でも私は関係無いんじゃない? 私は神殿で凱旋式が終わるのをお待ちして、それから結婚式をすれば良いのでは?


「せっかくだから貴女も将軍の馬車に乗りなさい。そしてそのまま神殿に入れば良いではありませんか」


 えー!? そ、そんな。凱旋将軍の馬車に乗る権利があるのは将軍だけではありませんか! 私には権利がありませんよ!


「貴女の功績は十分にそれに値します。それに、アクロード様に打診したらノリノリで承知して下さいましたよ」


 皇妃様! アクロード様に打診なんかしたらOKするに決まってるでしょう! この方、絶対分かっていてアクロード様に聞いたに違いない。


 私は辞退したかったのだが、皇帝陛下も皇太子殿下も、他の大臣諸卿も皆私には功績があると認定して下さり、結局私はアクロード様と一緒に凱旋式に出る事になったのだった。


  ◇◇◇


 アクロード様が帝都に帰還なさる日は朝から大騒ぎだった。凱旋式はまた後日に行われるのだけど、今日は他の騎士や兵士の皆様もお迎えする帰還式だ。私は早朝から濃い青の格調高いドレスを着せられ、皇族にしか許されないティアラを頭の上に載せて帝都の東門の上に設置された皇族席に入った。


 出征の時はここからアクロード様と兵士達が遙かに遠い東の国境に向かうのを見送ったのである。あの時は辛くて寂しくて不安で大変だったけど、今度はお迎えだ。アクロード様の無事もガーナモントの無事も分かっているのだから楽しみなだけだ。ガーナモントが怪我していないかが心配なくらいね。


 もう季節は春の終わりくらいでそろそろ夏だ。アクロード様は戦争が思ったよりも長引いたせいで、結婚式が予定通りに出来ないのでは無いかと心配していたけれど、あと一ヶ月くらいあるからギリギリで間に合ってホッとしているでしょう。


 やがて、遠くから軍勢がやってくるのが見えた。青と赤を主体にしたカラーリングの制服を着て、軍楽隊の演奏に合わせて行進してやってくる。帝都東門の周辺には観衆が集まっており、兵士達が近付いてくると爆発的な歓声が沸き起こった。


 中でも一番大きな歓呼を浴びているのは、白金色の髪をなびかせて麗しいお顔に満面の笑みを浮かべて手を振る、黒い大きな馬に乗っている男性だ。アクロード様は誰よりも堂々と、誰よりも素敵に隊列の中央でもの凄く目立っていた。


「軍神アクロード! 万歳!」「神馬ガーナモント!」


 なんていう声も掛かっていたわね。兵士達は大歓声の中東門の前に差し掛かった。皇帝陛下が演台に立ち、兵士達に祝福とお礼のお言葉を述べていたのだけど、平民達の大騒ぎのせいで何にも聞こえなかったわね。これは兵士達にも聞こえていないでしょう。だけどアクロード様は馬上礼をして神妙なご様子で聞いていたわよ。門の上に立つ私を見付けてニヤッと笑っていたけどね。


 兵士達が入門すると、私達は帝宮に移動する。兵士達はこのまま帝都中をパレードした後に帝宮へと帰ってくるのだ。帝宮に移動したら、騎士達を出迎える大謁見式での儀式が行われる。大忙しだ。お義父様が苦笑する。


「私が戦争に出た時には、帰りは馬が無くてロバの背中に揺られて帰ってきた事もあったのだ。それに比べて今回は、騎士達全員がずいぶんピカピカな馬に乗って帰ってきたものだな」


 そりゃあ、騎士達が乗る馬は全て、私の手配した牧夫が今朝にブラッシングして磨いてありますからね。兵士達全員は無理だけど、負傷者や疲れた兵士が乗れるように馬車も沢山手配した。だから兵士達もみんな元気だったのだろう。


 大謁見室で待っていると、盛大な音楽と共に騎士達が入場なさった。先頭は騎士団長のボーバラ侯爵。その後ろに副団長のアクロード様ともう一人の副団長様だった。でも衆目の一致するところ、今回の戦いの最大の戦功を挙げたのはアクロード様だった。なので、皇帝陛下の前に跪く段階でボーバラ侯爵はアクロード様を前に出し、自分は後ろに下がった。アクロード様は苦笑しながら先頭で跪いたわね。


「皆、よくやってくれた。皆の活躍により東の国境は保たれた。既にフローバル王国より和平を願う使者がやってきておる。どんな条件も呑むということだ。遠慮無く我が帝国の地を侵した罪を償わせるつもりぞ。本当によくやってくれた。特にアクロード。其方の武威は三国に響き渡った。其方が有る限り、この帝国を侵そうという者はもう出なかろうぞ」


 皇帝陛下のお褒めの言葉に、アクロード様は顔を伏せたままでお応えになった。


「勿体ないお言葉でございます。しかし、此度の勝利は私だけでは無く、他の皆も含めて戦った者全ての勝利です。それに、我が軍を厚く支援してくれた皆の勝利でもありましょう」


「そうだな。帝国軍全将兵、そして帝国臣民皆が掴んだ勝利だ。私はその全てに感謝の祈りと祝福を捧げ、報いるつもりだ」


 そしてアクロード様以下、騎士の皆様は立ち上がる。アクロード様は胸に手を当てる騎士礼の状態で、張りのあるお声で叫んだ。


「帝国万歳! 皇帝陛下万歳! 帝国軍全将兵に栄光あれ!」


「「帝国万歳! 皇帝陛下万歳!」」


 謁見室にいた高位貴族の皆様が唱和して、謁見室は拍手と万歳の声にうわーっと包まれた。私も万歳万歳と叫び拍手して騎士の皆様を讃えたわよね。自然と涙が目に浮かんでしまう。


 すると、私の前に大きな人影が立った。私はそのお顔を見上げる。流石に戦場で精悍に日焼けなさったお顔だけど、それでも十分に秀麗で麗しい。


「無事帰ったぞ。我が婚約者殿。ガーナモントにも傷一つ無い」


「お帰りなさいませ。でも、私はもう貴方の妻ですよ?」


「あんな結婚式は無しだ。無し。来月に過去に例の無いくらい壮大な結婚式をするのだからな」


「あら、それだとキスはお預けですね。唇のキスは夫婦の特権ですものね?」


「そこは都合良く無視する事にしよう」


 アクロード様はニヤッと笑うと、私を抱き締め、私の唇に強めのキスをくれた。私も彼の首をぎゅーっと抱き締めて唇を彼の唇に押し付けたわよね。周囲からなんだか盛大な拍手喝采が起こっていたけれど、私にはアクロード様のお姿と息遣いしか分からなかったわよ。


  ◇◇◇


 一ヶ月後、アクロード様の凱旋式と私達の結婚式の日が来た。


 私はまず、古式のドレスに身を包む。これは一枚の純白の長い布を流麗に身体に巻き付けるようなドレスで、それを赤いサッシュで留めるという優雅なものだ。そして頭には金で出来た羽のような冠を被る。


 この格好は神殿の女神様の使徒と同じ格好である。私は今回は設定上はアクロード様と共に女神様の使徒となるらしい。女神様の使徒として帝国を護るために戦って、凱旋したという事になっているのだ。


 その格好で私は帝都の真ん中にある大神殿に向かう。凱旋式が終わったら今度は大神殿でウェディングドレスに着替えて結婚式なのだ。本番仕様のもの凄く豪華で華麗なウェディングドレスはあまりにも繊細なために着るのがもの凄く大変なのだけどね。着付けに二時間くらい掛かるのだ。それを、凱旋式の後に直ぐさま着替えて式に臨まなければならないというかなり無茶なスケジュールなのだ。


 大神殿に到着すると、大神殿は既にもの凄い数の民衆で文字通り「埋まって」いた。馬車で近付くのがもう大変だったもの。そして広大な大神殿の中にはこれまたもの凄い数の人々がいた。これ以上無いほど着飾った上位貴族の皆様がひしめいていたのだ。前にアクロード様が一千人って言っていたけど、もっと多いのでは無いかしら? 外国からの来賓の方々もいる。


 一千人分のお席を用意するのは大変で、急遽お席を増設して対応したのだ。それでもかなりの人が立ちっぱなしになってしまうみたいだったわね。儀式が始まると、私はその大勢の皆様に見守られる中を、古式のいかめしい鎧を纏ったアクロード様と並んで進み、大祭壇の前で跪く。大祭壇には皇帝陛下がこれまた古式の神祇官のご衣装でお待ちだった。


「戦勝をもたらした其方に女神様は祝福を下さった……」


 で始まる皇帝陛下からの古式の長い長い祝福を受け終わると、今度は私とアクロード様は大拍手の中を大神殿の大扉へと向かう。大扉が開かれると、そこは二十段ほどの真っ白な階段だ。その上に私達が姿を現すと、神殿間の大広場を真っ黒に人が埋め尽くしているのが見えた。とんでもない人の数だ。何万人いるんだろう? これ?


 そしてその人々が怒濤のような勢いで叫んだのだ。


「戦勝将軍アクロード! 万歳!」


「戦の神よ! 帝国を護りたまえ!」


「女神よ帝国に祝福を!」


 耳が聞こえなくなるほどの、風圧さえ感じるほどの大歓声だったけど、アクロード様は涼しい顔で、私の手を持ち上げて、高々と手を挙げて歓声に堂々と答えていたわね。流石は数万の軍隊を指揮する将軍だ。私も何とか手を振って歓声に応えたわよ。


 大歓声と拍手の中、階段を降りると二頭の白馬に引かれた金色の無蓋馬車が待っていた。私とアクロード様はこれに乗って帝都中をパレードするのだ。既に周囲からは花弁が盛大にまき散らされていて、お祭り騒ぎだ。


 気が付くと、馬車の前に黒くて大きな馬が、花や飾り布や金糸でこれでもかと飾り付けられて立っていた。


「ガーナモント!」


 私が呼び掛けると、ガーナモントはなんだか得意そうな顔で振り向いてヒヒンと嘶いた。


「馬の戦功ではガーナモントが一番だったからな。十分に凱旋式に参加する権利はある」


 アクロード様が仰るように、観衆からは「神馬ガーナモント!」という呼び掛けも少なからずあったわね。何でもガーナモントは空を飛んでアクロード様を運び、帝国軍の危機を救ったのだと噂されているそうで、実際黒い疾風のように戦場を駆け巡るガーナモントとアクロード様の姿に帝国軍は勇気付けられ、奮い立ったのだそうだ。それは確かにガーナモントも顕彰されなきゃね。


 ガーナモントはこれも着飾ったレオックが引いてくれるようだ。ガーナモントを先頭に、凱旋式の行列は動き出す。私とアクロード様は立ったまま馬車に乗り、周囲に手を振った。左右の大観衆。そして帝都の街路を挟む建物の上からも大量の花吹雪が舞い落ちてくる。様々にアクロード様を讃える声が掛かり、沿道では酒盛りが始まり、太鼓やラッパ、更には鍋釜をガンガン叩いて盛り上がっている平民もいた。


 大騒ぎだ。その中を誇らしげに歩くガーナモントと堂々と手を振るアクロード様。そして遠慮がちに手を振る私が進む。なんというか、私は別に戦勝の役には立っていないのだから、やっぱり場違いよね。ウェディングドレス姿でアクロード様とガーナモントが凱旋式を終えるのを待っているべきだったのでは?


「何を言うか、君は自己評価が低過ぎるな。君が馬を大事にさせたおかげで我が軍は圧勝出来たのだ。その事は誰もが認めている。もっと誇って良い」


「う〜ん。でも私は馬とアクロード様の事しか考えていませんでしたから」


 最初は自分なりにアクロード様のお役に立てる事を、と考えていた筈だけど、戦場での馬の扱いがあまりに悪いから激怒してしまって、その後は馬の扱いの改善だけに奔走してしまった気がする。結局は私はいつだって馬最優先主義なのだ。


 こんな私が皇族として権力を握ってしまって大丈夫なのかしらね? 私はこれからも人より馬を優先してしまいますよ?


 しかし、アクロード様は苦笑して仰った。


「君が馬最優先なのは知っている。人より馬の事が好きなのもな。私はそんな事は百も承知で君を娶るのだ。そして私の見る目は間違っていなかった。君の馬最優先は結局帝国を救ったのだからな」


 アクロード様が認めて下さったなら、頑張った甲斐はあったというものなのでしょうね。このままの私で良いとアクロード様が言うのなら、私はこれからもアクロード様とフェバステイン公爵家と、そして帝国の馬たちのために頑張っていくことにしよう。でもね……。


 私はクスッと笑ってアクロード様の耳元に口を寄せて囁いた。


「私は人より馬が好きですけど、アクロード様は特別ですよ」


 アクロード様が驚いたようにその碧色の瞳で私を見つめる。


「貴方の事が世界のなによりも好きです。勿論、馬よりもね」


 アクロード様は感動に戦慄いた。少し目を潤ませて私を抱き締める。


「やっと、君の一番になれたな」


 そして私の顎を優しく上げさせると、私の唇に激しいキスをなさったのだった。


 その瞬間、沿道の民衆も馬車の後ろで行進していた兵士達も騎士達もヤンヤの大喝采となり、花吹雪が舞い踊り、先頭を行くガーナモントがブヒヒヒン! と揶揄うように大きな嘶きを放ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る