第十一話 公爵城での生活

 アクロード様のお陰で私の公爵城での生活は、婚約前に考えていたよりもずっと快適なものになった。


 朝、私はまだ真っ暗な内に飛び起きると、着替えて馬場へ向かう。付き合わされるミミリアには悪いと思うけど、お姫様が一人で着替えて行動するなんて許され無いから仕方が無いのだ。


 日焼けの隙間が無いように、手袋をして帽子の上から農夫みたいにスカーフを被っている。公爵家の侍女達はニルベニアを筆頭に、私の肌を何とか真っ白にしたいと奮闘しており、日焼けだけは絶対にしてくれるなと泣いて頼まれたのだ。馬に乗る時は口元をスカーフで覆う。本当は不自由で嫌だったけど、これも次期公爵夫人としての責務だから仕方が無い。


 本当は乗馬には専用の乗馬ズボンというものがあるのだが、これも身体の曲線がはっきり出過ぎだとNGになり、腰の所には飾り布を巻いている。本当は馬に跨がるのだってはした無い行為なのだけど、そこはどうにか目を瞑って貰っている。


 私は走って(後ろをミミリアが必死に追い掛けて)厩舎に飛び込む。もうその頃にはレオックを始めとする牧夫達が仕事を始めている。本当は私も馬房掃除なんかを手伝いたいのだが、これは許されない。汚れ仕事は平民の下働きの仕事で、断じて姫君の仕事では無いからだ。


 仕方なく私は今日乗る馬に馬装を着けて、馬を散歩させる。いきなり馬を走らせると馬が怪我をする。入念に準備運動させてから馬に乗る。


 公爵城に造られた馬場は一周が約一キロ。丘の緩やかな斜面に、公爵城の内城壁に沿ってD字型に造られている。そこを最初はゆっくりと走らせる。そして馬の調子を確かめた後、馬を段々加速させる。


 ただし、大事なのは馬に好き勝手に走らせないこと。騎手の言うことを聞いて、指示に従って加速減速をするように躾けるのだ。


 最後には馬に鞭を入れて全力疾走させる。あまりにもの凄い勢いで私を乗せた馬が走るので、ニルベニアなどは最初に見た時には真っ青になっていたわよね。公妃様もご覧になって「正気じゃないわね」と目を白黒させていた。まぁ、実際、全力疾走した馬から振り落とされて大怪我を負う騎手も少なくないからね。みんなを心配させたら大変だから言わないけれど。


 そして馬の調教を終えると、馬を牧童に任せて、私はお屋敷に戻る。そして直ぐさまお風呂に入れられて、マッサージ、美白、お化粧をして、ドレスに着替える。それから公爵ご夫妻、アクロード様、妹姫達との朝食に臨むのである。


 私のお部屋は客間で、公爵ご家族の生活スペースからはやや離れている。婚約者だけどまだ家族ではないという扱いだ。結婚すると今度は私とアクロード様は別館に移る予定である。そしてアクロード様が公爵位を継がれたら本館に入る事になるだろうね。


 公爵閣下も皇妃様もアクロード様と私に早く結婚して欲しいというご意向で、来年には式を挙げるべく急ピッチで準備を進めているらしい、早く跡継ぎを得たいのだ。フェバステイン公爵家にはアクロード様しか男子がおらず、アクロード様に万が一の事があるとお家が断絶する危険があるからである。


 アクロード様も早く結婚したいと仰るし、私だって同じ思いだったから、異存は無い。この私が早く結婚したいと思うなんて、私も変わったわよね。


 公爵家では、お城に皆様がおられる時は揃って食事を摂るのが決まりである。昼食や夕食は皆様が社交や仕事に出てしまって出先で食べる事も多いので、全員が揃うのはほとんど朝食の時だけだ。


 それもここ何年かはアクロード様が国境地帯に常駐してしまっていて、お城にいない事も多かったから、全員が揃う事はしばらく無かったらしい。それが私と出会って以来、アクロード様はずっと帝都にいるものだから、お兄様が大好きなディーリットとクリエールは随分と喜んでいた。


 フェバステイン公爵家は領地に広大な農場と牧場を持っているし、海沿いにある漁港からも専用便で新鮮な魚介類が届くので、お屋敷の食事は毎回豪華である。調理人の腕も良いので本当に美味しい。


 私はなにしろ朝食前に馬乗りをして運動しているのでお腹が減っている。それに貴族は昼や夜は社交でお出かけして、出先で食事をする事が多く、そういう場合はあまりガツガツ食事をするわけにはいかない。特に女性は少食な方が上品であると見られる傾向があるため、満足に食べられない。


 なので私はお屋敷での朝食はいつも沢山食べる。最初にそれを見た公爵ご夫妻は大いに驚いていたわよね。アクロード様は私が牧場で牧童と奪い合うように食事をしているところを見ていたから驚かなかったわよ。


 焼きたてのパンが数種類。お芋の香り香しいスープ。ひき肉をソテーしたもの。白身魚のムニエル、マリネのサラダ。鶏肉に白いソースの掛かった料理や、貝とエビが沢山入ったグラタン。モリモリ食べる。でないと身体が保たないもの。


 ただしお作法には細心の注意を払う。でないとニルベニアに注意される。公爵家のお作法は伯爵家のそれよりやはり厳しく、その辺をニルベニアの教育で少しづつ直しているところだ。


 お食事の最中はご家族の皆様と楽しくお話をする。公爵閣下は豪放な方だし、公妃様も気取らない方だ。アクロード様は言うに及ばず、妹姫お二人もすっかり仲良くなっている。婚家に入ったら義理の母や小姑に虐められたなんて話はよく聞くのに、身分差がある私を公爵家の方々は暖かく迎え入れて下さった。感謝感謝だ。


 話題は社交で聞いてきた噂についてのお話が多い。気になる噂話を家族の皆様で共有して、その真偽を各々確認し、そしてまた後日それを共有するのだ。なので社交ではただ噂話を聞いていれば良いというものではなく、ちゃんと目的意識をもって話題を振らなければいけないのだ。大変なのだ。


 もっとも、公爵閣下などは私が調教している馬についてのお話を聞いたり、公妃様も私の馬についての蘊蓄を聞いて下さる事もある。ディーリットもクリエールも馬が好きで、乗馬を習った事もあるらしい。そういう風に皆様が馬好きなので、お城の中に馬場を築くなんて事が許されたのだろうとアクロード様は仰った。


 お食事を終えると、私は教育のお時間だ。公爵家の姫に相応しい教養やお作法、儀式の手順や所作の教育を受けるのである。これには先生として、公爵家出身の夫人であるバスコーク侯爵夫人が来てくれた。


 伯爵家でしっかり教育を頑張った私だけど、皇族の一員である公爵家ともなると、それだけでは足りないのだ。皇族の間でしか使わないお作法や、帝宮奥深くで行われる神事における手順だとか、身分が下の貴族からの挨拶を受けた時に相手に行う祝福のやり方なんてものもある。


 この他にもダンスの練習や芸術関係の教育も受ける。貴族夫人は何かしらお芸術について通じているのが望ましいからね。絵でも楽器でも造園でも。馬は……、一般的じゃないからね、でも乗馬を趣味にしているご婦人は結構いるのよ? 横座りで乗るような乗馬だけどね。


 教育が終わると、ほんの少し休憩時間がある。私は急いで厩舎に行って、馬の様子を見たりレオックと調教について相談したりする。このときは時間もないし、服もドレスに大きな鍔広帽子という格好だから馬には乗れない。帽子を馬が怖がるのであんまり近付けもしないのだ。


 で、お屋敷に戻り着替えてお昼の社交に出掛ける。この時は公妃様と一緒だ。今は私の、次期公爵の婚約者としてのお披露目期間であり、公妃様が帝国女性貴族界に私を紹介して下さっているのだ。


 女性社交は本来、午前のお茶会から始まり、昼食会、午後のお茶会の三回が基本である。このお茶会が園遊会になったり観劇や音楽鑑賞、演奏会になる場合もある。乗馬好きなご婦人が乗馬会を企画する事もあるそうだ、


 公妃様は私のお披露目のために、午前のお茶会の後に一度公爵城にお帰りになり、私と一緒にまたお出かけになるのだ。申し訳ないのだけど、同じ馬車に乗ってお出掛けするというのが、公妃様と私の仲良しアピールに大事なので仕方が無いのである。


 なにしろ私は婚約前は、女性社交にほとんど出ていなかったため、女性貴族に知っている人が全然いない。そもそも、伯爵家と公爵家ではお付き合いするお家も人も全然違うから、出ていても今の社交の役には立たなかったかも知れないけど。


 そのため、社交に向かう道中で、出席する方々について公妃様に教えてもらう。身分は勿論、性格やご趣味や、お家と公爵家の関係、そして他の出席者との関係などなど。これを把握せずに迂闊な事を口走ると大変な事になってしまう。例えば仲が悪いお二人に「お仲がよろしいんですのね?」なんて言ってしまうなど。お貴族様は嫌い合っていても表面上仲良くするなんて朝飯前なので分からないのだ。


 昼の社交は勿論出向くだけではなく、公爵城に招待する場合もある。ただ、公妃様のご招待を受けるとなると、招待客はもの凄く準備が大変になるので、基本的には公妃様が出向く形になるのだそうだ。


 余談だけどこれが皇妃様になると逆で、皇妃様が帝宮からお出ましになるというのは一大事件なので、皇妃様の社交は基本的には帝宮の中でしか行われない。


 お茶会は多くても二十人くらいの集まりだ。全員高位貴族夫人である。私と同年代のご令嬢が混じることもあるけど、ほとんどの方は私より年上だ。


 なので年若い、しかも婚約したばかりの私は皆様からの質問が集中してしまって毎回大変だったわよ。ただ、もう婚約してほとんど公爵家の人間になっている私には、身分の事で色々言ってくる人はほとんどいなかったわね。


 私が馬に詳しいという事は、公妃様が毎回皆様に紹介して下さったので、何人かの馬がお好きな(まぁ、私とは次元が違うけど)方々は私に色々質問してきた。乗馬の事や牧場経営についてのお話が多かったけど、意外だったのは競馬が好きなご夫人が結構多かった事だ。ただ、純粋に馬が走る迫力が好きな方もいたが、ギャンブルとしての競馬が大好きな夫人がほとんどだったけどね。


 ギャンブルとしての競馬も、馬を見る目が無いと勝てないのだから馬好きには変わりなく、私が馬の体調の善し悪しの見抜き方なんかを教えると、皆様真剣に聞いて下さった。ちなみに私は競馬で賭けをやったことはない。賭けるなら私が手がけた馬に全財産賭けちゃうわね。


 馬に詳しいというのが皆様に知れ渡ると、社交はスムーズになった。私の機嫌を取りたい場合は馬の話をすれば良いとなると、社交で話題を組み立てるのが簡単になるからだ。こういうその人の得意分野の把握というのは社交では重要な事であり、事前に覚えておかなければならない。ちなみに、公妃様はお菓子がお好きで、公妃様をお招きする場合は有名な職人が作ったお菓子をお出しして話題を作るのが定番である。


 昼食会は貴族のお屋敷で食べる場合と、帝都の評判のレストランに行く場合の二種類がある。貴族向けのレストランは昔帝宮の料理長だったという者や、他国の料理を出す店などがあって、本来はあまり格の高くない貴族が出向くものだ。公爵家ともなればそんな店の料理よりもお家の料理の方が美味しいからね。ただ、目先を変える意味で利用される事がある。だが、ほとんどの場合は貴族の屋敷に招待され、そこの料理人が腕を振るってくれる。


 昼食会はお茶会よりも社交としての格式が高い。身分が高い者と食事を共にする事は名誉になるからだ。なぜならそれは「食事を共にするほど親しい」事を意味するからである。これは、きな臭い話だけど、食事を共にすれば毒を混入したり閉じ込めて謀殺し易かったりするので「そういう事をされないと思うくらい、相手を信用している」という意味になるためだ。相手との親しさをアピール出来る事になるのね。


 だから昼食会で同席される方は、公妃様と親しい方、つまりは公爵夫人か侯爵夫人とその令嬢が多くなる。つまり私にとっては先日まで雲の上の方々との食事になり、話題も宮中での色々が多くなるので私にはよく分からない。こんなお席でバクバク食事を食べる訳にはいかないので、お上品にちょっとだけ食べてお仕舞いなのもお腹に大変だ。皆様少ししか食べないものだからお腹が持たなくて、お茶会でお菓子を食べるんじゃ無いかと思うんだけどね。


 午後のお茶会が終わると、一度お城に戻って夜会ドレスに着替えて帝宮に向かう。夜会は、他の貴族のお屋敷や公爵城で開催する事もあるけど、八割以上は帝宮で行われる。ただ、この場合は主催は皇帝陛下とは限らない。色んなお家が帝宮の広間をお借りして開催するのだ。勿論、フェバステイン公爵家主催の場合もある。


 これは、自邸で夜会を開催すると準備がもの凄く大変で負担が大きいからである。帝宮をお借りして、帝宮の使用人に依頼した方が楽なのだ。帝宮の者達は夜会の開催に慣れているから、趣向を伝えて準備を依頼するだけで良いので。勿論、規模に応じて費用は発生するんだけどね。


 帝宮のフェバステイン公爵家専用控え室(!)で公爵閣下とアクロード様と合流する。お二人は帝宮にお勤めだからね。公爵閣下は筆頭大臣で、アクロード様は帝国騎士団の副団長だ。ちなみに、アクロード様は国境から正式に帝都での勤務に配置換えしてもらったのだそうだ。国境の事は気になるけど、私との時間の方が大事だと仰って。


 私はアクロード様に手を引かれて夜会の会場に入る。夜会への入場は家格の順番なので、フェバステイン公爵家は最後から二番目だ。勿論最後は皇帝陛下ご一家となる。なので既に入場している皆様から大きな拍手で出迎えられる。


 入場すると、出席者の皆様からご挨拶を受ける。夜会の席なので略礼で、一言二言言葉を交わすだけで済ませる。そうしないといつまで経っても夜会が始まらないからね。挨拶が終わるとダンスが始まる。これは身分が高い者が最初に踊る決まりなので、皇帝陛下ご夫妻、皇太子殿下と婚約者のセリネーラ様、三家の公爵閣下ご夫妻、そして私とアクロード様を含む次期公爵ご夫妻か婚約者同士が最初に踊る事になる。


 つまり、皆様に見られながら踊るのである。いや、もう、緊張するのよ毎回! 稚拙なダンスを見せてしまえば、あっという間に社交界中に私の下手なダンスが噂として広まってしまうだろうからね。私は運動神経も良いし、馬に乗り慣れているからバランス感覚も良い。アクロード様とも息が合うので、これまで下手な踊り手と言われたことは無いみたいだけどね。


 勿論だけど、アクロード様は大変華麗な踊り手で、一緒に踊る私としては彼のお相手として恥ずかしくないように気張らなければならない反面、彼とのダンスの時間は毎回うっとりするほど素敵な時間だったわね。三曲で終わらなければならないのが惜しいくらいだ。


 アクロード様と踊った後は、ダンスを申し込んで下さった方々と次々踊る。突然アクロード様の婚約者になった私は注目されているので、貴族の当主の方が次々申し込みにいらっしゃる。私はもう婚約したので未婚の男性とは踊れないけど、それでも相当な回数のダンスを強いられた。先日までは誰もお誘いに来なかったから壁の花をしていれば良かったから楽だったんだけどね。


 ダンスを終えたらアクロード様と合流して皆様と歓談だ。婚約前のアクロード様には貴族令嬢が鈴なりに群がっていたのだけど、もう私と婚約してしまったせいでご令嬢は彼に付きまとえない。そのためかどうなのか、高位貴族のご令嬢は私を見てあからさまに舌打ちしたり、何やら文句を言ったりするんだけど私は見ない振り聞かない振りだ。もしも私が見とがめて叱り付けでもしたら大問題になってしまう。私は今や準皇族なので。


 そしてほど良いタイミングで夜会を終える。身分の高い者は夜会に最後までいる事は避けるべきで、余程の事が無い限り終了少し前に退場するのが望ましいとされているそうだ。主催の方に一声掛けて、お見送りを受けて退場し、馬車に乗って公爵城に帰宅する。


 帰宅の馬車は私とアクロード様、公爵ご夫妻で別の馬車に乗ることが多い。私とアクロード様の組み合わせになった場合は、公爵城に入るとそのまま馬場に行ってもらう。夜会が終わるタイミングだからもうすっかり夜で、朝が早い牧夫は寝てしまっているけど、私はこっそり厩舎に入って馬たちに挨拶をする。どうしても寝る前に馬に触れたいからだ。窮屈な一日のストレスも馬に触れば解消する。


 それからお屋敷に戻り、アクロード様にお休みのご挨拶をして、お風呂に入って就寝だ。翌朝も早起きして馬の面倒を見なければいけないから、あっという間に寝てしまうわね。貴族婦人は宵っ張りが多いのに私が早寝なので、公爵城の私担当の侍女達は夜が暇で困っているそうだ。


 こんな感じで私は大変だけど、馬たちに癒やされ、アクロード様に愛され、楽しい公爵ご一家に助けられて順調に生活していた。社交にも慣れて教育もほとんど終わり、婚約後二ヶ月もすると私はすっかり公爵家の一員として、公妃様とは別の社交にも招かれるようになっていた。


  ◇◇◇


 馬に関してはガーナモントが無事に競馬場のケビン調教師の元に預けられて、競馬デビューについて順調に調教を積まれているらしい。他の馬もデビューの目処が立った馬は競馬場に送られ、空いた馬房にクランベル牧場から他の馬が送られてくる。


 そして二頭、公爵領にある牧場からも二歳馬がやってきた。私はどんな馬が来るのかと楽しみにしていた、のだが。


「……全然調教出来ていませんね」


 レオックが呆れたように言った事が示す通り、これが全然馴致もなっていないような我が儘馬が送られて来たのだ。何ですかこれは。アクロード様もその馬を見て驚いたようだった。


「まぁ、それだけクランベル牧場の調教技術が高いのだとも言えるが……」


 それにしても、これでは馬を競馬に出せるまでに時間が掛かってしまう。それに馬がもう大きくなっているから、暴れられると危ないから調教も難しい。これからもこんな馬が送られてくるようだと、公爵城内の馬場で扱いきれなくなってしまう。


 私は考えて、アクロード様に提案した。


「一度、公爵領内の馬牧場を見せて貰えませんか?」


「君が公爵領に行ってということか?」


「ハイ。どんな育て方をしているか、見ておきたいのです」


 将来的には私が管理する牧場になる筈だし。今から状況を把握しておきたい。


 アクロード様は公爵ご夫妻に相談し、私も社交に慣れた事でもあるし、将来のために公爵領を見ておくのも良いだろうということで、私の公爵領行きが認められたのだった。


 公爵領行きが決まってアクロード様が喜んでいた。なんで彼が喜ぶのかというと、彼も同行するからだった。お忙しいアクロード様に同行してもらうのは申し訳ないから遠慮したかったのだけど、確かに公爵領の事を何にも知らない私一人が行っても目的が果たせないかも知れないものね。


「旅行に行けば君とずっと二人きりだ」


 というのがご機嫌の元らしい。私は顔が赤くなってしまう。なるほど。それは私も楽しみだ。婚約したというのに私とアクロード様はそれほど一緒にいられなくて、イチャイチャ出来ていないからね。人目が離れる旅行先なら憚ることなく仲良く出来るかもね。


 ということで、半月後、私とアクロード様は色んな意味で楽しみな旅行に出発したのだった。


 

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