第14話 妻の唇

1923年10月21日 AM9:00



「ゆう君っ・・優君ったら・・・」

絵美の声に目を開けた。


「もうっ・・何時まで寝てるのよっ・・・」

腕組みをする妻が仁王立ちしている。


「いくら日曜だって、もう9時よっ・・・」

頬を膨らませる表情が可愛くて、思わず引き寄せた。


「キャッ・・・」

ベッドに倒れ込むまま、抱きしめ、唇を奪う。


「いやっ・・むぅ・・・」

抵抗する声は僕に抱きしめられる腕の中で消えていく。


遅い朝の日差しがベッドに降り注ぎ、僕達のシルエットをなぞっていく。

僕は妻とのキスの味を、こんなにも美味しいものかと感動していた。


愛している。


短い言葉なのに。

僕は何度も囁いている。


絵美の、妻の唇の中で。

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