第56話 決闘で圧勝する


 宙に浮かぶエレノアを見て、アクアは驚きの表情を浮かべた。


「おー! いえ、素直に凄いですよ! 空を飛べる魔法なんて見たことがありません!」

「ふふん、そうでしょ? これは凄い集中力と繊細な魔力コントロールが必要なのよ。並みの魔法使いウィザードじゃ使えませんわ」


 確かにエレノアもまだ少しフラフラとしている。

 とはいえ、空中から魔法でも撃たれたら対空手段がない相手は一方的にやられてしまうだろう。

 時雨も「流石エレノア師匠! 凄ーい!」と言って瞳を輝かせている。


「――ですがエレノアさん、何でスカートで来てしまったんですか? 下から丸見えですよ、貴方のやけに気合の入った下着が」

「えっ!? ちょ、ちょっと待って!」


 アクアに指摘されると、エレノアは顔を真っ赤にして慌ててスカートを手で抑える。


「あー、ほらそんなに繊細な魔法で慌てたりなんてしたら――」

「――へ? ギャー! バ、バランスが……! 墜落しますわー!」

「言わんこっちゃない……」


 エレノアは崖の方へと墜落していく。

 アレ、かなりマズいのでは?


「はぁ~、仕方がない。秋月さんは助けなくて良いですよ。私が助けます」


 そう言うと、アクアは白い大きな翼を広げる。


「ギャー! し、死ぬ! 死んでしまいます!」

「はいはい。今、行きますよー」


 目をグルグルさせて墜落するエレノア。

 アクアは地面に激突するギリギリでエレノアをキャッチした。


「どうですか? これに懲りたらもう決闘なんて――」

「あ、あはは……はは……天使様が見える……アクアの顔の……」

「あ~……またですか」


 アクアは恐怖で壊れてしまった様子のエレノアを抱きかかえたまま、俺に言う。


「すみません秋月さん。時雨ちゃんを連れて街にお買い物に行ってもらって良いですか? エレノアさん、またビショビショになってしまいまして」


 それは「また、ビショビショ」という意味なのか「股ビショビショ」という意味なのか。

 まぁ、どっちでも正しいだろう。

 再び時雨を連れて街に行くと、時雨は純粋な瞳で質問する。


「お兄ちゃん、エレノアさんはどうしてまた濡れちゃったの?」

「あー……ほら、えっと空って雲が浮いてるだろ? あれって実は水で出来てるんだ。エレノアさんは飛ぶ時に魔力で低気圧領域を作ったからベンチュリ効果が発生して周囲の大気の水分を引き込んじゃったんだよ」

「そうなんだ~! よく分からないけど、エレノアさんすご~い!」

「そうなんだよ、時雨。そうでしかあり得ないだろ? だから、もうこの話はお終いだ。エレノアさんの大好物のプリンを買ってあげような」


 物凄く適当な嘘を吐いて、再びエレノアさんの威厳を保った。

 きっと、今頃はアクアの胸の中でシクシク泣いているだろう。


       ◇◇◇


 ――午後。

 

「頑張れー! 秋月さん! あぁ、危ないっ!」

「お兄ちゃん負けるなー! クマリンも頑張れー!」


 慰め終わったエレノアをアクアが追い出すと、時雨とアクアは二人で動画を見ていた。

 [封印のダンジョン]に行った際、アクアは時雨に小型の録画機能付きカメラを装着させていたようだ。

 動画には俺がアースドラゴンを相手に戦っている様子が映し出されていた。

 ちなみにもう3週目である。


「結果が分かってるのに応援しなくても……」

「何を言っているんですか! 今度こそ負けてしまうかもしれないじゃないですか!」

「そうだよお兄ちゃん! お兄ちゃんは毎回私たちの応援があるから勝ててるんだよ!」

「そうだったのか……ありがとう」


 きっと2人なら何度も放送されている金曜ロードショーのジブリ映画も毎回ハラハラしながら楽しめるのだろう。

 いつもハッピーエンドを迎えられているのは、きっとテレビの前の子供たちが応援してくれているからだ。

 そんな風に2人の応援上映を眺めていると、アクアと時雨が盛り上がる。


「いやー、本当に強いですね! 秋月さん!」

「お兄ちゃん、凄いよねー! レベルを戻されてもこれだけ凄いんだから、きっと異世界に居た時はもっと強かったんだよね!」

「……そう言えば、秋月さんの異世界でのお話って全然聞いた事がないですね」


 そう言うと、2人は振り返って俺を見つめる。

 俺は内心で冷や汗をかきつつ手元の紅茶を飲んだ。


「い、いいよ……聞かなくても。大した話じゃ無いし」

「世界を一つ救った時点で十分"大した話"だと思うんですけど」

「教えてよー!」

「あはは……まぁ、そのうちね。言えたら言うよ」

「何ですか、その『行けたら行く』みたいな感じ! 言わないやつじゃないですか!」

「そ、それより帝国ギルドに行こう! ほら、その映像を綿霧さんたちに見せれば少しくらいは俺たちの評価も上がるだろうし!」

「あっ、誤魔化しましたね!」

「なんでー! 教えてよー!」


 2人の追及を逃れつつ、俺は何とか誤魔化してみんなで帝国ギルドに向かった。


       ◇◇◇


 ――秋月たちが[封印のダンジョン]を攻略した直後。

 とある場所で"一人の少女"が目を覚ました。

 彼女は呟く。


「アイツは――秋月優太はどこ……?」


 ――――――――――――――

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 おかげさまで、☆評価が10000を超えました!

 皆様、本当にありがとうございます!

 <(_ _)>ペコッ

 感想はなかなか頂けないので☆3つ評価は私にとって『面白いよ!』、『続きも楽しみにしてるよ!』という意思表示だと思っていて、☆評価のおかげで投稿を頑張ることができています!

 本当にありがとうございます!


 新しく読みにきたばかりの方も、昔から支えてくださっている方も、続きを楽しみに最新話を追い続けていただけると嬉しいです!

 よろしくお願いいたします!

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