第47話 周囲は驚愕する
時雨のステータスを見て、全員言葉を失う。
【
レベル:10
HP : 950/950
MP : 5650/5650
SP:50
経験値: 25/1040
職業:
攻撃力:240
防御力:260
魔力:5320
敏捷性:220
知力:180
運:200
スキル:無し
魔法:『
「おいおいおい、5000って――」
「と、とんでもないね……」
俺は隠さずに時雨のステータスを見せた。
そして、すでに時雨本人にも自身の魔力の高さを教えている。
ダンジョン攻略も経験して、今ならもう無茶はしないと思うしね。
「どうですか! うちの子は優秀なんです!」
なぜかアクアが得意げに胸を張る。
いつから時雨がアクアの子になったのかは分からないが……。
頬に汗を伝わせながら、綿霧さんは褒めてくれる。
「本当に凄いよ。魔力だけならアーサーのステータスに迫る勢いだ」
「えっ、アーサーさんはこれより凄いんですか!?」
「あぁ、だが気にすんな。コイツがおかしいだけだ」
「――今、僕のことを呼んだかいっ!?」
「呼んでないよ、しっかり反省文を書いてね。アーサー」
泣きながら引き続き反省文を書かされているアーサー。
流石はS級、どうやら俺が思っているよりもずっと強いらしい。
あまりそうは見えないけれど……。
グラントさんは大きなため息を吐く。
「これなら俺も文句ねぇ。チッ、挫折するお前らを笑いに来たんだけどな」
「『本当にダンジョンに挑めるのか、心配で様子を見に来たんだ』って言っているよ」
「まぁ、だが俺も一応S級だ。お前らが問題を起こさねぇように引き続き注視はしておく、俺の連絡先も渡しておくぜ」
「『もし何か手伝えることがあるなら頼ってくれ』って言っているよ」
綿霧さんが俺の耳元で勝手にグラントさんの言葉を翻訳する。
やっぱり優しいのか、この人。
S級って死ぬほど忙しいはずなのにわざわざ様子を見に来てくれてるし。
グラントさんは俺と連絡先を交換すると、すぐに出て行ってしまった。
「全員、[封印のダンジョン]のレベル制限ギリギリの10まで上げてきてくれたんだね。まぁ、最近凄い勢いで周辺のD級以下のダンジョンが攻略されているって報告を聞いていたから君たちだろうとは思ってたけど」
綿霧さんは苦笑いを浮かべながらそんな話をする。
「俺たち、噂されてたんですか?」
「うん、ダンジョンに入って数分後にはダンジョンの主を討伐して出てきてたなんて話も聞いたよ」
「あはは、すみません。ボスだけ倒した方がレベル上げの効率が良いことに気が付きまして……」
「弱い敵はまとめて追いかけてきた所を私が魔法で一掃してたんです!」
「なるほど、効率的だね。ダンジョンのモンスターにしてみれば地獄のような方法だけど……さて、じゃあ後は最後の仕上げだね」
綿霧はそう言うと、誰かに電話をかけた。
そして、何らかの確認を取ると電話を切る。
「OKみたいだ、場所を変えるよ」
「――ギルド長! 反省文を書き終わりました!」
直後にアーサーがそう言って自信満々の表情で一枚の紙を持って来た。
お世辞にも綺麗だとは言えない文字でこう書かれている。
『アクアさんの配信を荒らして誠に凄くごめんなさい。ギルド長の秘密は誰にも言いません。そう、ギルド長が誰も見ていないと思ってにゃあにゃあ言いながら窓際の猫に話しかけていたなんて――』
「ふんっ!」
――ビリビリィ!
綿霧は容赦なくアーサーの反省文を引きちぎる。
アーサーは絶叫しながら破かれた紙の破片を見て膝をつく。
「
「そんな……僕の完璧な作文が……」
……この人、本当に強いんだよね?
半泣きで床に散らばった紙の屑をせっせと拾い集めながらアーサーは俺に語りかけてきた。
「秋月君、これからダンジョン攻略に向かうらしいね」
集めた紙くずを人差し指で出した火の魔法で燃やすと、アーサーは俺に微笑んだ。
そして、その人差し指を上に向けたまま俺に言う。
「僕から一つ、アドバイスだ。いつだって上を向くこと、上を目指すことだ。そうすれば大体の事はどうにかなる」
「上を……? えっと……ありがとうございます」
「何たって僕は――」
アーサーさんは十分にタメを作ると、髪をかき上げた。
「いつだって君の上にいるからねー! あっはっはっ!」
「……はぁ」
「じゃあ、幸運を祈ってるよ」
向上心が高いのか低いのかよく分からない人だ。
でも、確かに下を向いている暇なんてないのかもしれない。
アーサーさんに言われた言葉を一応胸に留めつつ、俺たちは綿霧さんに連れられて場所を移動する。
◇◇◇
帝国ギルドから歩いて数分。
その場所はすぐにあった。
「着いたよ、ここだ」
着いたのは煌びやかなお城の前だった。
そして表札には「シルヴィア」と書かれている。
「――秋月さん、帰りましょう……今すぐに」
アクアは俺の肩を掴んで建物に威嚇していた。
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