第37話 ざまぁ展開が待ってます
【前書き】
第3話で出てきた、秋月優太の
――――――――――――――
――春月優菜 SIDE――
「
帝国ギルドの受付嬢。
レーネという人はそう言って私たちを褒めたたえる。
「D級で帝国ギルドに入るなんて素晴らしいですね、それも兄妹同時に!」
「当然です、私の召喚魔法と兄さんの剣術があればすでにB級探索者の実力はあるでしょう」
「実際、僕たち2人は共にB級を倒してみせたわけだしね」
「あはは、別に倒す必要はないんですけどね……2名とも怪我をしてしまいましたから、ちゃんと謝りに行ってくださいよ?」
「……? なぜ、謝る必要があるんですか? 弱い方が悪いでしょう?」
「それに、向こうも僕たちを怪我させるつもりで攻撃してきた。謝りになんて行ったら余計に怒らせてしまうだろうね」
私と兄さんにとって、もはやこのレベルの探索者など問題じゃない。
早くS級になって、私たちにはお会いしたい人がいた。
帝国ギルド、ギルド長――
ダンジョン配信で初めて兄と目にした時、私たちの目は釘付けになった。
「優菜……凄いよ、この人。こんなに強そうな召喚獣を従えて……」
「右手に剣と左手に魔導書……えっ!? 槍も使えるの!? い、今のは盗賊のスキル!? い、一体何の
――『
5種類以上の
当時、私たちとそう変わらない年齢だった彼女はたった一人で既にC級ダンジョンをクリアしていた。
そして、彼女はこの帝国ギルドの長になった。
当然、普通にはお会いすることなどできない。
少なくともA級探索者になる……そうすればお会いできるかもしれない。
「――さて、まず最初のクエストなんですが……実は通例としてF級探索者への昇格試験の試験監督をしてもらうことになってます」
レーネの言葉に私と兄はあきれ返る。
「なんですかそれ、そんなの受けたくないです」
「時間のムダだ。通例だろうとルールじゃないなら受ける必要はないな」
「そう言うと思いました。ですが、君たちが会いたがっているギルド長直々の依頼だったらどうします?」
「えぇ!? ギルド長って……綿霧様ですか!?」
レーネは得意げな表情をする。
「ええ、私も驚いて3度見くらいしたんですが、本当にギルド長から直々にF級昇格試験の申し込みが入っていました。どうします? もしかしたら、様子を見に来たギルド長にお会いできるかもしれませんよ?」
「受けるに決まってるでしょ!」
「早くしてくれ! 誰かに取られてしまうだろう!」
「あーもう、勝手ですね。はいはい」
――そして、2日後。
兄と一緒にそのF級昇格試験当日に会場である帝国ギルドの闘技場に来ると、この場所に居るはずのない2人を見かけた。
落ちこぼれ探索者の秋月優太と……死にぞこないの秋月時雨だ。
「……は? なんでアイツらが居んのよ」
「もしかして、F級昇格試験の受験者って時雨なのか?」
「そもそもなんで時雨の奴、あんなに元気そうにしてるのよ。不治の病じゃなかった?」
「まさか、本当に『女神のしずく』を?」
「いやいや、あり得ない……
「ってことは……帝国ギルドに掛け合って手に入れたのか」
「はぁ!?
そんな話をしているうちに、会場にギルド長の綿霧様が現れた。
まさか、本当に来てくれるなんて……。
本物の綿霧様は配信画面を通して見た100倍は美しく――
そして迷いなき歩みで秋月兄妹のもとへと行ってしまった。
秋月優太と楽し気に、何かを話している。
「そういえば、ギルド長直々の依頼ってことは……もしかして、時雨は綿霧様に目にかけられてるってこと?」
「くそっ、向こうで話している内容が気になるな……まだ秋月たちはこちらに気が付いてないし、コッソリと聞きに行くぞ」
そして、私と兄さんは柱の陰に隠れて秋月優太と綿霧様の会話を盗み聞きする。
「――ねぇ、今夜君の家(アクアの家)にお邪魔しても良い?」
「そういえば、(アクアのファンだから)来たがってましたね」
「その……家族も(ファンだから)会わせてあげたいんだけど……特に妹が(アクアのことが)大好きなんだ、もし良ければ連れて行っても良いかな?」
「ええ、ぜひ来てください! 妹さんも悦ばせてあげますよ!(アクアのファンサービスで)」
会話内容に私たち2人は絶句する。
家族を紹介とか、なんだかもうかなり進んだ関係のようだ。
納得したくはない……
しかし、不治の病だった時雨が助かっている事実が点と点で繋がってしまう。
例えば、秋月優太の妹だからギルド長権限で『女神のしずく』を渡した……とか。
それに、あの表情……
いつもキリッとして凛々しいお顔の綿霧様が完全に心を掴まれているような表情を見せている。(※アクアのファンだからです)
そして、今度はさらに小さい声で綿霧様が話し始めた。
「それと……この前は(ギルドに)入れてあげられなくてすまない。私としても(F級探索者を入れるのは)初めてだったから……」
「そんな! 気にしないでください! 初めては(影響を考えると)怖いですし、俺も少し焦り過ぎました」
「君がゆっくりで良いと言ってくれて助かったよ。しかし(戦闘で)シルヴィアを満足させていたし、(実力として)期待しているよ」
「あはは……ご期待に応えられるか。頑張ります」
脳が理解を拒否する。
何の会話だろうか……いや、考えたくはない。
「良かった、まだ綿霧様は未経験か」
「兄さん、キショいです」
しかも、今会話に出てきたのは『千金武装』のシルヴィア様だ。
すでに秋月優太によって満足させられた……
どうやら、秋月雄太は冴えないくせにとんでもない女たらしみたいだ。
(私の憧れの人――綿霧様によくも……!)
「ねぇ兄さん。良い事を思いついた……」
私の脳内はもう破壊されていた。
「アイツらをここでコテンパンにしてやるの。もう試験なんて関係ないわ。綿霧様や、他の探索者たちの目の前で大恥をかかせてやりましょう!」
「妹よ……それは良い考えだ。我らで綿霧様の目を覚まさせてやろう。あんな落ちこぼれ探索者に価値など無いのだとな」
私と兄さんは、ニヤリと笑った。
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