第34話 死亡フラグが立ちました
――時雨のF級昇格試験対策、2日目。
時雨はテストの練習問題で満点を取れるようになった。
ちなみに俺も一緒に勉強して何とか合格点は取れました。
アクアに「合格できなかったら秋月さんの代わりに私が時雨ちゃんのお姉ちゃんになります!」なんて脅されていたので、兄としての立場を奪われなくて良かった。
そして、今日は実技試験の対策だ。
試験ではスキルか魔法を一度成功させれば良いだけだったはず。
俺も何とか基本技の『スラッシュ』を覚えてかろうじてF級探索者になれたのを覚えている。
一方、時雨は魔法系だ。
だが、俺もアクアも魔法を覚えていない……
アクアはモンスターから奪ったステータスと『
だけど、アクアは『
だから魔法は覚えてないし、教えることもできない。
つまり、魔法が使える外部講師が必要で――
「――はぁ、全く何で私がこんなひよっ子に魔法を教えなくちゃいけないのよ」
「エ、エロノア先生! よろしくお願い致します!」
「エレノアよ! 勝手にいかがわしい名前にしないでくれるっ!?」
街の外のだだっ広い草原で、時雨はB級探索者のエレノアに頭を下げていた。
確かに魔法のエキスパートだけど、よく来てくれたなぁ。
エレノアはうんざりした表情でため息を吐く。
「いいこと? 私は売れっ子の大人気アイドル配信者なんですのよ? 忙しいのに初級魔法を教える為だけなんかに呼び出さないでくれるかしら?」
「私が呼んだら、要件も聞かずに貴方が飛んで来たんじゃないですか」
「ちょ、丁度時間が空いてましたの! 感謝なさい!」
エレノアさん、絵にかいたようなツンデレだなぁ……。
俺も深々と頭を下げる。
「エレノアさん、本当にありがとうございます。今日は時雨をよろしくお願いいたします」
「ふんっ、貴方みたいな腰抜け探索者に用はありませんわ。それにやっぱり帝国ギルドにすら入れなかったようだし……雑魚探索者は痛い目を見るだけですから、アクアの足をこれ以上引っ張る前に消えてくださいまし」
残念ながら、俺のことはやっぱり嫌いらしい。
エレノアは引き続き呆れた表情で俺とアクアを見た。
「それにしても、そろいも揃って初級魔法の一つすら使えないなんてね」
「俺は素質がないみたいで……」
「私は面倒なので覚えませんでした」
「『
エレノアはアクアと時雨をそばに寄らせる。
そして、俺には鉄の剣が投げ渡された。
「魔法が使えないアンタは終わるまでそこらへんで素振りでもしてなさい。その剣はあげるから。腰抜けのアンタでも少しくらいはマシになるはずよ」
仲間外れにされてしまったが、俺は剣さえあれば1日中暇つぶしができるのでありがたい。
……というかこれ、結構良い剣だ。
貰っちゃって良いの?
やはりエクレアさん、実は良い人なのかも。
――そして、わずか10分後。
「「『
アクアと時雨の手のひらに緑色の綺麗な光が灯る。
どうやらもう覚えてしまったらしい。
「うんうん、ひよっ子なりに出来てるわね」
「やったぁ! これでお兄ちゃんの怪我が治せる!」
「そうですね! 秋月さんが怪我をするのが楽しみですね!」
楽しみにしないで?
とはいえ、2人に癒してもらえるのなら確かに少しくらいは怪我もしてみたい。
「エレノアさん、ありがとうございます! 流石は魔法のエキスパートですね!」
「エレノア師匠! 凄いです!」
アクアと時雨がおだてると、エレノアは分かりやすく顔を赤らめて嬉しそうにそっぽを向く。
「ふ、ふん! 別にあんたらに褒められたって嬉しくないわ! じゃあ、次は今一緒に教えた『
何かを思いついた様子のエレノアは得意げな笑みを浮かべると、時雨やアクアから距離をとった。
「ひよっ子、アンタせっかくだから私に向かって今覚えた『
「えぇ~!? あ、危ないよぉ?」
「エ、エレノアさん……それはやめた方が」
「あぁ、褒め過ぎちゃいましたか。すぐに調子に乗るんですから……」
アクアは頭を痛めるような仕草をする。
俺と時雨も引き留めた。
「アンタみたいなひよっ子魔法使いが私に魔法を撃った所で簡単に防げるわよ。ついでに格の違いも見せてあげるわ!」
しかし、エレノアは自信満々に自分の胸を叩いた。
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