第30話 お仲間もチートです

 綿霧さんは腕を組んで、椅子に深く腰掛ける。


「うん、でも確かに秋月君からはポテンシャルを感じるね。見たこともない『特性フィート』が5つもあるところとか」


 グラントやシルヴィアたちも頷いた。


「そうだな、『特性フィート』はS級探索者でも大体多くて10程度だ」

「レベルと戦闘経験でここから増えていくと考えると、最終的に20近くになる可能性もあるね」

「『特性フィート』は戦況を大きくひっくり返すこともありますわ。数の多さはそのまま強さなのよ」


 うんうんと全員で納得の表情だ。

 なんか、みんな俺への慰めターンに入ってる?

 まぁ、期待MAXで見たステータスがレベル1だったらそうもなるか。

 シルヴィアはくすりと笑う。


「何にせよ、期待以上よ! 秋月君はまだレベル1、ここからさらにすごい勢いで強くなるってことでしょ?」


 そして、今度はアクアに笑いかけた。


B探索者のアクアさん。秋月君のご推薦ありがとうございます。彼はこれから大切に育てていきます。ですが貴方はもう必要ありませんので、もとのアイドル活動にお戻りくださって結構ですよ」


「――ちょっと、シルヴィア? アクアちゃんに失礼だろう」


 アーサーは眉間に皺を寄せる。

 しかし、シルヴィアは言葉を続けた。


「あら? 私は真実を言っているだけですわ。聞けばアクアさんって、高難易度のダンジョンにも行かずにずっと低ランクダンジョンで素材集めをしているだけみたいじゃない。いかにも向上心を失ったB級探索者の振る舞いよね。エクレアとかいうアイドル配信者の方が強い仲間と手を組んで高難易度のダンジョン攻略を頑張っているし。貴方じゃすぐに、秋月君の足手まといになりますわ」


「シルヴィア、まだ先のことなんて分からないだろう。口を慎みたまえ」


 綿霧もシルヴィアを注意する。


「いいえ、たかが知れています。盗賊シーフだなんて、戦闘では何の役にも立ちません。これはアクアさんの為にも言ってますの、S級の盗賊シーフなんていません。"盗むだけの能力"で一体何ができますの?」

「…………」


 一方のアクアは何も言わずに考え事をしているようだった。


(……ていうか)


 俺はここまでの会話を聞いて一つ気になったことがあった。

 『特性フィート』はS級でも10程度?

 あれ? 

 確か[試練のダンジョン]で見せてもらった時、アクアのステータス画面には……。


「アクアって確か100個くらいあったよね? 『特性フィート』」


「……は? 100個?」


 全員の視線が一気にアクアに向く。

 13年前の記憶だけど、スクロールしても見切れないくらいにズラッと並んだ『特性フィート』を覚えている。

 アクアは腕を組んで少し悩むような表情をする。


「うーん、本当は私……シルヴィアさんの言う通り、B級探索者として安全にのらりくらりと生きていくつもりだったんですけど。もう秋月さんと一緒に上を目指すって決めましたし……実力を隠す意味もないんですよね」


 アクアはそう言うと、ステータスウィンドウを表示する。


「私もお見せしますね、ステータス」

「す、凄い……大人気アイドル、アクアちゃんのステータスが見れるなんて!」

「配信でも一度も見せた事ないよね!」


 時雨とアーサーがキャッキャッと興奮している。

 そういえば、2人ともアクアのファンだった。


「さっき、秋月さんが言ったことの答えはです」


 そう言ってアクアが表示した画面にはこう書かれていた。


唯一特性ユニーク・フィート

 簒奪者さんだつしゃ:貴方は概念すらも盗む

(貴方の手でモンスターを倒した際、ステータスの1%もしくは『特性フィート』を盗み、自分のモノにすることができる)


 S級探索者たちは驚く。


「『唯一特性ユニーク・フィート』……!」

「ちょっと待ってくれ、確かアクアさんの配信って……」

「あぁ、ほとんどが"素材集め"と称した低ランクダンジョンの雑魚狩りだったけど……」

「実際は条件を満たしてモンスターからステータスや『特性フィート』盗んでいたってこと?」


 続いて、アクアはステータスも全て公開した。


水際みずぎわ アクア】

 レベル:10

 HP : 2533/2533

 MP : 156/156

 SP:634

 経験値: 3540/8600


 職業:盗賊シーフ

 攻撃力:766

 防御力:647

 魔力:158

 敏捷性:1589

 知力:368

 運:1073

 スキル:『盗む』、『罠を見破る』、『開錠』、『とんずら』、『かくれる』、『不意打ち』、『デュアルエッジ』、『ラッシュダガー』、『スローダガー』、『千本桜』

 魔法:無し


特性フィート

 ・素早い:貴方は猫のように素早い

  (敏捷+150)

 ・獲得者;貴方は得る物が多い

  (アイテムドロップ増加)

 ・心眼:貴方は攻撃を避けるのが上手い

  (回避率アップ)

 ・生存本能:貴方はしぶとい

  (強敵に対する回避率アップ)

 ・目利き:貴方は見逃さない

  (レアドロップ増加)


  ……その他、多数。


「レベル……たったの10!?」

「実は、私もまだまだ低レベルの探索者なんですよ。秋月さんと同じで、これからレベル上げをしなくてはなりません」

「確かにレベルじゃ説明のつかない速度で強くなって、探索者ランクを上げてるって噂だったけど……」

「複数の『特性フィート』の効果ですでにA級探索者に迫るくらいのステータスがあるね……」

「それにしても、信じられない。『強さを盗む』なんて」

「本当に手に入れたい物はすぐ近くにあるんですけどね……」


 そう言って俺をチラチラと見るアクア。

 もしかして、俺の『特性フィート』も狙ってる……!?

 大したモノはないよ?


「シルヴィアさん、言いましたよね? 『特性フィート』の数は強さだって! 私だって、秋月さんの隣に立つ権利はあると思いますよ?」

「ふふ……やるじゃない! 非礼を詫びますわ、貴方は弱くなんてありません。私も負けていられませんわ!」


 シルヴィアは生き生きとした瞳でアクアを見る。

 もしかしたら、これがシルヴィアの求めていた対等な関係という奴なのだろうか。

 友達ができて良かったね、シルヴィアさん。


「あはは……どうやら時雨ちゃん以外はとんでもない秘密を持っていたようだね」


 そう言って、頬に汗を垂らす綿霧さん。


 残念ながら、その子が一番ヤバいんです……。


 ――――――――――――――

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