第27話 敵対されているようです

「――ぜんっぜん! 話が違うじゃないですか!」


 帝国ギルドへと向かうシルヴィアの魔導車に乗せてもらいながら、アクアは大声を上げた。

 誤解しか生まないシルヴィアの言葉の真実を知るために時雨から昨日のギルド試験の詳細を聞いたからだ。

 とりあえず、誤解の解けた俺は心の中で安堵する。


「全く……まぁ、秋月さんがそんな事をするはずがないと信じてましたが」

「アクア? 話を聞いた直後に家に引きずり込んで、無言で俺をベッドに押し倒してきたよね?」

「あはは、隣で寝てた私が起きなかったらどうなってたんだろうね~?」


 きっと、女の敵としてしこたま殴られていただろう。

 くわばらくわばら……。

 少し頬を赤く染めたアクアは咳ばらいをして、愉快そうに笑みを浮かべるシルヴィアに尋ねる。


「というか、そんなことより秋月さんのギルド試験の結果はどうなったんですか?」


 アクアの問いにシルヴィアはため息を吐いた。


「もちろん、私が来たのはそのためよ。模擬戦闘の相手をした私と、その様子を見ていたアーサーが秋月君に『合格』の判断を出して、帝国ギルドに推薦したんだけど……」


       ◇◇◇


「――はっ! F級が帝国ギルドになんて入れる訳ねぇだろうがっ!」


 帝国ギルドの応接室。

 そこに連れてこられた俺たちが目にしたのは……。

 見知らぬ茶髪の男性探索者が金髪の青年探索者を怒鳴りつけている姿だった。


「あっはっはっ、シルヴィア。助けてくれ」


 この金髪の青年――確か『無敵艦隊アルマダ』のリーダーであるアーサーだ。

 胸ぐらを掴まれ、笑いながら助けを求めている。

 シルヴィアはため息を吐いた。


「帝国ギルドの加入条件はC級以上の探索者としての実力でしょ? 秋月君なら問題ないわ、グラント」


 茶髪の男性――グラントはアーサーの胸ぐらから手を放すと、額に血管を浮かべて反論する。


「推薦制度は"特例"だってことを忘れてねぇだろうな? このアホガキアーサーがE級で入ったせいで何でもアリだと思ってねぇか?」


「もちろん、忘れてないわ。当時A級だったあなたが当時E級だったこのアホガキアーサーに模擬戦闘で負けたってこともね」


 シルヴィアが煽ると、部屋全体に緊張が走る。

 2人にアホガキ呼ばわりされているアーサーは笑いながら俺たちの背中の後ろに隠れた。


(……な、何がどうなってるんだ?)


 何も聞かされずにここに連れてこられた俺とアクアと時雨はこのカオスな空間で縮こまるしかなかった。


 ――――――――――――――

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