第24話 ギルド試験で実力を見せる
「さて、試合を始めましょう」
「お、お手柔らかにお願いします……」
「大丈夫よ、私の手は柔らかいから」
そう言って、自分の左手をフリフリしてみせてクスクスと笑う。
当然だが、シルヴィアは俺に余裕で勝てると思っているのだろう。
剣を握って覚悟を決める。
(恐れるな、相手がS級だろうと異世界に居た分、俺の方が戦場の経験は長い)
それに、シルヴィアも俺がF級探索者だということはご存じだ。
流石に手は抜いてくれるだろう。
その証拠にシルヴィアはリラックスした様子で身体をユラユラと揺らしているし。
「せっかくだもの、先手を譲ってあげるわ」
「そりゃどうも――」
――直後、俺の後頭部に『危機察知』が反応する。
(は? まだシルヴィアは武器を構えてさえいないが……)
しかし、スキルの発動と確かな死の危険を感じた俺は咄嗟に剣で自分の後頭部を守る。
――ギィン!
そして、背後から現れたシルヴィアの剣をどうにか防いだ。
「あら? やるわね」
「先手は譲るんじゃないの!?」
「嘘に決まってるでしょ? これは戦闘よ、貴方とは敵なの。敵の言葉を信じないで」
俺は即座に受けた剣で薙ぎ払ってシルヴィアを弾き飛ばす。
シルヴィアは空中で軽やかにクルリと一回転して着地する。
試合の開始位置にいたシルヴィアは残像になって消えた。
観客の探索者たちは歓声を上げる。
「うぉぉぉ!?」
「な、なんだ今の!?」
「いま、シルヴィア様が2人いなかったか?」
「馬鹿、残像だよ。シルヴィア様のスキル『
「
(くそっ……死ぬかと思った!)
手加減なんてとんでもない。
はるか格下の俺相手に躊躇なくだまし討ちしてきやがった。
スキル発動前から身体を揺らしてたのはリラックスしていたワケじゃなくて残像に気が付かせないようにするためだ。
最初に左手を振っていたのは
「だが、あいつシルヴィア様の攻撃を受け止めたぞ!?」
「あぁ、まぐれだとしても大したもんだ」
「くそっ! もう10秒以上生き残っちまった! 賭けは外れだ!」
「お兄ちゃんすごーい! 頑張れー!」
若干、俺を褒める声も出てきた。
時雨も見てるんだ、負けるにしてもあまりカッコ悪い負け方はしたくない。
シルヴィアは剣を手にクスクスと笑う。
「やっぱり貴方、まぁまぁ強いわね」
「あ、あはは……大したことないですよ……。あの、手加減してくれます?」
「残念ながら、ピザにパイナップル派閥は全力で
「謝りますからぁ!」
しかし、シルヴィアはすでに次の攻撃の為に俺へ向けて疾走して来ていた。
(正面から剣での斬撃――いや、違う!?)
「『
「くっ!」
俺はすぐ自分の鉄の剣を頭上に放り投げる。
直後、俺の周囲に強烈な雷が何発も同時に落ちてきた。
鉄の剣は俺の頭上に落ちるはずだった雷を身代わりに受け止める。
(今度は魔法を唱えながら攻めてきやがった! しかも躱せないように広範囲魔法で……!)
「お見事、鉄の剣を避雷針にしたのね」
「雷は散々避けてきたもんで!」
「でも、そのせいで貴方は丸腰よ?」
――突如、シルヴィアの目の前に石壁が出現した。
否、それは先ほどまで闘技場の"床"として機能していたモノだった。
(……畳返し!)
異世界の侍に教えてもらった技だ。
畳と畳の境目を踏みつけて強く衝撃を与えれば畳を浮き上げて目くらましにできる。
何度もこの技の応用で窮地を切り抜けてきた俺にとっては、闘技場に敷き詰められた石畳程度は造作もない。
「――くっ!? 『
見た事のない技に、初めて困惑した表情を見せたシルヴィアはスキルで石畳を真横に切り払う。
しかし、その先の景色に俺はいなかった。
目くらましさえ出来てしまえば『危機察知』で俺は確実に躱すことができる。
石畳の裏側、低い体勢で斬撃を潜り抜けた俺は下半分になった石畳ごとシルヴィアを蹴り飛ばした。
……"蹴り飛ばした"?
落ちてきた鉄の剣をキャッチすると、俺は顔を青ざめさせる。
「す、すみませんっ! 足が勝手に! 本当に、ワザとじゃないんです! そうだ、落ちてくる剣が危ないと思って! だから、蹴り飛ば――ほんの少し、強めに押させて頂いただけでっ!」
必死で言い訳を並び立てるが、時すでに遅し。
俺に蹴り飛ばされたシルヴィアご令嬢は闘技場に転がった。
「…………」
「……す、すげぇ」
戦いを見ていた周囲の探索者たちは言葉を失っていた。
――――――――――――――
【大切なお願い】
読んでいただきありがとうございます!
ですが最近、辛口なコメントが増えてきました……ちょっと心が折れそうです。
全員を楽しませることができないのは作者の実力不足で申し訳ないです。
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