第18話 F級探索者の実力
「さぁ! このB級探索者エレノアがお相手するわ!」
「――参りました」
「そうでしょう、ここまで言われたら引き下がるなんて――なんて?」
「降参です」
あまりにも速い降参。
鷹野や周囲の探索者たちは呆れた笑い声を上げる。
エレノアは責めるように俺の目を真っすぐと見据えた。
「どんな言い訳で逃げるつもりかしら?」
「単純に勝てないからだよ。アクアに推薦してもらえなきゃ俺はただのF級探索者だ」
「弱虫ね、私に挑もうとすらしないなんて」
「怪我とかしたくないし……」
「分かったわ、じゃあもう勝手になさい。アクアに愛想を尽かされるまでせいぜい頑張ることね」
そう言ってエレノアはギルドの奥のソファーに座る。
そして、ダンジョンの地図を開いて次の探索の予定を立て始めた。
もう完全に俺からは興味を失ったようだ。
「なんだよ、あの腰抜け探索者」
「シラケるなー、飲みなおそうぜ!」
「どうせあいつじゃやっていけねぇだろ」
俺との一騎打ちも無くなったので、やじ馬で集まっていた探索者たちも解散する。
腕を組んで一部始終の様子を見ていた鷹野は笑った。
「エレノア嬢の言う通りだな、こんな奴。帝国ギルドの認証を受けるにふさわしくない」
「……それは貴方が決めることじゃないでしょう?」
「こんな奴を連れてきたお前もだ、アクア。B級探索者の称号も地に落ちたもんだな」
俺が降参したせいで、鷹野とアクアが言い争いを始めてしまった。
やめて、俺の為に争わないで。
緊迫した状況に、時雨もハラハラした様子で見守っている。
手に持った槍を肩にかけたまま、鷹野はアクアを嘲笑した。
「もう引退した方が良いぜ? お前なんかを応援するファンもたかが知れてるな」
「……今、私のファンを馬鹿にしました?」
「あぁ、何度でも言ってやるよ。お前のファンはゴミみたいな奴しか居ないってな」
「…………」
許容できる発言じゃなかったのだろう。
アクアがインベントリから短剣を抜くと、鷹野も槍を構える。
直後、
アクアは短剣を――
鷹野は槍を――
お互いに向けて高速で振り抜いた。
「――あれ?」
「……は?」
しかし、振りぬいたアクアと鷹野のお互いの手に武器は無く。
代わりに、その間に立った俺が二人の武器を両手に持っていた。
「2人とも、落ち着いて」
そう言って、それぞれに武器を返す。
俺は2人が振り抜く刹那、アクアの短剣と鷹野の槍を取り上げていた。
全く、時雨の前で争いなんてやめてくれ。
ただでさえ、俺は情けない所しか見せられていないんだから。
「アクア、時雨、受付に行こう。どうやら見逃してもらえたみたいだから」
「は……はい!」
「うん! 行こう、お兄ちゃん!」
俺から槍を受け取った鷹野は呆然とする。
「お前、今……何を……?」
「――鷹野! 何をしてるのよ! 次の探索の予定を立てるから早く来なさい!」
エレノアに呼び出された鷹野は煮え切らないような表情で俺を睨むと、その場から離れて行った。
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