第14話 F級探索者、決闘を申し込まれる
「秋月さ~ん、ちょっと~! 何で無視するんですかー!?」
「…………」
アクアは不満を表すように可愛らしく頬を膨らませているがそれどころじゃない。
例えるなら、日本一のプロ野球球団が落ちこぼれの球児をドラフト1位指名するようなもので……。
ギルド内の探索者たちが全員俺を見て静まり返る。
「嘘だろ……?」
「アクアちゃんが秋月と?」
「な、何かの間違いだろ……」
「ていうか新居とか言ってなかったか?」
俺は心の中でダラダラと冷や汗をかく。
アクアさん、自分が大人気アイドルであることを自覚してください……。
「秋月さ~ん。もしかして、まだ寝ぼけてます~? 昨日の夜は私のお布団じゃ眠りにくかったですか~?」
「わぁぁ~! 起きてます! 起きてるから、もう行こうか!」
さらにヤバいことを口走るアクア。
「私のお布団」というのは別に一緒の布団で寝たわけではなく単純にアクアの家の布団という意味だ。
ちゃんと布団は離してアクアとは適切な距離を取って寝ていた。
朝起きたらアクアの寝相が悪いのか、だいぶ近づいてきていたけど。
すでにギルド内のザワザワは最高潮だ。
アクアの手を掴んだ俺は、そのまま逃げるようにギルドを出ようとする。
「待てっ!」
しかし、Bランク探索者である樫田はさらに素早く俺たちの前に立ちはだかった。
そして、俺の顔を訝し気にジロジロと見る。
「失礼だが、君の探索者ランクは?」
「え、F級です……今はまだ」
「レベルは?」
「1です……前は3くらいあったんですけど」
何となく負け惜しみを付け足してしまう俺。
樫田は話を聞くと鼻で笑った。
「アクアさんは私より彼みたいな冴えない探索者を選ぶのですか?」
「はいっ!」
アクアさん、そこは満面の笑みで元気いっぱいに即答するところじゃないです……。
しばらく考えた後、樫田は納得したように手を打った。
「あぁ、分かりました。アクアさん、貴方は
そして、名探偵が犯人を告発するかのように人差し指をビシッと俺に突き付ける。
「お金、でしょう? きっと冴えない彼は親の遺産か何かで莫大なお金が手に入るんだ。貴方はそれを期待しているんでしょう」
的外れな指摘をしていることはギルド内の全員が分かっていた。
俺は文字通り道草を食うほどの貧乏だ。
アクアも不思議そうに首をかしげる。
「いえ、むしろ今は私が秋月さんの生活費を全て出して支えているというか、そういう状態です」
「アクア、その言い方だと俺が凄いクズ男に……いや、何も間違ってないんだけど」
羞恥のような、怒りのような感情に支配されて全身を震わせた樫田はついに剣を抜いた。
そして、その切っ先を俺に突き付ける。
「秋月! 決闘だっ! B級探索者、
――そして、もっとも面倒な事態を引き起こしてしまったのだった。
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