第3話 F級探索者、見下される

 翌日、俺がレッドウルフに驚き尻もちをついてアクアに助けてもらった切り抜きクリップはSNSで大いにバズっていた。


 俺の情けない姿がさらに広まる。

 とはいえ、そんなのはもう今更だ。


「――あの……廃棄のお弁当とかありませんか?」

「ねぇよ、バーカ」

「――パンの耳とか、貰えませんか?」

「テメェにやるくらいなら公園のハトにでも撒くっつーの」


 翌朝、俺は食料を求めて街をさまよっていた。

 俺は自分の食費を押さえてなんとか時雨の治療費と入院費を捻出している。

 今月分の入院費は何とか払えたが、文字通り無一文だ。


(……アクアから貰ったパンを食べてなかったら、今頃空腹で倒れてたな)


 俺は公園の水飲み場から水を飲んで、何とか空腹を誤魔化す。

 自分の醜態なんか気にしてる場合じゃない。

 薬草採集なんかじゃダメだ、せめてダンジョンにいる魔物を倒して魔石を手に入れないと時雨の治療費も出せなくなってしまう。


 そう思い、仕事を求めて探索者ギルドに行く途中。

 ――道行く誰かに足を引っかけられて俺は転倒した。

 起き上がって見てみると、そこには俺の見知った顔の2人組がニタニタと笑みを浮かべていた。


「あぁ、すみません浮浪者さん」

「兄さん、ダメですよ。弱い者イジメをしては」


 この男女2人組は春月悠人はるつきはると春月優菜はるつきゆうな

 俺の一つ年下の双子の従兄妹いとこたちだった。

 年上のお兄ちゃんとして、昔は良く面倒を見てやっていた。

 しかし、俺が最弱の探索者になると立場は一転。

 今は2人とも俺のことを心底見下している。


「まだ探索者なんかやってるんですか?w」

「貴方じゃ無理ですって。これ以上恥の上塗りをする前に足を洗ったらどうです?w」


 敬語を使っているのはワザとだ。

 俺のことを親族だなんて思ってないからだろう。


「時雨が入院してるのは知ってるだろ? 俺は『女神のしずく』を手に入れて助けるんだ」

「まだ言ってるんですか?」

伝説級レジェンドアイテム、『女神のしずく』。存在すら怪しまれてるモノじゃない」


 D級冒険者である2人は身に着けている装備を軽く撫でながら言う。


「不治の病なんでしょ? じゃあ、無駄じゃないですか」

「そいつが生きてるだけでお金がかかるんですから、さっさと見限った方が良いですよ?」

「俺は兄貴だ。例え世界中が見捨てても俺が助ける」


 俺がそう言うと、2人は呆れた様子で首を横に振った。


「こんなに馬鹿だなんて……」

「貴方と妹、どっちが先に死ぬんでしょうね」


 俺は2人に土下座した。


「頼む、親族のよしみで手を貸してくれ。『女神のしずく』を手に入れる為なら何でもする」


 どんなに馬鹿にされても良い。

 妹が助かる確率を0.1%でも上げたかった。


「うっわ、キモ」

「プライドとかないんですね」


 土下座をしている俺の頭の上に2人は足を乗っけた。

 そのままグリグリと靴の裏を押し付ける。


「もう貴方とは他人ですから。僕たちには関係ないです」

「他人だなんて、優しいですね兄さん。私はもう人としても見れなくなりました」


 そう言うと、パシャリと写真を撮られたような音がして2人は去っていった。

 俺がひれ伏す姿を写真に収めたのだろう。


(くそっ、協力してくれないか……)


 頭にこべりついた泥を公園の蛇口で洗い落とすと、俺は探索者ギルドへ。

 中に入ると、何やらザワザワと人が集まっていた。


 気になった俺は大衆のそばで聞き耳を立てると、こんな声が聞こえてきた。


「アクアちゃんがまだダンジョンから帰ってきてないんだ」


 ――――――――――――――

【業務連絡】

お待たせしました!ここからイッキに話を進めていきます!

主人公無双を楽しみにお待ちください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る