第12話:出て行ったシュシュ。
それはこう言うことだったらしい。
天界で天使として神に仕えていたアスタリスとシュシュは恋人同士だった。
だが、長年の遺恨が重なって、ある天使たちの一団が神に反旗を翻した。
その天使たちの
それを知ったシュシュは、彼を止めようと必死で説得したらしい。
だがアスタリスはシュシュの言うことを聞かず、自分の邪魔をするなら、
別れると言った。
正義と悪のはざまで苦しんだシュシュは、結局正義を選んだ。
シュシュには神に対する遺恨はなかったし、逆らう理由もなかった。
心の中に悪を巣作った天使が神に逆らって、ただで済むはずがない。
シュシュは最後までアスタリスを止めようとしたが、思いは彼には届かず
神に逆らった天使たちと一緒にカオスに落とされた。
天使たちは一蓮托生で神に処分されたため、その中にシュシュが
いることに神が気づかなかったが、カオスに落ちる寸前で彼女の存在に
気づいた神は彼女を救った。
だが一足遅く、すでに天界に呼び戻すことはできなかったため
そこでやむなく人間界に落とすことになってしまった・・・。
人間界に落ちたシュシュは、カオスに落ちたアスタリスとはもう二度と
会うことはないと思っていた。
彼女はその時、完全にアスタリスとの終わりを悟った。
そして、思わぬことにシュシュは祐介と出会うことになった。
シュシュは一連の出来事に心を痛めていたから、ほんとは辛くて寂しかった。
でも、その感情を祐介には見せなかった。
堕天使になったシュシュは、この先、天界へ帰れるかどうかも分からない。
だから誰かの力を借りて、ここで生きていくしかないと思った。
実は、図書室で祐介を見たとき、シュシュはすぐに祐介に一目惚れして
しまっていた。
でも、アスタリスのことが終わって、すぐに他の男に気持ちが傾くなんて
ふしだらだと思った。
「それで全部だよ・・・一個も嘘ついてないから」
「そうか・・・けど・・・シュシュはあのアスタリスだっけ?、彼に
もう未練はないのか? 」
「別れたって言ったって、まだ日が浅いじゃないか」
「未練なんてないよ・・・もう終わったことだよ」
「今は祐介だけだよ・・・」
「けど、あいつ、また来るって言ってたぞ・・・」
「あいつが目の前に現れたら、また寄りがもどることだってあるかも
しれないじゃないか・・・」
「あいつ、強そうだし人間の俺が勝てる相手じゃなさそうだし」
「大丈夫だよ・・・またあいつが来たら私が追い返すから・・・
祐介には指一本触れさせない 」
祐介は煮え切らない思いだった。
シュシュは引きずってることがあると言っていた言葉が気になった。
どこまでの関係だったかは知らないが、自分よりシュシュのことを
よく知ってる男がいるってことは祐介には許せなかった。
要するにユウスケはアスタリスに嫉妬したのだ。
「ねえ、祐介・・・何度も言うだけど、今の私は祐介だけだからね・・・」
「そんなこと言ったって・・・」
「ねえ・・・信じて祐介・・・」
「・・・・」
「祐介ってば」
「信じてくれないの?・・・」
「・・・・・・・」
「・・・分かった・・・」
「しかたないよね・・・これも自分で蒔いた種だから」
「私、出て行くから・・・」
「出て行くって・・・何言ってるんだよ?、どこへ行こうっての?」
「あのアスタリスとかいう男のところか・・・」
「祐介のバカ」
「私の切ない気持ち、分かってないんだね」
「さよなら・・・もう二度とここへは帰らない」
「私を信じてくれない人のところになんかいたくない・・・」
そう言うとシュシュは、走って裸足のまま玄関から出て行った。
「シュシュ・・・待て!!」
祐介はすぐにあとを追って玄関を出たが、すでにシュシュの姿はなかった。
「え?、消えたのか?・・・いなくなるの早すぎだろ・・・シュシュ・・・」
つづく。
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