第10話:えっ、誰?・・・泥棒?。

祐介とシュシュは、寿司屋から電車に乗ってアミューズメントパークの

イルミネーションを見に行った。


パークではクリスマス・ファンタジアって催しをやっていた。

ふたりは光のトンネルを抜けてメインのイルミネーションを見たり

歩いたりして光の世界を堪能した。


「綺麗だね・・・」


「ほんとだな・・・・」


会場ではクリスマスソングなんかかっていて、どの曲も聴いたことある

曲ばかりだった。

シュシュには分からないことだったが、素敵な装飾と素敵な音楽で、

知らない曲でもテンションが上がっていたようだった。


「もうすぐクリスマスか・・・」


「だね」


「クリスマスは知ってるんだ?」


「この時期、天使は、すっごく忙しいんだよ」


「え?なんで?」


「クリスマスプレゼント配りに行くから」


「クリスマスプレゼントって普通サンタクロースが配るんじゃないの?」

「それに本当は親が寝てる子供の枕元にプレゼント置いていくんだろ?」


「もう祐介は、そんな言い方したら夢がないじゃない・・・」


「クリスマスプレゼント配るのはサンタさんだけど、プレゼントを用意して

サンタさんに渡すのが天使の役目なの・・・」


「俺んちのサンタは親父だったぞ」


「まだ、言う?・・・」


ふたりは水族館やプラネタリウムを見て楽しんだ。

ホテルの4階のスカイアリーナではクリスマスマーケットが開催されていて

窓からイルミネーションを見ながら、仲良くスイーツを食べた。


結局、祐介もシュシュも、ふたり一緒にいられたらどこでも楽しかったのだ。

いっぱい写メも撮ったし・・・。


もしシュシュが天界へ帰ったら、その写真は祐介の思い出になっただろう。

祐介はいつかシュシュに天界へ帰るんじゃないかって心配していた。


でもそれはシュシュ個人の問題であって、いくら好きだからと言っても

シュシュを引き止める権利は自分にはないし・・・束縛しちゃいけないと

思った。

でも心情的には返したくなかった。


「そろそろ帰るか・・・」


そう言って祐介はスマホを見た。

時刻は8時を過ぎていた。


「今日は、ありがとう・・・」


「楽しかった?」


「うん、楽しかった・・・祐介となら、どこだって楽しいから・・・ 」


「俺もシュシュとなら、どこにいたって楽しい」


ふたりはルンルンで家に帰ってきた。

家の窓からリビングの明かりが見えたから、志麻子ちゃんが帰ってきてる

のかと祐介は思った。


「ただいま・・・」


返事はなかった・・・。


「母ちゃん、帰ってきてるのか?・・・・」


それでも返事はなかった。


ふたりは、明かりのついたリビングに入った。

すると誰かがソファに座っているのが見えた。

男だった。


その男は、こっちを向いて待ってましたって顔をしてニタニタ笑いながら

ふたりを見ていた。


その人物は、祐介と歳が変わらなそうな金髪の青年だった。

いわゆる一般的、イケメン。

髪がやたら長く、切れ長の冷たそうな瞳をしていた。


そこに知らない男がいるのを見て祐介は焦った。


「えっ、誰?・・・泥棒?」


その男を見たシュシュが言った。


「アスタリス・・・どうして、あなたがここにいるの?」


「シュシュ元気そうだな」

「カオスに落ちたとばかり思ってたら、こんなところにお世話になってたのか」


「探したんだぞ・・・」


つづく。


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