第7話:祐介の気持ち。
次の日の日曜日の朝のこと。
朝ごはんのあと、志麻子ちゃんは忙しくしていた。
「祐介・・・お母さん実家に行ってくるから・・・」
「おばちゃんの具合が悪いんだって・・・」
「だから今夜、向こうに泊まってくるからね・・・お留守頼むわね」
「ご飯はスーパーかコンビニでお弁当でも買って食べて」
「祐介、聞いてる?」
「聞いてるよ・・・おやじは?」
「昨日から出張で一週間いないって・・・」
「あのさ・・・親父も母ちゃんもいなくて心配じゃないのか?」
「あなた、男だから大丈夫だと思うけど・・・」
最近、このへん何軒か空き巣が入って物騒だから、ちゃんと戸締り
しときなさいよ 」
「そういう意味じゃなくて・・・」
「年頃の息子と年頃の居候の女、ふたりっきりにしといて心配じゃ
ないのかって聞いたつもりなんだけど・・・ 」
「ああ・・・そのことね、祐介を信じてるから・・・」
(疑ってただろ・・・)
「じゃ〜ね、とにかくお留守番お願いね」
志麻子ちゃんは手を振ると、そそくさと実家へ行ってしまった。
ってことで祐介はシュシュとふたりっきりになった。
シュシュは相変わらず暇を持て余して、テレビなんか見ていた。
お笑い番組でテレビから客の笑い声は聞こえてくるけど、シュシュは
笑ってない訳で、なにが楽しくてテレビを見てるんだろうって祐介は思った。
しばらくしてテレビも飽きたのかシュシュは、目をこすりながら
二階の祐介の部屋に引っ込んで行こうとした。
「シュシュ・・・昼寝でもするつもり?」
シュシュはなにも言わずうなづいてさっさと二階へ上がってしまった。
祐介はシュシュのあとを追って二階へ上がるとシュシュがいる自分の
部屋のドアを叩いた。
今まで家の中ではほぼシュシュとふたりっきりになることはなかった。
いろんな意味で、チャンスだったかもしれない。
「シュシュ・・・お昼、何か食べたいものある?」
「なんでもいい・・・祐介がいいと思ったものでいいよ」
「あの・・・ちょっと入ってもいいかな?」
「いいけど・・・」
部屋に入るとシュシュはベッドに寝そべっていた。
「あのさ、ここにいるのが、つまんなくてしょうがないんだろ?」
「帰りたいのか?」
そう言って祐介は人差し指で上を指した。
「そうだね・・・帰れるもんならね」
「俺はさ・・・シュシュに帰らないで欲しいかなって思ってる・・・」
「ん、そうなの?・・・」
「ずっといて欲しい・・・」
「そりゃ、私だって祐介といると楽しいから、ここにいいたいとは思うけど・・・」
「こんなこと言うのはめちゃ恥ずかしくて、めちゃカッコ悪いん
だけど・・・」
「俺、シュシュのことが好きなんだ・・・」
「・・・・・」
「それって告白?」
「だから、私に天界に帰ってほしいくないんだ・・・」
「祐介・・・恥かしい事も、かっこ悪いこともないよ」
「私も祐介のこと好きだよ・・・」
「ほんとに?」
「うん・・・」
「祐介・・・ひとつ聞いてもいい?」
「いいよ」
「祐介は好きな同級生とか彼女とかいないの?」
「いないよ・・・もしいたら今めちゃ困るし・・・」
「なんで?・・・」
「だって、二股はかけられないもん」
「その子とシュシュとふたり同時には好きになれないし・・・」
「俺は真剣にシュシュのことを思ってるっていうか、考えてるから・・・ 」
「もし他に彼女がいて俺がそんな中途ハンパな気持ちでいたらきっとその子
だって傷つけちゃうだろ?」
「だから二股なんてかけられないよ・・・そんなことしたら俺、最低男じゃん」
「でもさ、君に対する思いは俺の一方通行かと思ってた・・・もしシュシュが
俺のことをなんとも思ってなかったら、これって俺の片思いで終わっちゃう
のかなって・・・そんなの切なすぎるじゃん」
「だから今、俺のこと好きだって言ってくれて嬉しいんだ・・・」
「真面目なんだね・・・祐介は・・・」
「けど、私は天使なんだよ?・・・おまけに今は堕天使・・・もう少しで
悪魔になっちゃうかもしれなかったんだよ」
「人間と天使が好き同士になるなんて聞いたことないよ」
「ダメかな?」
「ダメって言うか私は、いつかは天界に帰るかもしれないでしょ・・・」
「それが分かってて告ったの?」
「そんなこと分かってるよ」
「だって、ここからあふれる想い・・・気持ち止められないもん・・・」
そう言って祐介は自分の胸に手を当てた。
「そか・・・分かった・・・私も祐介の気持ちめちゃ嬉しい」
「けど・・・私ね、まだ引きずってることがあるの」
「引きずってること?」
「だからね。今は素直に祐介の気持ち受け止めらない」
「だけど、もう少しだけ、待って?・・・心の整理がつくまで・・・」
「何かあったのか?」
「ごめん・・・今は言えない・・・」
「誰か他に好きな人がいるんだ?」
「うん・・・まあ、いたってのが正しいかな・・・」
「って言うか・・・もう、その人とは終わったことなんだけどね」
「まだ、別れてから日、浅いから」
「だから好きな人ができたから言うて、そんなにすぐには気持ち切り替え
られないんだよね・・・」
「祐介の気持ちがイヤって言ってる訳じゃないんだよ」
「ただ、もうちょっと時間が必要かなって・・・」
「分かった・・・俺、待ってるよ」
「ごめんね、祐介」
「でも、シュシュから嫌いって言われた訳じゃないから、恋人宣言は
するよ・・・」
「俺の気持ちは、はっきりしてるんだから・・・」
「恋人宣言ってなに?・・・大袈裟だね・・・けど分かった」
「んじゃ〜ひとまず私からの恋人宣言は、お預けってことで・・・」
「なんだか照れるね・・・こういうのって?」
「けどこの先私、祐介と恋人同士になったら天界に帰る時、辛いし・・・」
「それで別れるなんてことになったらって思ったら・・・」
「ずっとここにいればいいじゃん」
「それはそうだけど・・・神様が帰って来いって言うたらどうすんの?」
「その時は、帰りませんってはっきり言えばいいじゃん」
「神様なんかにシュシュは渡さないよ」
「強気だね・・・」
「俺、君のこと好きだって告白したから、気持ちが一歩進んだ」
「希望が持てたからね」
「だから、もっと君に近ずきたい」
「何がしたいの?」
「あのさ・・・横に寝てもいいか?」
「えっ・・・いきなりだね・・・それってどういう意味?」
「まあ・・・いいけど・・・」
祐介はシュシュの横に寝て、シュシュの体に手を回した。
「えっ、えっ・・・そ、そんなにくっつくの?」
「祐介・・・近いから・・」
「あ、勘違いしないでよ・・・何にもしないからね」
「何にもって、何?」
「だからエッチなことはしないからって言ってるの・・・」
「エ、エッチて・・・そんなこと・・・」
シュシュは真っ赤になった。
つづく。
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