第4話:おじさんじゃなくて・・・。
次の朝、祐介は当然学校へ行った。
シュシュのことが心配だったが、学校を休む訳にも行かなかった。
昨夜、寝る前に、シュシュがワンピースのままじゃ寝ずらいだろうと思った祐介は
自分のパジャマをシュシュに着せた。
男物のパジャマなんか着ると、可愛すぎるじゃんって祐介は思った。
朝、起きて祐介のトレーナーとジーンズを着ると、ますます人間の女の子と
変わらなくなった。
祐介の身長は173センチ、シュシュより背が高かったし体格も
太かったから、祐介の服はシュシュには少し大きめだったけど、それが
かえってシュシュを可愛くしていた。
そして仕事から帰ってきた父親は昨夜のうちに母親からことの詳細を
聞かされて、びっくりぽんだった。
驚くのと同時に、女子高生くらいのギャルを目の前にして、鼻の下を
伸ばしていた。
意にそぐわない人を見るというより好奇心の眼差しだった。
シュシュは志麻子ちゃんが出してくれた朝食を食べていた。
「美味い、これ・・・まじこで美味しい・・・」
「そうよかった、気に入ってくれて」
「あなた、なにジロジロ見てるの?、この子に失礼よ」
「あ〜・・・ごめんごめん・・・あはは」
「笑ってごまかさない」
「おじさん、私が珍しい?」
「おじさんじゃなくて・・・総一郎・・・そういちろう」
「それが僕の名前ね、で、ついでに言うと祐介の父親」
「君が珍しいってわけじゃなくて、君みたいなね・・・」
「なんて言うか、若い女の子が家にいると、ちょっとドキドキするかな・・・」
「あ〜いやね、うちは祐介ひとりだから、娘がいないもんだからね」
「いたら、もしかしたら君くらいかなって思って・・・」
「ふ〜ん、祐介は一人っ子なんですね・・・」
「あ、おじさん、ソウイチ・・・?」
「そういちろう・・・」
「ソウイチロウさん・・・私、名前をシュシュ言って元天使なんです
けど・・・」
「ソウイチロウさんがこの家のご主人でしょ?」
「まあ、一応ね・・・」
「私、当分この家にお世話になるつもりですけど、いいでしょうか?」
「あ・・・いいと思うけど・・・」
「いくところ、ないんだよね」
「って言うか・・・君、元天使なの?」
「今は堕天使やってます・・・」
「ほう・・・だてんし?・・・って?、どんなバイト?」
「バイトじゃありません・・・」
「あ〜そうなんだ・・・まあいいや・・・何か深い事情がありそうだね」
総一郎は思った、若い子とコミュニケーション取るのは難しいなって。
たしかに人間じゃないのは確かなことだもんね。
普通の人間には天使とか堕天使とかってのは伝説や神話の中だけの話だから・・・。
学校へも行かない、仕事もしない・・・家でプラプラしてるだけ
ここでは自分がする仕事もないし、迷惑なのかなってシュシュは思った。
他人でも、誰がいてるくれるって幸せなことなんだって・・・。。
だから麻衣子さんの後ろを金魚のウンコみたいについて回った。
で、麻衣子さんを質問攻めにした。
人間の世界のことなんか、あまり知る由もないシュシュだったから
逐一、麻衣子さんのすることに興味津々だった。
「祐介・・・早く帰って来ないかな・・・退屈・・・」
「退屈だったらテレビでも見てたら?」
そう言うと麻衣子ちゃんはテレビのリモコンのスイッチを押した。
シュシュは驚いた。
「まじで?・・・ほへ〜この箱の中に誰か人がいるの?・・・」
「その中に人がいるんじゃなくて、遠いところから電波ってので映像
を送って来てその箱にが映る仕組みになってるのよ」
「分かんない・・・」
それがシュシュの口癖になりそうだった。
で結局、シュシュはソファーにもたれてテレビをつけたまま寝てしまった。
目が覚めたのはもう夕方で、学校から帰ってきた祐介に起こされた。
「あ、祐介・・・おかえり」
「ただいま・・・」
「あ〜暇・・・私もうそろそろ帰ります・・」
「お邪魔しました」
「シュシュ、寝ぼけてる?」
「ん?、分かんない・・・」
「まあいいや・・・いちいち説明するのもめんどくさいし・・・」
「帰れるもんなら、帰ってくれてもいいんだけど・・・」
祐介はボソっと言った。
「なにか言った?、祐介」
「ああ・・・明日、土曜日で学校休みだから、シュシュをどこかに連れてって
やろうかなって・・・暇そうにしてるし・・・」
「どこかって?」
「どこか・・・だよ、まだ何も考えてねえっつうの」
「ごめんなさい・・・私、やっぱり帰ります・・・」
「・・・もう寝ろ」
つづく。
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