第3話:信じない志麻子ちゃん。


シュシュは堕天使になったことで、背中の羽の色が黒くなっていた。


「羽がなかったら、どこからどう見ても君は普通の女の子だよね・・・」

「めちゃ可愛い、女の子だよね、君」

「はっきり言って俺のタイプ・・・」

「だから今、アドレナリン出まくってるんだよね」


「え?・・・か、可愛い?」


「自分でも可愛いって思わない?」


「いや〜どうなのかな?」


「そうだ、おれのこと祐介って呼び捨てていいから・・・」

「俺も君のことシュシュって呼ぶからさ」


「分かった・・・」

「じゃあ・・・祐介、私ここに来たばっかでしょ・・・」

「右も左も分かんないところに来ちゃって、これからどうしたら

いいと思う?」


シュシュは訴えるような眼差しで祐介を見た。


(その角度・・・その目・・・弱いんだよな)

(男心をくすぐることを知ってる目だよ・・・)


「あ〜あ、俺んちへ連れて帰るってパターンかよ・・・」


実はシュシュはこの人間界での行い次第では、もしかしたら

天使として、もう一度天国に戻ることができるかもしれないのですが、

そんなことは彼女は知りません。


神様の手違いとはいえ、シュシュは天使として神に仕えたわけだし、

神様もシュシュをムゲにカオスに落とすのは不憫だって思ったんでしょう。

彼女がカオスに落ちる途中で神様は本来彼女を天界へ拾い上げるつもりでした。

ですが、どうやら救いあげることに失敗したみたいです。


だからカオスに落ちる前に、無理やり人間界に落としたんです。

と言うのも一度カオスに落ちると力のない天使はカオスから二度と出ることは

できませんからね。

シュシュを人間界に落とした、移動したのは、それは神様の精一杯の配慮

だったんでしょう。


今のシュシュは完全な天使ではなくて、堕天使と天使半分づつ持ってるの

かもしれません。

天使の特徴である羽根が黒い色に変わってるところを見ると天使でもないって

ことになるのでしょう。


おまけにシュシュは神様に魂を抜かれた状態でカオスに落とされてしまったので

魂を取り戻すためには、誰かの愛情が必要なんです。


もうお分かりですね。

このまま、祐介との巡り合わせが上手くいって、祐介がシュシュを愛して

くれるようなことがあるとしたら、そしてふたりの愛が成就した暁には、

もしかしたらシュシュは魂を得て、天界へ帰ることができるかもしれません。


祐介はしかたなく、自分の家にシュシュを連れて帰ることにしたのは

いいが、女性の兄妹がいない祐介はシュシュをどう扱えばいいのか、大いに

悩むところだった。


あと家族にシュシュをなんて説明しようか帰る間、祐介はそればかり考えていた。


家に帰ると案の定、母親が驚いたわけで・・・。

父親はまだ仕事から帰っていなかったので、母親にだけことの詳細を説明した。


「祐介・・・そんな話、お母さん信じられる訳ないでしょ・・・」


「だよな・・・信じられる訳ないんだよ、こんなバカな話」


シュシュは何も言わず黙って聞いていた。


「そんな信じられないような作り話してお母さんを騙したりしてないわよね?」


「騙したりしないよ・・・なんでわざわざ、そんな訳分かんない話で

自分の母親を騙すんだよ・・・信じろよな」


「真面目に学校に行ってるのかと思ってたのに・・・女の子と遊んでるなんて、

いつからそんなふしだらな息子になったの?」

「女の子を家に連れ込むなんて・・・ああ不謹慎」


「だから、違うって」

「もしだよ、もし彼女を連れ込むんだっから、お袋に言わないで黙って俺の

部屋に連れて行くよ」

「神に誓ってやましいことはやってないからな」

「絶対、うそじゃないからな・・・自分の息子の言ってること信じろ」


「ほんとに?・・・信じていいの」


「俺がそんないい加減な作り話までして女を連れ込むような息子だと

本気で思ってる?」


「思いたくはないけど・・・」

「でも、そんな不思議なことって、普通はありえないでしょ・・・」

「その人が、いきなり落ちてきたなんて・・・」


「全部、事実のことだから・・・もうグダグダ言わない」


「ああそうだ・・・改めて紹介しとくよ、この子シュシュって言うんだ」


「はあ、シュシュさん?・・・はじめまして」


「シュシュ、こっちは俺のおふくろ・・・志麻子ちゃん」


「こんにちは・・・シマコちゃん、ふつつか者ですけど、よろしくです」

「お邪魔してます」


ってことで、今夜はとりあえず一晩、シュシュを泊めることになった。

もちろんシュシュが寝るのは祐介と一緒の部屋じゃない。


祐介がリビングでシュシュが彼の部屋・・・そうなるわな。

一緒になんか寝たりしたら、間違いなく母親が卒倒するだろうから・・・。


志麻子さんはまだシュシュのことを少しだけ疑っていた。


つづく。


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