第2話:堕天使だって証拠。

図書室に落ちてきたシュシュを連れて祐介は図書室を出ることにした。


「あ〜裸足か・・・ちょっと待ってな・・・」


そう言うと、祐介は下駄箱から適当に上履を持ってきてやった。

上履きの中にマジックで田中と書かれてあった。


「あいつのか・・・野郎のじゃなきゃいいんだ」」

「明日返しときゃいいだろ」


「ほい、これ履いてみ?」


上履きはシュシュにぴったりだった。


とりあえず祐介は高校の近くの中央公園へシュシュを連れて行った。

クリスマスの時期だから小ぶりのイルミネーションが飾ってあった。

公園のベンチに腰掛けて、この不思議な出来事についてシュシュに聞いて

みることにした。


「君、寒くないの?・・・そんなワンピース一枚で」


「大丈夫です・・・意外と寒さに強いほうだから・・・」

「あ、そうだ・・・私の名前はシュシュ・・・はじめまして・・・えと?」


「あ、俺は神谷 祐介かみや ゆうすけ・・・よろしく」


それでも祐介は自分の学生服を脱いでシュシュに着せてやった。


「あ、ごめんね・・・優しいんだね」


「可愛い子にはね・・・」


「え?」


「いいから・・・」

「で?、僕に分かるように説明して、君の事情」


「分かった・・・あのね、私もともと天使だったの・・・」


「およよ、天使だって?・・・そんなキャラほんとにいるんだ」

「でもさ、天使なら頭の輪っかとか、背中の羽とかあるんじゃないの?」


「ん〜輪っかはカオスに落ちるとき、消えたみたい」

「羽はあるよ・・・ないように見えるけど空を飛ばないときは、体の中に

同化されてるの・・・普段は邪魔になるからね」


「信じられないよね・・・でもいるんだよ、天使は・・・」

「天使は 神様に忠実に仕えるしもべ・・・で、私は真面目に天使を

やってたの・・・」

「それなのに謀反を企んだ天使が神様に戦いを挑んで、私はその戦いの

巻き添えを食って、カオスに落とされたの・・・」


「悪いことをした訳じゃないんだよ、ただの巻き添えなの・・・」

「あることがあってね、神様と天使の戦いの中に私がいたんだ」

「それで・・・カオスに落ちる寸前で、私は堕天使に変わったみたい・・・」

「カオスに落ちて行くにつれカオスの力が強くなったんだと思う」


「私は神様に逆らったりしてないのに、他の天使と一緒にカオスに

落とされて、ほとんどの部分が堕天使になっちゃったみたいね」

「そんな理不尽なことってある?」


「けど・・・そのカオスとやらに落ちないで図書室に落ちてきたわけだろ・・・」

「・・・・なんで図書室なんだ?」


「分かりません」

「あ〜もう天界には帰れないんだろうな・・どうしよ」


「え?帰れないの?」


「あのね・・・私はカオスに落とされる時、神様に魂抜かれてるの」

「魂がないって言うことはもう死んでるのと同じ」

「魂なし堕天使なんです、私・・・だからもう天界に帰る資格ないの」


「え〜そうなんだ・・・なるほどね・・・作り話にしてはよく練られた

話だな・・・」

「背中の羽が体に中にしまわれるなんて都合良くない?」

「ほんとは羽なんてないんじゃないの?」

「言葉だけじゃ信憑性にかけるな〜」


「作り話なんかじゃありません・・・信じて?」


「あ〜疑ってごめんだけど・・・」

「じゃ〜さ、君が、その堕天使だって証拠、見せてよ」


「証拠?・・・証拠って言われても・・・ああ、そうだ、それじゃ」


そう言うとシュシュは祐介に着せてもらった学生服をベンチに置くと

ワンピースを脱ぎはじめた。


「なになに?・・・ちょ、ちょっと」

「え?なに服脱ごうとしてるの?・・・マズいでしょ、それって?」


「あ、ごめんなさい・・・後ろ向くね」


シュシュは祐介に背中を向けて服を脱いだ。


「なに、しようっての?」


「これで信じてもらえる?」


そう言うとシュシュの背中から、ぱ〜っと見事な羽が生えてきた。


「わ〜まじで?・・・羽が・・・生えてきたよ・・・」


「これで信じてくれる?」


「分かった・・・信じるよ・・・でも?」


「でもさ・・・天使の羽って普通、白くない?」

「絵なんかで見る、天使ってみんな羽が白いよね」

「君の背中から黒い羽が生えてるよ」


「え?」


そう言われてシュシュは自分の羽を見た。


「そうなんだ・・・もう天使じゃなくなったから・・・堕天使に

なっちゃったから羽が黒くなっちゃったんだね」


つづく。

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