ワンゲームワンライフ


「助かった」


楓ねえが吹き飛ばしてくれたおかげでなんとか致命傷は避けることができた。


でも流石に威力が強すぎると思うんだけど、木の枝にぶつかるから途中から当たらないように斬り続けるの大変だった。それに上手く木に着地して止まれたけど繋がっている鎖鎌が同じ軌道で飛んでくるから危なかったし。


まぁ、避けれたんだから良かったけど自分の武器に潰されるっていう情けない死因にならなくて済んだ。


「鎖は腕に巻きつかせない方がいいな。敵に引っ張られる」


鎖鎌から絡まっている斧を外して腕の鎖も解き、纏めて短くして、しまった。


鎖鎌と浮遊は一さんに通じなさそうだな。普通に戦った方がまだマシかも、でもただの鎌として扱うんだったら纏めたとしても鎖が邪魔になる。


「ちょうどいいや、この斧使おう」


一さんの武器を持って試しに何回か振って確認する。やっぱり少し重たいけど片手斧だから問題は無さそうでしっかりと手に馴染む。


「それじゃあ、早く2人のところに戻らないとね!」


浮遊を使って木を踏み台にして魔法を発動する。


<突風ブラスト>


爆破で加速し木々の間をすり抜けながら、戦闘に戻ると楓ねえが両手斧で一さんが新しい片手斧を取り出したのか二刀流で(斧だけど)互いに削りあっていた。あの人いくつ武器もってるんだよ。


ボクは途中の木を蹴って方向を一さんの方へ変えて突進する。両手に武器を上段に構えて振り下ろして受け止めやすいように攻撃する。前に失敗した鍔迫り合いのような膠着状態だがさっきとは状況が違う。


「借りを返しに来たよ」


「その前に私の斧を返す方が先なんじゃないかなー!」


一さんは勢いのいい言葉とは反対に受け止めている斧を一瞬、脱力した後、横に流す。急に相手の力が抜けてこちらも力が緩み両手の武器を思うように操作された。


しかしこちらも無抵抗ではなく体勢を崩すまではいかない。だがそれでも体は右に流れて短いができる。


そこを縫うように狙われて脇腹に蹴りが入る。そしてよろめいた先に今まさに攻撃をしようと斧を振り上げていた楓ねえがいた。


鍔迫り合いをしてその間にを楓ねえに攻撃してもらうはずがボクを壁に利用された!


振り下ろす直前の楓ねえはボクが突然出てきて躊躇して止まる。そしてその隙に一さんが斬り掛かろうするが森の奥からすかさず矢のフォローが入る。


一さんを狙って飛んでくる矢を一さんはボクの背中を足場に蹴飛ばしながら距離を取って回避した。


「ちょっ!」


「ぐわっ」


ボクは体勢を崩しながら楓ねえと頭からぶつかる。楓ねえが咄嗟に武器を消して支えてくれたから倒れなかったしダメージを受けずに済んだ。


「ありがと。受け止めてくれて」


「それはいいけど、変なところ触らないでよね」


「頭からいったんだからしょうがないじゃん。それに無いものは触れないでしょ」


「レンはぶっ飛ばされたいみたいね」


「今はぶっ飛ばさなきゃいけない人がいるからやめてほしいな」


「分かったわ、また胸の中に飛び込んできた時に人思いに折ってあげる」


「それは骨?もしくは首?」


「両方よ」


「ふふ、今日のレンちゃんはいつもよりも楽しそうね。でもここらで終わりにしましょうか」


一さんの決着の宣言を受けて何か仕掛けてくるのだろうと警戒をする。一さんは手遊びするかのように両手の斧をくるくる投げて遊んだ後、振りかぶって腕を交差するように投擲してきた。


それを回避しようと動き出すと同時に一さんはメニューウィンドウを指で操作して目の前にバラバラの武器を四つ空中に落とした。


武器が地に着く前に右の2つを掴んで体を捻って回るように加速させて投げ飛ばす。そのまま勢いをつけて一回転、そして左に残った武器を投げるではなく殴って押し飛ばした。


一投目は両者余裕を持ってそれぞれ反対方向に回避する。そして二投目も切り返して普通に避けるが波乱の三投目、それは先に投げたはずの武器が回避する方向を読んだかのように軌道を変えて追尾してきた。


<歌唱術:戦慄する五つの戦斧トマフォーク>


楓ねえとボク、互いに全く違う方向に避けたはずなのに同じよう追ってきた。二投目の斧の影に隠れて飛んできた短剣は今から回避するのは間に合わないと、二人とも弾いて防ぐ。


しかし次の攻撃はもうすでに放たれている。一さんは流れるように武器をさらに四つ落としてその内の刀2本の柄を蹴り飛ばした。刀は真っ直ぐボクたちの喉元に向かって迫り来る。


これはまずいかも!


でもボク達は2人で戦ってるんじゃない。萩にいが放った矢が刀の軌道を逸らしてくれた。ていうか飛んでくる物体を狙って当てるとか凄すぎじゃないかな。しかも2回続けてだし、


「そこにいるのね」


一さんは残る2本の斧をボク達ではなく森の中に向かって投擲した。それは森の木々の間をすり抜けるように飛んでいった。


ボク達に武器を投げ続けたのは倒すためじゃなくて複数の武器を撃ち落とさせて場所を把握するため。


「萩にいを狙ったのか!」


「私たちのせいね。かたきを取りに行くわよ!」


「まだ死んだって決まったわけじゃないけどね」


<突風ブラスト>


魔法はいつものように爆発してボクを押し上げてくれる、もはや普通の使い方をするのが珍しいまである。そして一さんに武器を取り出させる前に攻撃を仕掛ける。


勢いをつけた一撃で首を狩る。一歩下がられて空を切る。着地と同時に折り返し、腰を低くして足を狙う。跳び箱のようなジャンプで避けられただ股の下を通っただけになった。


楓ねえの様子をチラッと見て確認し、


<突風ブラスト>


今度は魔法を普通に使う。しかし狙いは一さんじゃなくてその手前だ。風は地面に当たって爆発し、土煙を起こす。


そしてその間に攻撃するのではなく浮遊を使って上を取る。代わりに追いついてきた楓ねえが豪快に斧を横一文字に振り抜いた。それは通った部分の土煙が消えるぐらい力強く。


しかしその手ごたえは感じられず。逆に土煙の中から鞭のようなものが一瞬、周りを通り過ぎ攻撃し、防御した楓ねえを少し後ろに遠ざける。


凄い速度の鞭だ。多分一さんの腕だったと思うけど、液体化だけでなく伸ばすこともできるのか。だけど作戦に問題はないはず、ボクは用意していた月の雫が入った瓶を3個ほど上から落とした後、浮遊を解除する。


ボクは瓶よりもほんの少し速く落ちて上に残った土煙を抜け、一さんの頭上に現れる。


一さんは当然予測してたかのように反応して対処しようとする。しかしボクは一さんが動く前に武器ではなく両足で頭を踏み潰そうと攻撃を仕掛ける。


咄嗟に一さんは腕を交差してそれを防ぐ。ボクが一さんの両腕に乗っている状態になった後、一瞬間を開けて土煙の中から瓶が落ちてくるタイミングを計る。そして武器での攻撃に移ると一さんは腕でボクを大きく弾き飛ばした。


奇襲は失敗。でもそれでもいい、攻撃が成功したらよし、蹴りの後弾き飛ばされてそこから離脱できればそれはそれでよし。


なぜなら触れたら盲目状態になる月の雫の瓶が時間差で落ちるようにしてあるから。


瓶に気づかず一さんに当たっても割れて中の液体が飛び散る。気づいて攻撃しても当然、中身が出るだけでアウト。避けたとして地面に当たって飛び散る飛沫を全部回避しないといけないし、範囲的に間に合わないタイミングにした。


これなら…上を向いて瓶に気づいた一さんは腕を液体にして鞭のように振るい落ちる前に破壊ではなく優しく全てを回収した。


「何か分かんないけど落としたらダメ…なんでしょ」


小さい瓶を3つ指の間に挟んでこちらに見せつけてくる。ボク達が最初に手に入れた素材だから効果はバレてないはずだけど、やっぱボクの作戦だと通じないか。


「わざわざ見せてくるのムカつくー!」


その時、矢が飛んできて一さんが持ってる瓶を撃ち抜いた。


その一矢は萩にいが無事であるという事実と一さんが盲目状態になるという千載一遇のチャンスを届けてくれた。


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