その蝶が運んでくるもの
萩にいが盲目状態で羽ばたく翅を射抜くというとんでも技を実行した後、落ちてくる失月蝶に追い討ちをかけようとボク達2人は走り出す。
その間ステータスを開いてスキルを確認する。
PC レン
LV12
種属 妖精
職業 曲芸師(短剣)
HP <体力>30 (+20)
MP <魔力>80 (+20)
STM <スタミナ> 10 (+0)
STR <筋力> 1 (+0)
INT <知力> 50 (+0)
DEX <器用さ>40 (+0)
AGI <敏捷>50 (+0)
VIT <防御力>1 (+0)
LUC <運> 38 (+0)
スキル
<スラストダガーⅡ><クリティカルカットⅡ><舞風Ⅱ><天地無用>
魔法
<
装備
武器 白銀の鎖鎌
頭 なし
胴 妖精の装束 +1
腰 妖精の装束 +1
足 なし
アクセサリー なし
合計防御力 2
<クリティカルカットⅡ>:刃物で敵の弱点などを攻撃する際クリティカルの威力が1.2倍上がる。そしてクリティカルの判定に補正がかかる。同じようにパリィの判定にも補正がかかる。
<スラストダガーⅡ>:地を蹴り任意の方向に向かって突進できる。そのとき与えるダメージは1.4倍上がる。空中では使えない。
<舞風Ⅱ>:敵の攻撃をパリィすると2秒間、実態を残したまま透過しあらゆる攻撃がすり抜ける。妖精を捕まえれるものはいないのだ。まるで吹き抜けていく風のように人はただそれを追うだけ、妖精の御業に惑わされて
<
<天地無用>:曲芸師には空も地面も必要ない。己の足の下にある物こそが立つべき場所である。発動すると1分の間、踏むことができる全ての物体が足場になる。
他のスキルも色々と変わっているが確認する時間はない。新しいスキルの内容だけ把握して必要なステータスポイントを割り振る。
ボスに挑むのに体力が無振りの10しかないのは流石に舐めすぎなので魔力と半分ずつ振る。ボスの攻撃を避けきれずにカスっても、一回は耐えれるようだったらいいんだけど。
新しく覚えたスキルは攻撃系じゃないから今、役に立つかは微妙。でも相手が空を飛べるのでないよりかはマシだろう。
<歌唱術:
<歌唱術:
楓ねえもバフを最初からかけてボクの少し前を走っており、多分楓ねえもステータスを確認が終わったのかウィンドウを閉じた。これで2人共準備は整った。
そしてついに失月蝶の翅が燃え尽きて音を立てて地面に叩きつけられた。どうやら楓ねえはボクより先に追撃をかけるつもりらしくて見る限り譲る気もなさそうだ。
「萩の仇を獲らせてもらうわよ」
<歌唱術:
楓ねえが掲げる斧は形状を変化させて膨れ上がる。それは斧の刃をいくつも後から付け足したような形に変わっていき内に込められた激情を外に表しているようだ。
ガーン!ともドンッ!とも聞こえる鈍く響く重低音。それは迫力を超えた威圧感すら感じる音。それは力強くてインパクトがあるいい音なのだが、武器の見た目の凶悪さや異様さと相まって見る人を不安にさせる。
そしてその武器がまさに生きているように脈動しながら大きくなっていくのも不気味に感じる理由の一つだろう。
楓ねえより大きくなりそれに留まらず、失月蝶と同じくくらいまで膨れ上がった斧は横に広がるように刃が増えてさらに棘のような物まである。
楓ねえはまるで重さがないような勢いで振りかぶりそのまま振り降ろす。その一撃は失月蝶を斬るでも叩くでもなくただ押し潰した。
失月蝶はグシャッとなんの抵抗もなく潰れて、液体が飛沫をあげて流れる。まるでトマトを潰したかのような跡が地面に残り、そこから静かな時間が流れた。
下敷きになって見えないけど斧の下には失月蝶がいるはず、でもピクリとも動かない。
「えっ一撃?」
その言葉きっかけになったかのように斧の隙間から大量の蝶が飛び出してくる。その群れの内の一部が3つに分かれて、ボク達3人に突っ込んできた。
「あーもう、言わなきゃよかった」
蝶は列のように連なって空中をうねるような軌跡を描いている。それは太い針が意思を持って動いているようだが1匹1匹はただの光失蝶だった。
ボクは鎖鎌を振り回し距離をとりながら戦う。両手で鎖を振るい自分に迫ってくる蝶の大群を避けながら切れ込みを入れて少しずつ倒していく。
地道なヒットアンドアウェイだけど、これができるのは3人でボクしかいない。光失蝶は耐久力が紙でどんな攻撃でも死ぬけどその時に盲目状態になる鱗粉をばら撒くから接近戦ができない。
だから楓ねえは敵を無闇に攻撃せずに回避して逃げに徹してる。萩にいは遠距離手段を持ってるけど逃げながら弓で応戦するのは回避が難しくなると判断したのかすでに森の中に隠れている。
楓ねえの様子を見ると反撃できないことが煩わしそうな顔してるけど動きを見てると回避に専念してたら全然余裕がありそうだ。
萩にいは森の中だから分かんないけど、蝶の群れは萩にいを見つけていないみたいだ。でもたまに見当違いな方に矢が飛んでいって蝶がそれに反応して近づくと見つけられなかったのか他を探す見たいなことを繰り返していた。
萩にいは本気で隠れたら蝶を撒けるけどその分の皺寄せがボクたちに来るからわざと音を出したり、多分<
もしかしたらまだ目の見えない状態かもしれない萩にいがそこまでやってくれるのはありがたいけど問題はこれからどうするかだ。
今も迫ってくる蝶を斬り伏せながら考える。
とりあえずこの形態を終わらせないと。避け続けるのはあの鱗粉攻撃より楽なのに反撃できるのがボクしかいなかったら効率が悪い。
HPを減らしたら変わるのか、時間経過かの二択だな。
「あっ、その前に自分がまずいかも」
そんなことを思考してたら倒した鱗粉に逃げ道を塞がれ、いつのまにか囲まれていた。後ろには下がれない、鎖鎌をギリギリまで振り回して敵を減らす。
そして<
魔法はレベルが上がった分、いつもより少し広めの爆発を起こして蝶を吹き飛ばして、そして厄介な鱗粉もまとめて消してくれた。
「おお!大量の蝶相手にはこっちに方が有効だな」
すぐに作戦を切り替えて<
ボクを追いかけてた群れはじわじわと数を減らしながら吹き飛びやがて全滅した。
このまま2人の群れも倒そうと思ったけど蝶の行動が変わり形態が変化する。蝶の群れが2人を追いかけるのをやめて空に飛び上がりそして空に残っていた蝶が翅を形成する。他にも隠れていたのか、ボク達を攻撃していた数より多くの蝶が集まりだした。
集まった光失蝶は最初の変化に掛かった時間より段違いに早くて森から飛んできた火の矢も当たる前に失月蝶の姿に戻り回避した。
どこからともなく
「えー、変身中ならやれると思ったのに」
という言葉が森の中から聞こえた気がするけど聞かなかったことにしよう。
失月蝶の状態を確認するとHPが3割ほど減っている。無傷じゃないのはよかったけど楓ねえの攻撃がまともに効いてたらもっとダメージを与えていたはずだ。
失月蝶はまた翅を広げて攻撃体勢を取る。そしてまた広範囲の鱗粉攻撃を仕掛けてきた。
しかし、今回はさっきのボク達とは違う。萩にいは森にいて場所を把握させてないし、楓ねえはバフをかけてる。
<
同じように魔法を起動して凄い勢いで迫ってくる霧のような鱗粉を横に飛んで避ける。楓ねえも今回はステータスが上がって回避できてるし、萩にいも大丈夫でしょ。
「レン!後ろ!」
「えっ」
すぐに後ろを見ると、通り過ぎて行った鱗粉が集まり光失蝶になって襲いかかろうとしていた。空中では身動きができずなんとか体を捻って回避しようとする。流石に避けきれずに肩を少し削るように貫いて通る。
「ヤバっ」
致命傷にはならなかったけど今のでHPの半分が消し飛んだ。
<
魔法をゼロ距離で起動しお互いに反動で吹き飛ぶ。すぐさま体勢を整えて似たような目にあった楓ねえと情報を交換する。
「そっちは大丈夫だったの?」
「HPは問題ないけど、MPが後半分しかない」
「こっちはHPが半分」
「ていうかあの蝶触れたらスタミナ削られるから気をつけたほうがいいわよ。あんたは大丈夫だと思うけど」
「それ本当なの。気づかなかった」
さてどうするか、思ったよりこっちの形態の攻撃方法ヤバかった。あの地面のほとんど覆う鱗粉を避けてからさらに追撃に対応するのは難しいぞ。しかもスタミナを削ってくるんだったら最悪、回避もできなくなって連続で喰らう可能性もある。ボクはMPで動いてるから関係ないけど
でもあの蝶の群れになる形態だと攻撃が通ってるのかも微妙だし、そもそもHPが見えない…
「あれっ、さっきよりHP減ってる。なんでだ?」
HPを確認してからしたことってなんだろう。鱗粉を避けてから蝶に追われてダメージ受けて魔法を放って逃げた。その中から導き出される答えは、
「ふーん、失月蝶。君って光失蝶の時が弱点でしょ」
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