目は光を失わない
まずい。今の状態でボスに挑むなんて考えてもいなかった。何もかもが足りていない、レベルは少し上がったけどそもそも武器が問題だ。
ボクは新しく買ったものだからまだマシだけど、2人は代わりの武器だから性能も良くない。勝機があるとしたらレベル10でもらえたスキルだけ。
ボクは微かな望みにかけてメニューウィンドウを開き、ステータスを確認しようと指を動かす。
「レン!そんな暇はないみたい」
楓ねえの言葉を聞いて
「攻撃する気だ!<
ボクは魔法を使いその場から離れるが失月蝶は翅で鱗粉を飛ばす、それは強風となって迫り、辺り一帯を包み込もうとする。
よし、レンはあの様子なら大丈夫そうだ。問題は僕達2人が避けれるかどうかなんだけど。間に合わなそう、楓もバフをかけれたら素早くなるけど迫り来る鱗粉に対してそんな時間はない。
まぁ仕方ないか、あと一歩、ギリギリで鱗粉から逃れないと判断して楓の背中を思いっきり押して突き飛ばす。
「萩!あんた何してるの!」
「後は楓に任せたよ」
なんとか楓を助けたあと僕は鱗粉に巻き込まれる。一応その前に目は閉じてたんだけど体に触れた瞬間意味がないとわかった。
目を閉じるよりも暗い闇が僕を包み込んだのだ。しかしそれでも僕にはやることがある。後は任せると言ったけど死にはしなかった。まだ生きているなら役に立てる。
まずは確認しよう、見えるものは自分の体とHP、MP、スタミナのゲージ。さっきの鱗粉でHPはほとんど減ってない、いやっ無傷だな。
次にステータスを表示する。希望は全てここにかかっている、まず無事に開いてみることができた。そして肝心の内容は、
PC 牡丹
LV12
種属 人獣(猫)
職業 狩人
HP <体力>10 (+0)
MP <魔力>70 (+0)
STM <スタミナ> 20 (+0)
STR <筋力> 20 (+0)
INT <知力> 60 (+30)
DEX <器用さ>50 (+10)
AGI <敏捷>30 (+0)
VIT <防御力>10 (+0)
LUC <運> 20 (+0)
スキル
<クリティカルショットⅡ><属性付与・矢>
魔法
<
装備
武器 初心の弓
頭 装備不可
胴 隠者の外装 +8
腰 狩人の
足 狩人の靴 +2
アクセサリー なし
合計防御力 12
<属性付与・矢>:魔力を消費して矢に属性をつけることができる。つけれる属性は火・氷・雷・土・風の中から1つまで選び使える。
<クリティカショットⅡ>:敵の弱点などを撃ち抜く際のクリティカルの威力が1.2倍上がる。そしてクリティカルの判定に補正がかかりスタンの効果と判定が上がる。
<
<
ステータスを見て気づいたのは新しいスキルがあるのは予想していたけどスキル名も変わっていること。効果の倍率などが増えている所を見るとスキルのレベルが上がったのだろう。
スキルの内容を一瞬で頭に入れる。元々よく本を読むので僕はこう見えて速読が得意だ。
そして今重要なのはなんの属性を付与するかだけど、虫なら火が効くと単純に考えて迷わず火を選択する。
それでもボスに挑むためにはどうしても火力が足りない。武器も今は弱いから余計に必要になる。だからこそ魔法と弓も威力が上がる知力と器用さに全て振り分ける。
考えながら遠くでレンが何か言っている。レンと僕達は逆方向に回避したから実際、位置的に遠いけどそれよりも僕が集中してるから聞こえづらいんだろう。多分大丈夫?とか言ってるのかな。
弓を引いて矢を放つ準備は整った。あとはこの目で失月蝶に借りを返すだけ、大丈夫だここらへんの地形は覚えたしあいつのサイズとさっきまでの距離も頭に入ってる。
やってることは変わらない、病院の中を自由に歩き回れるぐらいに完璧に景色を想像する。暗闇なんていつもの自分の目より100倍ましだね。
そう僕は普段から目が見えていない。正確に言うと見えてるんだけどおかしく見えたり間違って見えるって感じだ。見え方は日によって変わりただの近眼みたいにぼやけた時もあれば、視界が歪んでいることもないはずのものが見える時もある。
風景の色がバラバラになって見える時もあるし、逆に調子がいい時は普通に見える。年々おかしくなっていくこの目とはもう10年も付き合ってきた。
あとは敵の位置が分かれば撃てる!
「レン!敵の位置と動きの速度を教えて」
鱗粉の霧が晴れた際に心配して声をかけてから数秒して思ったのと違う答えが萩にいから帰ってきた。なんかいつの間にか弓を構えてるんだけど、もしかしてその状態で狙って撃つ気なの?
「敵は向きそのまま真っ直ぐ近づいてる!鱗粉が晴れてから動き出して速さは光失蝶と同じ!」
「ありがと」
それだけ分かったらもう十分だ。鱗粉が晴れたのをレンが声をかけた時と仮定するとそこから3秒が経った。光失蝶の速さも2時間たっぷり見たから目に焼きついてる。元の場所から3秒間で進める距離、地形、羽ばたく時の動き方、完璧に予想できる。
想像の中で暗闇に地形の形ができる、それは視界に入るはずの木々と敵と味方の姿をそっくりそのまま形取る。そして世界に色と動きがつく、それは僕が最後に見た景色の後みんながどう動いたのか表す軌跡だった。
「見えた!」
<属性付与・火>
魔力を消費して矢を燃やす。その矢は緋色の線を残しながら飛んでいき、今まさに羽ばたいている翅を撃ち抜いた。その部分は綺麗にくり抜かれて火属性の矢は翅を燃やす。
失月蝶の翅は一つを燃やすに留まらず、引火して4つ全ての翅が燃え尽きて落ちる。
未だに目は見えないままだが、その失月蝶が地面に叩きつけられる音が狙撃の成功を教えてくれる。そしてその隙を逃さないであろう2人が攻撃を畳み掛ける光景を暗闇の世界で幻視する。
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