第9話 衝撃
それからさらに数日後。
富士演習場で今度は富士学校の全校生徒が約500人による、大規模な総合合同演習が始まろうとしていた。
彬と曜、それに巽に紫苑、アリスも参加している。
そしてすべての学生の中心にいるのが、第1期生のジョック
この二人は全校トップの成績を3年間維持し続け、しかも親が上級なので学生ながらすでに誰も逆らうことはできない権力を持っていた。
二人の姿を見て、曜に話しかける彬。
彬「ほら曜、あれがこの学校のトップの東堂先輩と西園寺先輩」
曜「ふーん」
彬「……あんまり感心なさそうだね」
曜「うん。直接話したこともないわけだし」
彬「確かに、僕たちにとっては雲の上の存在だけどね」
曜「雲の上? 待ってよ、前に言ったでしょ? このがっこの生徒の能力の差なんて大して違わないって」
彬「でも、いくらなんでもあの人たちは別格だよ」
曜「ダメだよそんな弱気じゃ――あ、教官が来た」
と、そこへ北条ユリが歩いてきて全校生徒の前に立った。
軍隊らしくみんなビシッと整列し、一斉に頭を下げる。
ユリ「おはようございます。本日は予定どおり第三回目の実戦総合演習を行います。しかしその前に――」
ユリは先頭に立っていた東堂武志と西園寺綾乃に目くばせした。
武志と綾乃は前に出てきた。
美男美女のペアだが二人ともロボットのように無表情だ。
ユリ「知っての通り東堂・西園寺組はこれまで全学年トップの成績を維持し続け長く総代を務めてきました。が、本日をもっていったん二人のペアを解消することとします」
どよめく生徒たち。
ユリ「二人のあらたなパートナーは未定ですが、今後の訓練の成果により決定する予定です」
生徒たちはさらに大きくどよめく。
ユリ「静かに! とはいえ演習にさしつかえるので東堂と西園寺には当面仮の相手とペアを組んでもらいます。まず東堂の相手は――白兎しらと、白兎アリス前へ!」
ドヤ顔で前に出るアリス。
東堂の相手に選ばれたのは、彬の元パートナーのアリスだったのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その数日前、深夜。
学生寮の東堂武志の自室。
四人部屋で生活している一般の生徒とは違い、学年主席の武志は特別扱いで設備が整った個室が用意されていた。
部屋の中に置かれた大きいベッドの上で、武志に体を寄せるアリス。
肌かけの下の二人は素っ裸で、武志は煙草をくゆらせアリスに話しかけた。
武志「……そういえばお前、名前なんだっけ」
アリス「やだぁ先輩。名前くらい憶えておいてくださいよぉ。アリスです。白兎ア・リ・ス」
武志「そうか。お前なかなかよかったぞ。その歳にしては経験豊富なんだな」
アリス「そんなことないです。ただ私はこれと見込んだ人とはまずこういうことしてみるんです。それで相性が分かりますから」
武志「なんだ、じゃあ前のペアの男とも――」
アリスはぎょっとして慌てて否定した。
アリス「ないですないです、ありえません! 先輩は顔すら知らないと思いますけどとにかくとろくてグズで、触れるだけで身の毛がよだちますよ~」
武志「……で、そいつと別れ俺のとこに来たってわけか」
アリス「ええ、北条教官に頼んだんです。――あの、先輩飲み物もらっていいですか? 喉渇いちゃった」
武志がうなずいたので、アリスはベッドから出て冷蔵庫を開けコーラを手に取った。
武志「しかしお前ずいぶんませている――いや、なんか生き急いでるかんじがするな」
アリス「分かります?」
武志「まあな」
アリス「さすが先輩。私、今のうちにやれること全部経験しておこうと思ってます。正直言ってそんなに長生きできるとは思ってないですから」
武志「なぜだ?」
武志の問いに、アリスは真顔で答えた。
アリス「だって今私たちってぶっちゃけ人殺しの訓練してるわけじゃないですか。ということはですよ、逆に誰かに殺されても文句は言えない」
武志「なるほどな……」
武志はタバコを灰皿で消した。
武志「いいだろう。お前のこと教官に推薦しておいてやる。だが勘違いするな。あくまで仮のパートナーだからな」
アリス「ホントに!? ありがとうございます!!」
アリスはベッドにまた潜り込んで、武志に抱きついた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
場面は戻り、再び富士演習場。
どよめきが収まらない生徒たちに、ユリが叫ぶ。
ユリ「西園寺の相手は――乾! 乾彬いぬいあきら前へ!」
西園寺綾乃の相手に選ばれたのは、なんと彬だった。
機甲神兵ディバニオン 波崎コウ @hazakikou
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