第6話 リベンジ
二人はパイロットスーツに着替え、シュミュレータに乗り込む。
訓練開始前に二人は通信ディスプレイを通して会話をする。
彬「あの、前もって言っておくけど、僕はきっと君足手まといなるよ」
曜「なんで?」
彬「僕はこの学校の中で一番の落ちこぼれで成績はビリ。自分でもなんでここにいるか分からないんだ」
曜「あのさ、一見エリート揃いのこの学校の生徒も所詮はタダの人、実は能力に差なんてほとんどないんだ」
彬「え……?」
曜「君と他の生徒が違う点――それは気持ちの問題。ね、彬。知行合一って古い言葉知ってる?」
彬「??」
曜「分かりやすく言えば、知識と行動は一体。知っているままに動くことが大事ってこと」
彬「……なんとなく分かるけど、実際にやってみると……」
曜「なに、簡単なことさ、あらゆる感情を排除して無心になればいい。ただ結果だけを思い浮かべればそれでいいんだよ」
彬「……そうかな?」
曜「訓練を積めば大丈夫。もしかしたらこのシュミュレータ―なんかよりもそっちの方が大事かもしれない――でもまあ、とりあえず戦闘訓練から始めよっか」
こうして彬と曜、二人だけの特訓が開始したのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
場面はビルの屋上に戻る。
巽と紫苑が屋上にいた一体のディバニオンを一息に倒そうと、ダッシュで間を詰めようとしたその瞬間――
「二人とも奢ったね!」
背後から突如現れたもう一体のディバニオンがアサルトライフルを構え、セミオートで銃を連射した。
弾はほぼ全弾が巽と紫苑のディバニオンに命中する。
その結果、瞬く間にディバニオンのダメージが蓄積し、紫苑の機体は戦闘不能のレッドマークが点灯した。
巽の機体にもイエローマークが点滅し、あと少しで戦闘不能に陥る状態だ。
紫苑「うそ……!」
巽「バ、バカな――!」
巽と紫苑は初っ端から判断をミスした。
実はさっき広場で発見したディバニオンに乗っていたのは、自分たちが見くびってバカにしていた彬ではなく、曜だったのだ。
巽と紫苑がその場を離れてから、曜はこっそりと二人の後をつけ、ビルの屋上に跳躍し無防備になった瞬間を狙い、曜もビルの屋上まで跳び、背後からアサルトライフのペイント弾を浴びせたというわけだ。
巽「く、くそっ!!」
ぼろぼろの紫苑に対し、巽はまだ戦意を喪失していなかった。
自分たちの敗北は決定的だが、怒りに任せ一矢報おうと、サーベルを抜いた。
もちろんこれも演習用の模造刀で、実際に切ったり叩いたりしてもほぼダメージはないのだが、それでも巽は本当に彬を殺す気で襲い掛かる。
巽「このヤロー! 死ね!!」
しかし彬もすでにサーベルを手にして待ち構えていた。
ここまではすべて、曜の計算した通りだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昨日のこと――
彬と曜は明日の模擬戦での作戦を打ち合わせしていた。
その終わりに、女の子バージョンの曜が彬に言った。
曜「――という作戦だけど、どう? あの二人の自信過剰な点を利用してやろう」
彬「うまくいくかな?」
曜「大丈夫。私の計算に狂いはない」
彬「分かった。言う通りにするよ」
曜「ついでにあのいつもいきってる巽って子には、彬が自信をつけるための踏み台になってもらおうと思うの」
彬「え!?」
曜「最後は彬が止めをさして。私がそう仕向けてあげるから」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彬(本当にすべて曜の計算通りだ……)
今までの彬なら、ここで焦って失敗していたかもしれない。
しかし曜の指導のもと、一か月の間イメージトレーニングに励んだ結果、彬は今この瞬間も冷静でいられた。
逆に焦りまくっていたのは、彬という落ちこぼれに負けそうになっている巽だった。
そのため巽のディバニオンの動きは滅茶苦茶で隙だらけだった。
彬「こい!!」
彬は軽く巽の振り下ろしたサーベルを軽く受け、幾度か切り結ぶ。
が、勢いだけの巽はすぐに体制を崩し、そこへ彬のサーベルが空を切った。
そして巽のディバニオンの頭部の正面に、見事一撃を当てたのだった。
ナビゲーター「判定オールレッド、D1、D2、両機とも戦闘不能です!」
ユリ「そこまで!! 模擬戦終了!!」
オペレーションルームで戦いの一部始終を見ていたユリが叫んだ。
その冷たい顔に、一瞬だけ満足げな笑みが浮かぶ。
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