第4話 出会い

 ようは栗色の髪を肩まで伸ばしてはいるが、端正な顔立ちの凛々しい美少年に見える。

 しかし声は澄んでいるし、制服は女子のものなので、やはり女性なのだろう。


彬「きみは……?」

曜「名前? 天野曜――」

彬「えっと……ここの生徒だよね? 知らない顔だけど」

曜「そう。昨日付で転校してきたの」


 見慣れぬ顔に戸惑いながら、彬はシロから離れ立ちあがって曜と向き合った。


彬「僕は……」

曜「乾彬君、だよね」

彬「え、なんで知っているの?」

曜「北条せんせから名前を聞いているから」

彬「教官から……?」

曜「うん。――そんなことよりさ」


 狐につままれたような顔をする彬に曜が訊く。


曜「彬君は犬が好きなんだ」

彬「……うん」

曜「どうして?」

彬「どうしてって言われても……まあカワイイし」

曜「それだけ?」

彬「あと絶対に裏切らないからかな。こちらが可愛がれば必ずその気持ちに応えてくれるっていうか」

曜「ふーん」

彬「あの、天野さんは? 犬は好きじゃないの?」

曜「嫌いというわけじゃないけど――あの、でもさ。犬はしょせん犬。いくら大事にしても私たちに何かしてくれるわけではないでしょう?」

彬「そうとは限らないと思うけど」

曜「確かにペットに癒されて気持ちが救わることはあるかもだけど、やっぱり人とは違うよね。人と動物は決して対等な関係にはなれない」

彬「……だから?」

曜「フフフ……つまり私と彬君は人と人、対等な関係になれるってこと」


 曜はそう言うと微笑んで、白く華奢な手を差し出した。

 彬は戸惑いつつ、自分も手を伸ばし握手をする。


曜「そしていまこの時から彬君と私はペアになったの」

彬「え?」

曜「北条せんせに言われたんだ。ディバニオンに乗って君と組むようにってね」

彬「ええ――!?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 それからさらに一か月後――


 雲一つない、澄み渡った空の下の自衛隊富士演習場で、再びディバニオンの模擬戦が行われようとしていた。 

 その舞台と計4機、2対2に分かれて戦うルールは変わらない。

 が、今回はパイロットが違う。

 

 A組に搭乗するのは、乾彬と天野曜。

 B組は前回同様、黒須巽と真加辺紫苑。

 彬と曜のペアにとっては、デビュー戦だ。


 曜「彬君、大丈夫。私の言った通りにすればきっと勝てるよ」

 彬「あ、ああ」

 

 並んで立つディバニオンに搭乗した二人は、チャンネルを開き短く会話する。

 それに対し、巽と紫苑は自信満々。彬と曜を完全に馬鹿にした態度だ。


巽「ったく、あのグズ懲りねえな」

紫苑「ほーんと」

巽「あの天野とかいう奴の実力はまだ分からんが、まあ組んだ相手が乾じゃどうしようもねえよ」

紫苑「そうだけど巽、なんといっても始めて戦う相手だし油断は禁物よ」

巽「分かってるって。そうだな。今日は正攻法でいくか」

紫苑「了解」


 四人の会話が終わった時、オペレーションルームから北条ユリが合図を出す。


ユリ「D1,D2――D3,D4! 戦闘開始!」


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