第17話 さすが冒険者たち
王都グランエリュートから数キロ離れた田舎町レシルア。
今回のエピソードはここが舞台となる。
エルトとリーリャの二人は、あるものを「検証」するためにこの町へ来ていた。
「オーナー、私に『
とリーリャさんがエルトに問う。
リーリャさんを連れてきたのにはもちろん理由がある。断じて他に目的などない。
リーリャさんが「鑑定魔法」の使い手であることは前に紹介しているが、今回はそれが必要になるとエルトは考えていたからだ。
「――まあ、それはまた明日の話です。取り敢えず今日のところはここで日頃の疲れを癒してください。すでに手配している宿には温泉もあるそうですから」
と、返しておく。
今日の夕方から、店をミミとルーとあと一人の従業員さんにお任せしておいて、このレシルアにやってきた。グランエリュートから数キロの場所だから徒歩でも2時間はかからないぐらいだ。
だが、さすがに日も陰り始めている。明日の夕方までは店を離れるとミミには伝えてあるから、今日はリーリャさんにゆっくり休んでもらおうと思ってのことでもあった。
(今度、ミミには何か埋め合わせをしないとな――。ルーのやつはまあいいけど)
などと思いながら街路を行くと、果たして目的の宿が見えてきた。
「う~ん。おいしい! 王都のすぐ近くにこんないい場所があったなんて、見落としていました」
と、リーリャさんは夕食に出されたキノコや
宿の受付を済ませたあと、部屋に荷物を置いて(もちろんリーリャさんとは別々の部屋だ)、二人ともゆっくりと湯に浸かった後、食堂で夕食を頂いているところだ。
「うん、このほう
とエルトも応じる。
「――たしかに、ご飯との相性はとてもよさそうですね? ウチの
と、リーリャさんもまんざらではなさそうだ。
実はこの田舎町の情報をくれたのは冒険者ギルドだ。というより、今進行している『雑誌作成』プロジェクトの一環で、実際にどのような情報が集まってくるのか検証したかったというのもある。
このぐらいのレベルの情報がある程度の件数集まってくれば、グランエリュート近辺の「観光ガイド」の作成に大きく進展が見られるのだが――。
「あ、私ったら、おもわず仕事の話を――」
と、リーリャさんがすこし自嘲気味に零した。
「ははは、リーリャさんには本当にいつも感謝してます。従業員さんたちへの心配りや教育などはもちろんですが、お客様のお声や様子などにもよく気を配っていただいて。本当にありがとうございます」
とエルトも素直に頭を下げる。
「や、やめてください、オーナー。私は私の為すべきことをしているだけです。それより、オーナーのほうこそ、常に新しいことに目を向けておられて――。それこそ、
と、リーリャさんが返してくれる。
言わずもがな、コンビニエンスストアの主力商品だ。
この分類の売上が伸びている限り、お店の成長は続いていくと言っても過言ではない。
言い換えれば、この分類の伸びが止まるところがそのお店の限界だともいえる。
売り上げの伸び悩みが見られたあとが大事だ。いかにその売り上げを維持し続けるか。ラインナップを変え、目先を変えしながら、継続的に購入してもらえるように販売を促進していかなければならない。
ここまでのところ、ある程度、あっちの世界でやっていたことをこっちの世界で実現させることができている。米が受け入れられるかが肝ではあったが、これも問題なくクリアできた。いや、むしろ、好評だと言ってもいい。
「
と、エルトも返しておく。
「ところで、これが私に見せたいもの、というわけではないんですよね?」
「ええ、リーリャさんに『
その晩は、そのあと、この町の地酒も頂いて、ほろ酔い気分でお互い自室に戻った。体がぽかぽかと温かく心地よい気分だ。
寝床もなかなかに上等なもので、このクラスの宿であれば、充分に癒されることだろう。
(やっぱり、冒険者ギルドに頼んで正解だったな――。さすが冒険者たちだ、いい情報を持っている――)
エルト自身もかなりの場所を訪れたが、この街にこんな宿があることは知らなかった。本当に世の中はとてつもなく広い。
その土地その土地の情報にはその土地の冒険者ほどの『
これで明日行く場所が「合格」なら、『第一号』の目玉記事はこれで決定だ。
そんなことを考えているうちに、エルトは穏やかな眠りに
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