第41話 コーデリックの村
「そこで止まれ! お前たち、何者だ!」
そのまま馬車で村の方へと進むと、村から槍や剣などを構えた大勢の女性が現れ、この場所を取り囲んだ。
「俺たちは冒険者だ。用があってこの村にきたが、敵意はねえから、まずは武器を下ろしてくれ」
アンリが両手を上にあげつつ、前に出てくれる。相手はかなりの興奮状態で危険だと思ったのだが、あれだけの数が相手でも、どうにかできる自信があるらしい。さすがAランク冒険者だ。
「冒険者だと!? こんな辺鄙な村へか!」
「騙されるな。きっと
あいつら? どうやら誰かの手先に間違えられている可能性が高いな。
「ちょっと待ってよ! この村にルベルはいない? 前にこの村へ来たことがあるデジテなんだけれど、誰か見覚えはない?」
「……ちょっと待て、確かにこの人は前に見たことがあるぜ」
「本当だ、私も見たことがあるよ。誰か、ルベルを連れてきてくれ!」
どうやら以前にこの村へ来たことがあるデジテさんに見覚えのある人が数人いるようだ。村の奥へ走っていき、俺たちがこの村へやってきた目的である解呪の魔法を使えるルベルさんを呼びに行ってくれたみたいだ。
「デジテ、本当にあなたなの?」
すぐに村の人たちがルベルさんを連れてきてくれた。ルベルさんは金色の綺麗なロングヘアで、どこかおっとりとした印象を感じられる女性だ。
「ルベル、久しぶりだね。僕のこの尻尾には君も見覚えがあるだろう?」
そう言いながら自分の尻尾をブンブンと振るデジテさん。はたしてデジテさんのネコの尻尾で本人と分かってくれるのだろうか?
「……尻尾は分からないけれど、その軽い話し方はデジテね! 他の方たちはどなた?」
どうやら話し方でデジテさんと分かってくれたらしい。綺麗でおっとりとしたお姉さんという印象がだが、意外ときついことを言う女性のようだ。
「私たちはデジテの知り合いのAランク冒険者。呪いの解呪魔法が使えるあなたに用があってやってきた」
「なに、Aランク冒険者だと!?」
「すげえ、もしかしたら助かるかもしれない!」
エルネたちがAランク冒険者であるという言葉に喜ぶ村の人たち。どうやらこの村に何かがあったことは間違いないようだ。
「皆さん、大変失礼しました。まずは村の中へお入りください」
とりあえず誤解は解けたようで、村の中へと案内されることになった。
「先ほどは大変失礼いたしました。この村の村長をしておりますモルガナと申します」
そのまま村の一番大きな家へと案内された。大きな家といっても、オリオーの街の建物とは異なり、木造の一階建ての家だ。村の中には畑もあって、野菜を育てたり、狩猟をして生活を営んでいる村のようだ。
モルガナさんは年を取ったおばあさんで、このコーデリックの村の村長らしい。モルガナさんの両隣には屈強な女性が2人と、ルベルさんが座っている。どうやら俺たちへの警戒は解けたようで、すでに武器などは構えていない。
「なにか事情があったんだろうから気にするな。さっきの様子だと、盗賊たちに目を付けられたってところか?」
「……っ! さすがAランク冒険者様です。仰る通り、先日この村に盗賊たちがやってきたのです」
アンリがこの村の事情を言い当てた。盗賊か……どこの世界にもそういった悪い奴らがいるみたいだな。
村長さんの話を聞くと、数日前この村に盗賊たちが現れたらしい。その数はなんと20人以上、この村には50人近くの人が住んでいるらしいが、村の外に出ている者もおり戦えるものは少なく、武装した盗賊たちに勝てる道理はなかった。
幸いなことに、盗賊たちは食料を少し要求しただけで引き上げていった。しかし、当然盗賊たちの要求はそんなもので終わるわけがなかった。盗賊たちは定期的にこの村へ訪れ、食料を提供するように要求してきたらしい。
「しかもやつらは食料ばかりか、この村にいる男まで要求してきたのです!」
「……ちっ、盗賊たちの要求してきそうなところだぜ」
「盗賊たちは全員くたばればいいのに」
「………………」
もちろん、みんなはこれ以上ないくらい真剣に話しているんだろうな。盗賊たちが
「やつらは要求を受け入れなければ、女は皆殺しにして男は全員連れていくと言いました。食料はともかく、村の男衆を差し出すようなことはできるわけがありません。村人全員で命を懸けて戦うつもりでしたが、残念ながら勝ち目はほぼなく途方に暮れていたところで皆さまがこの村にやってきてくれたのです!」
そりゃ、村全体が殺気だっていて当然である。そんな状況でノコノコこの村に訪れたら、盗賊たちの一味だと思われて当然だし、村へのスパイと思われても仕方がない。
こちらとしても運が良かったのは、デジテさんが何度かこの村を訪れていて、ルベルさんと仲が良かったことだな。
そしてみんなはBランク冒険者とAランク冒険者だ。冒険者であることを証明する冒険者カードは偽造が難しいことでも有名らしく、この状況で盗賊たちがAランク冒険者語る意味はまずないということで、村人たちは俺たちが盗賊たちと無関係であることを信用してくれた。
「どうか皆さま、我々に力を貸していただけないでしょうか!」
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