第37話 発情ネコ


「トオルと言ったね。アンリとエルネに聞いていた通り、本当に良い男だ。もし良かったら僕と一発どうだい?」


「へっ!?」


 いや、初対面でいきなりなに言ってんだこの人!? さすがに冗談だよね!


「おらあ!」


「いてっ! いきなり何するんだい、アンリ?」


「それはこっちのセリフだボケ! いきなりトオルに何言ってんだ!」


「いや、聞いていた通り本当に良い男だったから、ここはワンチャンヤれないかと思ってね」


「………………」


 うん、どうやらデジテさんはだいぶ変わった人のようだ。いや、変わっているというか、下手をしたらヤバイ人な気もするが……


「まったく、相変わらず色欲魔の発情ネコで困る……」


「色欲魔とは失礼だね! 僕だって誰でもいいわけじゃないよ。トオルみたいな素晴らしい男性だけさ!」


 いや、初対面の人にそれは通報案件な気がする。


 だが、ネコの獣人であるデジテさんは俺やみんなと同じか少し年上くらいのかなりの美人さんだ。本当にこの世界の女性は顔立ちの整った女性が多い。もちろんモテなかった童貞男子高校生の俺からしたら、土下座をしてでもヤらせてほしいほどの女性である。


 とはいえ、今はこの呪いがあるからな。もちろん簡単に一発なんてことはできないのが現状である。


「さすがにまだデジテさんのことは何も知らないので遠慮しておきます」


「むっ、ということは可能性が十分にあるということだね! それなら僕のことをこれから存分に知ってもらうとしよう。何なら今すぐにそこのベッドで――ふげっ!?」


「いい加減に黙っておけ!」


 アンリがデジテさんの頭に思いっきりチョップをする。あれはかなり痛そうだ。


「早くトオルの呪いを治してさっさとここから出て行って」


 おう、2人ともデジテさんに対してかなり辛辣だな……


「まったく、遠くの街から呼び出しておいてなんて言い草だよ。でも教会でも解けない呪いというのは非常に興味があるね。早速見せてもらうよ」


 そう言うデジテさんの尻尾はブンブンと揺れている。あれかな、興奮すると尻尾が揺れるものなのかな。


「……先に言っておくが、トオルにセクハラしたら、ただじゃおかねえからな」


「魔法で八つ裂きにする」


「わ、分かったから、早くその大剣と杖を下ろしてよ!」


 この焦り方は、治療と称してセクハラをしようとしていたようだな。まあ、見ている分にはとても面白い人だけど。




「……ふ~む、なるほど。確かに彼にはとても高度な呪いがかけられているみたいだね。かなり強い呪いの割に周りへ気付かれないような効果もあるようだ。確かにこれは普通の解呪の魔法では治療することができないだろうね」


 座っている俺の後ろに立ち、両手で俺の頭を触診しているデジテさん。俺には何をしているのかさっぱりだが、どうやら触診をしながら、この呪いを分析しているらしい。


 先ほどまでの言動とは打って変わって真剣な様子だ。どうやら、デジテさんが優秀な人というのは本当らしい。Aランク冒険者であるアンリとエルネがわざわざ遠くの街から呼んできてくれたということで、彼女が優秀だということはわかっていたが、先ほどまでがちょっとあれだったからな。


「それで、トオルの呪いは解除できそう?」


「う~ん、現状では難しいとしかいえないね。僕も魔道具や呪いを研究しているとはいえ、実際に強力な解呪の魔法を使えるというわけじゃないからね」


「そうですか……」


 くそっ、どうやらデジテさんでもこの呪いは解除することができないらしい。あのクソ女神、どれだけ強い呪いをかけてくれたんだよ!


「ったく、使えないやつだな」


「魔道具と呪いの知識を除いたら、ただの発情ネコのくせに」


「驚くほど僕に対して辛辣だね!?」


 確かにいつもの2人とは思えないほどデジテさんの当たりが強いな。まあ、それくらい仲が良いという証拠でもある。


「トオルには辛いかもしれないけれど、一度その呪いを実際に発動してみてもいいかな? 実際の呪いの条件や呪いの強さについて確認してみたいんだ」


「なるほど」


 どうやら、実際に呪いが発動して分かることがあるらしい。


 ……あれ、でもこの場合はどうやって呪いを発動させればいいんだ?


「しょ、しょうがねえな。そういうことなら俺が協力するぜ!」


「しょ、しょうがないから私が協力する!」


 デジテさんの提案に同時に協力してくれようと自分の胸を差し出してくる2人。そうか、実際に呪いを発動させるには、俺が女性に興奮しないといけないのか……


「トオル、遠慮なく触っていいぜ!」


「呪いの検証だから大丈夫!」


 そう言いながら、2人ともさらに胸を俺に向けてくる2人。なんか目が座っているっぽいし!?


 うっ、ここまで俺に協力してくれた2人の胸を触るなんて、さすがに人として駄目だろ。しかし、実際に俺の呪いを発動させないことには、次の段階に進めなさそうだ……


「へえ~呪いの発動条件は女性の胸に触るということなんだね。特殊な呪いと聞いていたけれど、そんな特殊な条件があるとは、非常に面白い」


 どうやら2人はちゃんと俺のことを秘密にして、デジテさんに俺の呪いの発動条件を話していないらしい。


 それに2人のどちらを触らせてもらえばいいんだ!?




「痛ててて……」


「う~ん確かに強力な呪いが発動しているね。女性に触れると発動する呪いとは、本当に厄介な呪いだ。これは非常に興味深い」


「「………………」」


 結局、許可が出ていたとはいえ胸を触ることはできず、2人のどちらかを選ぶこともできなかったので、妥協点として2人のお腹を触らせてもらっている。


 ぶっちゃけ童貞男子高校生なんて、女性のお腹に触れるだけでも十分に興奮するのである! 


 ……うん、普通にヘタレましたよ! てか、2人の胸なんかに触ったら、とんでもない頭痛がして、検証どころじゃないからな。


 とりあえず2人のお腹に触れて呪いが発動したこと見て、エルネとアンリの2人はなぜか嬉しそうにしていた。

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