第34話 個人レッスン
「それでは今日からよろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそよろしくお願いするよ」
冒険者ギルドにある訓練場にて、冒険者ギルドの副ギルドマスターであるジスエルさんと対峙している。昨日あった臨時教官による男性へのセクハラ事件のお詫びとして、俺が一般的な冒険者と呼ばれるDランク冒険者になるまで、副ギルドマスター直々に俺を鍛えてくれることになった。
ジスエルさんの格好は昨日のピシッとしたこちらの異世界のスーツのような服装とはまったく異なる。
訓練で動きやすいような丈の短いホットパンツをはいており、その健康的な細身ながらもムチムチとした太ももが惜しげもなく晒されている。上半身はシャツに胸当てといった格好だが、シャツの丈が短いので、おへそまで見えている。
……ジスエルさんみたいなメガネをかけたクールビューティのこういった姿は新鮮でいいな。年齢は20代半ばと聞いていたが、もっと若く見える。ぜひ個別指導で、いろいろと手ほどきしていただきたいところである。
「それでは早速始めよう。トオルくんはDランクを目指すのだったな。Dランク冒険者への昇級試験は戦闘がメインとなるから、戦闘訓練を中心に行っていこう」
「はい!」
おっと、いかんいかん。ジスエルさんの教官の服装が昨日とはうって違って魅力的だったためにジロジロと見てしまっていた。訓練は真面目に頑張らないと、怪我をしてしまうからな。
「トオルくんは男性で回復魔法が使えるということなので、回避と防御の訓練を中心に行っていきたいと思う。そしてその合間に武器などの投擲による援護を訓練するする方向で大丈夫だろうか?」
「はい、それでお願いします」
以前からの教官と同じように、基本的には防御の訓練が基本となるようだ。まあ、この世界にいる男性冒険者は基本的に後方支援をするのが基本だからな。
「了解した。まずはトオルくんの力を見たいから、私が木剣で攻めて行くのでトオルくんはその攻撃を防いでみてくれ」
「わかりました」
準備運動をしてから、いよいよ本格的な訓練が始まった。
「はあ……はあ……」
「よし、一旦休憩しよう。水分補給はしっかりとするのだぞ」
「はい」
ジスエルさんは俺に木剣で何度も打ち込んできて、俺はひたすらその攻撃を避けたり木剣で防いでいった。徐々に鋭くなっていくジスエルさんの攻撃についていけなくなったところで、ギリギリ俺が防げるくらいの攻撃へと変わっていった。
そしてそこから俺がその攻撃に慣れていくと、またほんの少しだけジスエルさんの攻撃のスピードが上がっていく。
確かにこれをこのまま続けていくだけで、少しずつ俺は強くなっていくだろう。それにしてもこの訓練方法は本当に疲れるな。少し動いただけで、かなりの体力を消耗したぞ。
「男性の割には思ったよりも動けているようだ。それに思ったよりも筋は良い。これなら回復魔法を使えることを加味すれば、すぐにDランク冒険者まで上がれるだろう」
「本当ですか!」
元の世界では細身で力はなかった俺だが、運動神経自体はそこまで悪くなかった。それにもしかすると、女性の力のほうが強いこの世界の男性とは多少身体の構造なんかが違っていてもおかしくはない。
「ああ。だけど男性にしてはだからな。特に男性のトオルくんの場合は女性冒険者よりも遥かに危険が多いわけだし、どんな状況でも油断だけはしては駄目だぞ」
「はい、気を付けます!」
昨日実力を伴わずに冒険者ランクを上げるのは危険だと言ってくれたジスエルさんはちゃんと俺のことを考えくれているみたいだ。それに、さっきのように俺が防げるギリギリの攻撃を繰り出してくれているし、教える教官の能力はとても優れているに違いない。
彼女に従ってこのまま訓練していけば、俺もこの世界で多少は身を守る力を手に入れることができそうだ。
「次はトオルくんの方から攻撃を仕掛けてみてくれ。基本的には投擲などによる遠距離攻撃になるかと思うが、魔物などによる戦闘ではどうしても接近戦に持ち込まれる可能性が高いからな」
「わかりました!」
今度は俺の方が木剣でジスエルさんに打ち込んでいく。しかしその攻撃をジスエルさんは難なくさばいていく。
「ちょっとストップだ。ふむ、攻撃の方は完全に我流のようだな。一度剣を持って構えてみてくれ」
「はい」
言われたとおりに木剣を持って構える。もちろん俺は剣術なんかは習ったことがないので、当然剣術は我流だ。
「剣の持ち方はそれで大丈夫だ。あとは身体を相手に対して少し横にすることで、こちらの急所を相手から隠すように構えるといい」
「なるほど。こうですか?」
「そうだな。もう少し身体をこちらの方に――」
「……っ!?」
うおっ、背中に胸当て越しとはいえ、ジスエルさんの柔らかな胸の感触が! それになんだが良い匂いもしてくる!
いかんっ、ちょっとだが、例の呪いによる頭痛が!?
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