第27話 停戦協定
「……トオルはもう2階へ上がったみたい」
「そうだな、下に降りてきたら階段の音で気付くぜ」
「うん。それでトオルの話をアンリはどう思った?」
「どうもこうも、あれは本当の話だろ。別の世界とか女神とかは正直分からねえけれど、少なくとも俺とエルネに興奮したって事にかんしちゃ嘘じゃねえと思うぜ。嘘をつくなら、もう少しマシな嘘をつくだろ?」
「私もそう思う。アンリの胸を見た時や私の胸に触れた時の反応はどう見ても本物だった。それにトオルが頭痛を受けたと言っていた時、微かだけれど、確かに魔力の反応があった。少なくとも、トオルが何らかの呪いを受けていることは間違いない」
「本当か! エルネがそう言うなら間違いないな。ってことは、トオルには俺たちが女として見えているってことだな……」
「「………………」」
「くっくっく……」
「ふっふっふ……」
「ついに来たぜ! 俺たちの時代が!」
「今まで一度たりともモテなかった私たちに運命の出会いがきた!」
「高ランク冒険者になれば男にモテると聞いて、ひたすら強くなったのに、今までまったくモテることがなかった俺たちにもようやくチャンスがきたぜ!」
「他の冒険者はCランクやBランクでもいい男を捕まえていたのに、私たちに寄ってくるのはお金目当ての男ばかり……」
「ああ、何度も悪い男に騙されたりしたもんな。それもこれもこのデカすぎる胸のせいだと思って、本気でこの胸を斬り落とそうか悩んだこともあったぜ……」
「いろんな方法を試したのに、結局身長が伸びることはなかった。アンリと違って身長はどうにもならないから、本気で一生男と結婚できないと思っていた……」
「お互い辛かったよな……何度娼館に行こうかとも思ったか分からねえが、無駄に高くなったAランク冒険者の称号のせいで行けなくなっちまった……」
「変装をして、この街から離れた娼館なら大丈夫だと思っていたら、普通に店の人にバレそうになって逃げたこともあった……」
「そういや、そんなこともあったぜ。俺とエルネは悪い意味で目立っているからな……」
「だけどトオルは私たちをちゃんとした異性として見てくれていた。それに綺麗で優しくて、今まであんな男性に会ったことない」
「ああ。ヨーグル亭でも俺たちに優しく接してくれていたもんな。あんないい男他にいねえよ」
「問題はトオルがモテすぎるから、他の女たちが大勢群がってくる。正直に言って、他の女には勝てる気がしない……」
「俺も正直に言って自信はねえな……今まで男にモテた経験なんて一度もねえしよ……」
「……アンリ、提案がある。ここは協力して、他の女をトオルを近付けないようにしない?」
「おう、ちょうど俺もそれを提案しようと思っていたところだ。ここは協力していこうぜ。これだけの長い付き合いだし、エルネだったら、トオルと重婚したとしても許せるしな」
「私もアンリなら許せる。それとトオルの呪いを解くことを優先しよう。トオルの呪いさえ解いて、さっきみたいに攻めればすぐに落ちる……気がする」
「そうだな、トオルの世界だと、男の方が俺たちみたいにエロいって話だろ。それならいける……気がする」
「自信がないのはお互い様。ここはお互いのために協力する!」
「おう、目指せ脱処女だな!」
「このチャンス、絶対に逃さない!」
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「ふあ~あ」
目を覚ますと、またもや知らない天井だった。
そうか、昨日から2人のパーティハウスでお世話になっているんだったな。昨日はこの世界に来てから初めてシャワーを浴びてさっぱりしたこともあって、初めて眠るベッドでもぐっすりと眠ることができた。
それに初めて俺の事情を2人に話せて安心できたことも大きいのかもしれない。ずっと異世界から来たってことを言えなくて少し辛かったもんな。
いきなり異世界から来たとか変なことを言ってしまった自覚はあるが、2人ともある程度は信じてくれたとは思う。
「よし、今日から頑張るぞ!」
そんな俺を受け入れてくれた2人のためにも、改めて今日から頑張るとしよう!
「おはよう、トオル。朝からいい匂い」
「おはよう、エルネ。朝ごはんの準備はできていていつでも食べられるよ。アンリが起きてからでも大丈夫?」
「ふあ~あ、2人とも朝が早いな。おっ、朝からいい匂いだぜ」
「おはよう、アンリ。それじゃあ準備をするね」
ちょうど朝食の準備が終わったあたりで、エルネとアンリの2人が1階に降りてきた。2人とも昨日は俺が寝た後も遅くまで起きていたのか、目をこすって眠そうにしている。
……朝から眠そうに眼をこすっている部屋着の美女と美少女を見られるたのは眼福です。本当にありがとうございます!
「うん、トオルの料理は相変わらずうめえな!」
「朝からとても幸せ!」
「2人の口に合って良かったよ。おかわりもあるからね」
朝食を食べた後は片づけをして、まずはこれからのことについて話し合うことにした。
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