第26話 巨乳と小柄な女性
「逆に聞きたいんだけれど、男の胸こそ大きくも柔らかくもないし、いったいどこがいいの? 」
「何言ってんだよ! 引き締まって弾力とハリがあって、筋肉が適度にある男の胸は素晴らしいだろ!」
「形が美しく魅力のある男の胸は女のロマン! 女の胸なんかとは比べ物にならない!」
「そ、そうなんだ……」
「あっ、すまん。つい……」
「ごっ、ごめん……」
男の胸について熱く語るアンリとエルネに若干引き気味だった俺。たぶんさっき俺が女性の胸について熱く語っていたのも、2人にとってはこんな感じだったんだろうな。
「ううん、全然大丈夫だよ。そんなわけだから、裸でパーティハウスを歩かれたりすると、興奮してかなりの頭痛がするから控えてくれると助かるんだ。2人も俺が上半身裸でパーティハウスをうろついていたら驚くでしょ?」
「お、驚くなんてもんじゃねえな……」
「衝動的に襲い掛かってもおかしくない……」
うん、さっきの俺もそんな感じだったからね。幸いと言うべきか、襲い掛かるよりも前に頭痛で身動きが取れなくなったから良かったけどさ。
「分かった、トオルの事情は大体把握したぞ。呪いを解けるようにできる限り協力するぜ」
「ありがとう、アンリ」
「………………」
「あれ、どうしたのエルネ?」
なぜかエルネが顎に手をあて、考え込むような仕草をしている。今までの説明で何か気になったことがあったらしい。
「トオル、ひとつ確かめたいことがある。手を貸してもらってもいい?」
「手? うん、もちろん」
エルネの意図は全く分からないが、言われた通り右手をエルネの前に差し出す。
エルネは俺の右手を両手で包み込んだ。女の子特有の柔らかな手の感触が伝わってきた。
「……えい」
「はあっ!?」
エルネはおもむろに俺の右手を自分の胸に押し付けてきた。
小柄でスレンダーなエルネ、その少し膨らんでいるとても柔らかい胸の感触が薄い布越しに伝わってくる。大きいとか小さいとかは関係ない。エルネのような美少女の柔らかな胸を触っているという事実だけで、ものすごい破壊力だ。
「痛たたたたた!」
そして当然ながら俺の呪いによる頭痛が、その幸せな時間をぶち壊した。
頭痛に負け、エルネの両手を振りほどいて、右手をエルネの胸から引き離した。
「おっ、おい。何をしているんだよ、エルネ!」
「ちょっと、エルネ! さっきちゃんと呪いについて説明したよね!?」
突然行われたエルネの謎の行動にアンリと俺が突っ込む。興奮したら呪いが発動するって説明したばかりなのに!
「……ちゃんと呪いが発動してくれた」
「いや、さっき説明してくれたばかりじゃん!」
「ごめん、トオル。ちゃんと私みたいな小柄な女性にも興奮してくれるのかどうしても気になった」
「へっ? いや、エルネみたいね可愛い女の子にそんなことをされたら、興奮するに決まっているじゃん!」
「か、可愛い!?」
いや、エルネが何をそんなに驚いているのか分からない。
確かに他の女性と比べると、エルネは小柄で胸は小さいが、ものすごく整った顔立ちをした美人だ。元の世界だったら、アイドルとかになっていてもおかしくない可愛さと言えば伝わるだろうか。
少なくとも、元の世界で線が細くてモテなかった俺なんかとは到底釣り合うことのない美少女だ。
「……トオルのことだから、マジで言ってるんだよな」
「いや、マジも何も大マジだけど?」
なぜか可愛いと言われたエルネが真っ赤になって恥ずかしがっている。
「トオルの世界だと小柄で細身な女は恋愛の対象外になったりしないのか?」
「えっ、いや全然そんなことはないよ。むしろ小柄な女の子の方が可愛がられたりするんじゃないかな」
「本当に!?」
うおっ、またもやエルネが身を乗り出してきた。さっきのアンリと同じパターンだが、まさか――
「もしかしてこの世界の男性は小柄な女性が好きじゃないの?」
「それは当然。特に私みたいな背の低い女性は男性の恋愛対象外」
「なん……だと……」
マジかよ、こんなに可愛い美少女が恋愛対象外だと! 本当にこの世界の男性の見る目はどうなっているんだ……
ああ、でもあれか、元の世界の女性にとって、背が低すぎる男性はあまり恋愛対象にならないとも聞いたことがある。もしかしたらそういうことなのかもしれない。
「まあ、そんなわけで俺とエルネは今まで男性に縁がなかったわけだ。本当に自分に興奮してくれるのか、どうしても確かめたかったエルネの気持ちは俺にもよく分かるから、許してやってくれ」
「トオル、ごめん」
「そういうことなら大丈夫だよ。まあ、俺も良い思いができたわけだし。とはいえ、身体には悪そうだから、今後は勘弁してね」
俺としても良い経験をさせてもらったわけだから、むしろお礼を言いたいくらいだ。とはいえ、これが続くと先に身体の方がどうにかなりそうだから、今後は勘弁してもらわないとな。
……本当にこの呪いさえなければ天国みたいな世界なのに。
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