第25話 事情説明


「えっと、実は2人には今まで隠していたことがあるんだ」


 散々呪いに寄る頭痛の苦しみを味わった後、なんとかアンリが服を着てくれて、ようやく頭痛が収まった。


 女性2人とひとつ屋根の下で暮らすということに浮かれ過ぎていて、この呪いについてあまり深く考えないでいた。先ほどのアンリの行動からも分かるように、この世界の女性はシャワーを浴びた後に上半身裸でいることなんてまったく気にも留めないらしい。


 このままでは、間違いなく俺の身が持たないだろう。日常的にこの呪いによる頭痛を受け続けていたら、精神的にも良くないに違いない。


 女性の胸を見られるのなら、頭痛くらい安いものだと俺も思っていたが、この呪いによる頭痛は普通の頭痛の痛みの比ではないんだよな……このままでは確実に俺の身体が持たない……


「改まってどうしたんだ?」


「それよりも身体はもう大丈夫?」


「身体の方はなんとか大丈夫。隠していたことは、俺の身体のこととも関係があるんだ」


 そして俺は2人に本当のことを話すことを決めた。


「実は俺はこの世界とは別の世界からやってきたんだ」






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「マジかよ……」


「女神……転生……呪い……異世界……」


 この世界に来てから初めて、他人に俺の事情をすべて話した。


 それこそ前世で死んでしまったことから、女神にかけられたこの呪いのことまですべてだ。


「俺が別の世界からきたことと、女神のことについては証明できないけれど、呪いのことについては教会に行けば証明することができるよ」


 異世界や女神について証明しようはないが、俺がかけられた呪いについては証明できる。それこそ教会にいる人が治せないくらい強力な呪いらしいからな。


「トオルの言っていることは信じられる。道理でこんなに綺麗な男性なのに、あまりにも無防備だった」


「そうだな、確かに天然と言うには、さすがにおかしかったもんな」


 ……よく分からないが、変なところで納得されてしまった。そこまで俺は無防備だったのか。


「それにしても男が半分もいる世界か、天国みたいな世界だぜ」


「上半身裸姿の男性がいる世界……一度でいいから行ってみたい」


 どうやらこちらの世界の女性にとって、俺がいた世界は天国のようだ。貞操が逆転したら考えることは男女ともに同じらしい。俺だってこのふざけた呪いがなければ、天国みたいな世界だったのに……


「そんなわけで呪いを解く方法を探しているんだけれど、2人は心当たりがあったりしないかな?」


 2人はAランク冒険者だ。もしかしたら、この呪いを解く方法を知っている可能性もある。


「そんな呪いは聞いたことがない。でも呪いである以上、解けないことはないと思う。いろいろ調べてみる」


「そうだな。さすがに呪いについては専門のやつの方が詳しそうだ。呪いに詳しいやつとギルドマスターに聞いてみるか」


「本当! ありがとう、エルネ、アンリ!」


「おう。それくらい任せておいてくれよ」


 Aランク冒険者の2人が協力してくれるのなら、とても心強い。正直に話して正解だったようだ。


 それに教会の人も言っていたが、解けない呪いはないらしい。あのクソ女神もこの呪いを解く方法はあると言っていたし、ほんの少しだが、希望は出てきたぞ。


「トオル、もう一度確認しておきたいんだが、その呪いってやつはトオルが女性を見たり、女性に触れて興奮した時に頭痛がするってことでいいんだよな?」


「うん、俺が確認した範囲だけれど、条件はそんな感じだと思う。興奮すればするほど頭痛が強くなる感じだね」


 これまでに検証してきた経験上、その2つについてはほぼ確定と見て間違いないだろう。


「……ってことは、さっきは俺の胸を見て興奮したってことになるだよな?」


「………………」


 おう……完全に図星である。自分の胸を見て興奮したとか、変態宣言もいいところである。


「ごめん! アンリのことをそういうふうに見ちゃって、本当に悪いと思ってる!」


 アンリに向かって、思い切り頭を下げた。


「あ、いや、それは全然いいんだけれど本当なのか? こんな無駄にでかいだけの女の胸のどこがいいんだ?」


「何を言っているんだ! 女性の胸には夢しかないじゃないか! 大きくて柔らかそうで包容力があって、興奮するに決まっている!」


「お、おう……」


「……ごめん、今のは忘れて」


 やべっ、つい興奮しすぎてしまった。


 女性の胸を熱く語る男とかキモ過ぎる……アンリにもドン引きされたに違いない……


「へへっ……そうか、こんな大きな胸でもいいんだな」


 あれ、むしろ嬉しそうに笑っている。今の発言のどこに喜んでいるのだろう? ま、まさか――


「もしかして、この世界の男性は大きな胸って好きじゃないの?」


「そりゃそうだろ。女が大きな胸をしていても邪魔でしかないぞ。胸の大きさを気にしない男も多いけれど、さすがに俺みたくここまで大きな胸の女はさすがに嫌がられるさ。だから普段は胸が小さく見える服を着ているんだ」


「なん……だと……」


 なんてこった、大きな胸の女性が嫌われる世界だと……そんな世界があっていいものなのか!


 あれか、元の世界で変な乳輪をしている男や、太って大きな胸をしている男が良く思われなかったりするのと同じことかな?


 う~ん、駄目だ、俺には理解できない……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る