第24話 水浴び


「2人の口に合って良かったよ。それじゃあ後片付けをしてくるよ」


「後片付けは私がやる」


「おう、俺もやるぜ」


「俺がやるから大丈夫だよ。こういうのは俺の仕事だからね」


 戦闘面ではほとんど役に立てなさそうな分、こういった雑事こそ俺の仕事だ。ちゃんとお金をもらう以上、しっかりと働かないとな。


「トオルはあれだけおいしいご飯を作ってくれた。片付けくらいは私たちがやる」


「そうだぜ、皿洗いくらいなら俺たちでもできるからな」


「……わかったよ。それじゃあ洗ったお皿を拭くのを手伝ってくれると嬉しいかな」


 せっかくの厚意を断り続けるのも逆に失礼だ。洗い物もそこまであるわけじゃないから、みんなでサッと終わらせてしまおう。


「はい、アンリ」


「おう」


「はい、エルネ」


「うん」


「「「………………」」」


 俺が食器を洗ってから渡して、それを2人が拭いて食器棚に戻してくれているのだが、なんともむずかゆい。


 綺麗な女性2人と共同作業をしていると、これからこの2人と一緒に生活するということを今まで以上に意識してしまう。それと思った以上に2人と接近するので、想像以上にドキドキする。


 童貞男子高校生なんて、それくらいでドキドキするくらいチョロいものなんだぞ!


「……よし、これで終わりだな。それじゃあ順番に水浴びをして休むとしようぜ」


「水浴び場の説明をする」


 食器洗いを終えて、パーティハウスにある水浴び場へと案内された。中はシャワー室のようになっており、浴槽はなかったが、上の方に大きな桶のようなものが2つと、そこから伸びた管があった。


「えい」


 エルネが杖を振るうとその桶の中に水と湯気の出たお湯が出てきた。そうか、これは魔法を使ったシャワーなんだな。


「こっちをひねるとお湯が出てきて、そっちをひねると水が出る。お湯は少し熱くしているから、水で調整して」


「なるほど、わかったよ」


 ヨーグル亭では水を張った桶で身体を拭くだけだったからな。さすがにお風呂はないが、シャワーを浴びられるだけ贅沢なことだ。


「あ、安心してくれ。俺たちは絶対に覗かねえからな!」


「大丈夫、安心して入ってくれていい」


「……うん、そこは大丈夫だよ」


 そうか、こっちの世界だと、女性が男性の水浴びや着替えとかを覗いたりするのか……男性が女性を覗いたら痴女扱いされてしまうということになるのかな。




「はあ~気持ちよかった」


 シャワーを浴びてから、身体を拭いて服を着る。やはり身体を拭くだけより、シャワーを浴びるほうが何倍も気持ちいいな。


 こっちの世界だとレディーファーストならぬ、ジェントルマンファーストが基本らしいので、順番は俺、アンリ、ミルネの順番になった。もちろん2人は覗きになんて来ていない。


 ……逆にちょっとくらい覗きに来てほしかったなあとか少し思ってしまったな。覗かれるということは興味を持たれているということでもあるわけだし。


「ふう~とっても、気持ちよかったよ」


「お、おう。それじゃあ次は俺が入ってくるぜ」


「うん」


 続いてアンリが水浴び場へと移動する。少し顔が赤いようだが、どうしたのだろう。


「………………」


 エルネのほうも少し顔が赤いし、俺の方をチラチラと見てくる。


「あれ、なにかおかしいかな?」


 服は市場で前に買ってきたやつだし、そこまでおかしな服ではないと思うんだけれどな。


「な、なんでもない! ただ水浴びをした後の男性の姿を見るのが珍しいだけ」


 ああ、そういうことか。確かに俺も風呂上がりのクラスメイトの姿を見たら、かなりドキドキしてしまうだろうな。温まって上気した顔や濡れてしっとりとした女性の髪ってなんかエロイよね。




「あがったぞ、エルネ」


「了解」


 のんびりと明日の朝食の準備をしていたところ、アンリの水浴びは終わったようだ。最後はエルネの番だ。


「トオルは何をしているんだ?」


「明日の朝ご飯の準備をしているところ……って、うわああああ!?」


 目の前の光景を見て、俺は大声を上げてしまった。


「ど、どうした!」


「何事!?」


「は、早く服を着て!!」


 水浴びを終えて、髪をタオルで拭きながらこちらの方へ来ていたアンリ。しかし、いつも来ていたバンドは着けておらず、上半身が裸だった。


 当然普段は黒いバンドにて隠されていたアンリのものすごく大きな胸が、露わになってしまっていた。


 で、でかい!? 以前に見てしまったルナさんの胸は普通の人よりも大きかったが、アンリの胸はそれ以上だ!そんな大きな胸がプルンプルンと大きく揺れている。ああ、これが天国というものなのだろうか!


「痛たたたたた!」


 当然そんな大きな胸をモロに見てしまった俺が興奮しないわけはなく、今までで最大級の呪いによる頭痛が俺を襲った。


 いでで! なんという破壊力だ! あれほどの巨乳を見て興奮しない童貞男子高校生など存在しないと断言できる!


「ど、どうしたトオル。大丈夫か!?」


「トオル、大丈夫!?」


「だ、大丈夫だから、まずは服を着て!」


 苦しんでいる俺を心配してアンリが近寄ってくるが、完全に逆効果である。その大きな胸が間近に迫ってさらに大きな頭痛が俺を襲う。


 駄目だ、このままこんな生活をしていたら、いつか俺はラッキースケベによって殺されてしまう……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る