第18話 発情魔法
「……えっと、みんな、何かの冗談だよね?」
いつもの口調と表情から豹変したみんなの姿を見て、何が起こったのかはおおよそ分かったが、信じたくはなかった。あれほど俺に優しく接してくれたみんなが、そんなことをするはずがないと認めたくなかった。
「おいおい、こいつまだ状況が分かってねえみてえだぜ」
「こんなにいい男なのに警戒心がここまでないとはね。今までよっぽど運が良かったんだろうな」
「くっくっく、もしかしたらどこかいいところのお坊ちゃんなのかもしれないぜ。今まで我慢してきた分、たっぷりと楽しませてもらうぜ!」
「………………」
今までみんなのこんな下卑た笑い顔は見たことがない。ようやく俺はルナさんたちに騙されたことが自覚できた。
「お、俺がみんなのパーティに入ったことは、他の冒険者たちや俺が世話になっている宿の人たちも知っている。俺に何かあれば、すぐにバレて逮捕されるぞ!」
「へへっ、今までそう言ってきた男どもは大勢いたが、その全員がすぐに壊れちまったぜ」
いつも俺をその大きな盾で魔物から守ってくれていたタンクのミーニさん。彼女の笑顔はとても素敵で、その明るい性格は常にみんなを朗らかにしてくれていた。
「俺の魔法は普通のやつの比じゃないからな。大抵の奴は快楽に溺れて、すぐに俺たちの言いなりになる」
片手剣での接近戦をこなしつつも、風魔法の使い手のメラルさん。口調の割にみんなを常に気遣っており、みんなのムードメーカー的な存在だった。
「なにより私たちがこれまでに冒険者として積み上げてきた信用が違う。たとえここでトオルが行方不明になったとしても、魔物に襲われたり、盗賊共に攫われたという証言をすれば、誰にも疑われないさ」
ロングソードを自在に操り、このパーティのリーダーでありながらも、戦闘では常に先陣を切ってくれたルナさん。俺をパーティに誘ってくれた時も、魔物から守ってくれた時も、常に優しく接してくれた女性。
夢じゃないんだよな。本当に俺はみんなに裏切られてしまったのか。これだけはっきりと相手の口からそう言われているのに、まだ信じられない自分がいる。
「それにこの洞窟は俺たちが事前にしっかりと下調べをした場所だ。ここに来る冒険者はいねえから、誰も助けには来ねえし、証拠も残らねえ」
「そして私はこの街の領主の姪だからね。例えバレてもこれくらいのことなら、簡単にもみ消してもらうことができるから、変な気を起こさないことをお勧めするよ」
うぐっ……そういえば、ルナさんは強い冒険者であると同時に権力者の親族であった。この文明レベルだと、権力者の言うことは絶対だから、本当に事件をもみ消される可能性も十分にある。
「お願いします、どうか許してください!」
「くっくっく。なんだよ、もっと抵抗してくれてもいいんだぜ?」
「そうだな。いくら
ミーニさんとルナさんが俺を挑発してくる。男でFランク冒険者の俺がCランク冒険者のみんなに勝てるはずがない。
「ああ~もう我慢できねえ! さっさとヤっちまおうぜ!」
「まあこの洞窟なら誰も来ることはないから焦んなよ。たっぷりと楽しませてもらおうぜ。それにしても男の引き締まった尻はたまらねえな!」
「わかってねえなあ。ケツもいいけれど、やっぱり男は胸に決まってんだろ!」
ミーニさんが尻派、メラルさんが胸派という、どうでもいい情報が分かった。
しかし、状況は最悪だ。この洞窟の奥は行き止まりになっているし、入り口には3人がいて逃げ出すことができない。強行突破しようとしてもすぐに掴まってしまうことは明らかだ。
「さあ、そろそろ始めようか!」
そう言いながら、ルナさんは何のためらいもなく胸当てを外し、上に着ていたシャツを脱ぎ始めた。この世界の女性はブラなんて付けていないので、シャツを脱ぐと、すぐにその豊満な双丘があらわになった。
「くっ!?」
くそ、ルナさんの大きな胸を見て少し頭痛が!? こんな状況でも知り合いの胸を見て興奮してしまう自分が憎い!
「おっ! その反応、もしかして童貞か?」
ルナさんの胸から視線を外したことによって、俺に女性経験がないと思われたらしい。違うんだ、本当は胸をガン見したいところなのだが、呪いの頭痛によって目線を外しただけなんだ。
いや、童貞は童貞で当たっているんだけれど。
「やりい! それじゃあ俺がお前の初めての女になってやるよ!」
「ちょっと待って、順番は私の番だぞ! こんな可愛い男が童貞とは運がいい。安心しろ、大人しくしていれば最高の天国に連れて行ってやるからな」
「おいおい、相手が童貞なら話は別だろ! ここは3人で平等に決めようぜ!」
「そうだぜ。こいつが童貞なら、もう一度平等に決めるぞ!」
3人で誰が俺の初めてになるかを言い争っている。いや、本当ならば3人の誰であってもウェルカムなんだが、あのクソ女神にかけられた呪いのせいで無理なんだ!
「よしっ、私が最初だな!」
「ちぇっ……」
「くそったれ! しょうがねえ……さっさと済ませろよ」
どうやら俺の初めての相手はルナさんに決まったようだ。その間になんとか逃げ出す方法を考えたが、回復魔法や解毒魔法じゃどうにもならない。
「うわっ!?」
抵抗をしようとしたが、俺なんかよりも遥かに強い力で、あっという間にルナさんに地面へと押し倒された。
「ふふっ、すぐに気持ち良くしてやるからな」
「くっ……」
「へへっ、本当にいい反応してくれるな。ほら、もっと気持ち良くしてやるぜ!」
「な、なんだっ!?」
メラルさんが俺の額に右手を当てると、突然頭がぼーっとしてきて、身体が熱くなっていき、マイサンが起き上がってくる。
これが男を発情させる魔法か!
「さあ、お互いに楽しもうじゃないか!」
そう言いながら、ルナさんは俺のズボンへと手をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます